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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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143.明暗・ニンジンと麦

 午前中はニホニウム地下六階で知性をBからAへ、午後はテルルで様々な野菜を生産。
 そんないつも通りの一日を過ごして、夕方、屋敷に戻ってきた。

 戻るなり、これまた日課の一環である通帳に期中押してもらうため。屋敷の一室にある買い取り屋「燕の恩返し」の出張所にやってきた。

「お帰りなさいリョータさん」

 出向してきたエルザが立ち上がって、小走りで俺に駆け寄ってきた。

「ただいま、今日も頼む」
「はい、通帳をお預かりします。そういえばニンジンの買い取り額上げる事になりました」
「ニンジンの買取額? なんで?」
「リョータさんのドロップはどれも質がいいって評判で、最近は少し高くてもリョータさんのものがほしいって注文が増えてるんですよ。その中でもイヴさん――キリングラビット絶賛のニンジンが一番人気があって、それで買取額を上げさせて頂くことになりました」

 なるほど、と頷く。
 ドロップの能力は高ければ高いほど量と質の両方に影響する。
 この世界で唯一ドロップSを持つ俺が生産(ドロップ)するものは他よりも品質が高い。

 その中でもイヴが押してるニンジンだけが買い取り額上がってるのはちょっと面白かった。

「イヴはあれだな、ニンジン好きSだな」
「そうかも知れませんね――はい、記帳終わりました。本日154万3298ピロとなります」
「ありがとう」

 150万ピロか。
 今日も結構稼げた。
 そうだ。

「エルザ、今日はこれから何か用事はいってるか?」
「ありませんけど、どうしたんですか?」
「買い取りアップ祝いで飲みに行こうか」
「行きます!」

 軽く誘ったら、エルザは思いっきり食いついてきた。

     ☆

 酒場、ビラディエーチ。
 日替わりのビールを出してくれるなじみの店のやってきた。

 最近はそこそこ有名人になってきたから、店にくると奥の静かな席に案内してくれる。
 なじみの店の、更になじみの席で。
 俺はエルザとビールで乾杯した。

 俺が注文したのはコーヒービールだ。
 どこかのダンジョンの最下層にのみドロップするヤツで、毎日出るわけじゃない。
 コーヒーとホップの両方の苦みがいい感じのヤツで、好きなビールの一つだ。

「お疲れ様ですリョータさん、いつもありがとうございます」
「うん? ありがとうって?」
「リョータさんのおかげでうちの業績、結構上がってるみたいですよ」
「そうなのか? いやでも俺でも一人が稼げる量はそんなでも無いだろ」
「リョータさんのドロップの質はすごく安定してるから。安定した質と量を出せる人ってすごくありがいたいんです。昔マスターに聞きました、独立する時、Aを何人引っ張れるかが勝負だって」
「なるほど」

 安定した量と質、それを両方まかなえるドロップAの常連を何人確保できるって事か。
 厳密に量はその人の性格にもよる。サボり癖だったり病弱だったりしたら当然ダンジョンに潜る回数=ドロップも減る。
 それでもAはもぐりさえすれば高い品質のドロップを出せるから、重宝されるんだろう。

「おかげさまで、私もいっぱいボーナスもらえちゃいました。前回の倍くらいです」
「おお、それはいいことだ」

 そう言って、またエルザと乾杯する。
 元の世界、前の会社にいたときはほとんどもらえなかったから、ボーナスというのにちょっと憧れがある。

「おめでとうエルザ」
「ありがとうございますリョータさん」

 いい話を聞けたから、ビールもますます美味しかった。
 ビールを飲んで、肴をつまんで、エルザと世間話する。

 働いた一日のいい締めくくりだった。

「ふー、まいったまいった」

 飲んでると、隣の席に男の二人組がやってきた。
 どっちも冒険者風な格好、一仕事してきたって感じの格好だ。

「本当参ったよ、麦が安くなるのってさ」

 むっ?

「リョ……」
「しっ」

 麦って言葉が耳に入って、エルザが何かいおうとした。
 人差し指を唇に当てるジェスチャーをして黙らせつつ、耳を澄ませて盗み聞きした。。

「収入がざっと一割も減っちまったぜ。まったくクリフォードめ、余計な事しやがって」
「なに、お前理由教えてもらったのか? 俺ごまかされたぞ」
「教えてもらったよ。あいつら麦の生産を盾にストライキ起こしただろ?」
「ああ。それであのリョータファミリーがクリントに言われて事態の解決に手を貸した。どころがだ、再開したクリフォードファミリーの麦があきらかにリョータファミリーのより質が悪かったんだ。いや、リョータファミリーのがよかったのかな」
「……つまり、品質のいい麦が出てきたから、もとのヤツは下げられたって事か」
「そういうことだ」

 男は一気にビールを呷って、ドン! とグラスをテーブルにたたきつける。

「前もそうだ、何かがあるとリョータファミリー、いやリョータ・サトウが出てくる。そいつが出てくるんだよ」
「余計なことしたなクリフォード、あんなことしなきゃ値段下がらなかったのに」
「本当だぜ。クソだよクリフォード」
「余計な事しやがって」
「早くもあっちこっちに広まってるみたいだぜ。余計な事をしてリョータファミリーを出させるなって」

 男達は愚痴りながらビールを煽る。

 そうか……そんな事になってたのか。
 ニンジンがあがって、麦が下がる。
 俺が関わった商品の二つが、対照的な結果になった。

「さすがですね」

 一緒に話を聞いていたエルザがそんなことを言ってきたのだった。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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