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レベル1だけどユニークスキルで最強です 作者:三木なずな

第三章

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142.佐藤が動けばパン屋が儲かる

 麦の件、依頼を解決して、今日はフリーの日だ。
 だから午前中はニホニウムの地下六回に潜って、ポイズンスライムを倒しまくった。

 いつ何が起きてもいい様に、倒し方の練習も怠らない。

 今日は狙撃、と課題を決めて練習した。

 拳銃に通常弾を込めて、まずは一撃で倒せるギリギリの距離を探る。
 すると大体、ヘッドショット一発で吹っ飛ばせるのが30メートル程度だと分かった。それ以上距離が伸びると当たっても貫通しきれなくて、倒しきれない事がある。

 大体の距離が分かったから、ポイズンゾンビと出くわしたときはまずその距離を取るように後退した。
 あらかじめ測った距離まで後退して、銃を突き出して、片目をつむって狙う。

 毒を放ちながら、呻いて接近してくるポイズンゾンビ。
 しっかり狙って――撃つ!

 一発目、弾丸はゾンビの頬をかすめた。
 耳をえぐる程度で、実質外してしまった。

 深呼吸して、構え直して、距離を取る。
 そしてまた、狙って撃つ。今度はしっかり頭を吹っ飛ばした。

 スナイパーライフルじゃない、拳銃での狙撃。
 それを練習し続けた。

 この距離でも追尾弾を使えば一発なんだが、それはリペティションと変わらなくなる。
 あくまで通常弾で、離れた距離への狙撃。
 いつ必要になるのか分からないけど、とりあえず、それを出来る様に練習した。

 最初の内は命中率が三割もなかった。それが徐々に上がって、この日の上がり――知性がBからAになった頃は、五割くらいまで上がってきた。

 狙撃にかんしては、まだまだ練習改善の余地あり、みたいだった。

     ☆

 午後はテルルに向かおうと、一旦屋敷に戻ってくると。

「リョータさん、お客さんが来てます」

 実質屋敷の留守を預かっているエルザが転送部屋の前で待ち構えて、俺の事を出迎えた。

「お客さん?」
「はい、初めての方です。レオン・ベイカーさんっていう人です」
「レオン・ベイカー」

 言われた名前を復唱、初めて聞く名前だった。 
 とりあえず男みたいだ。

「どうしますか?」
「まだいるの?」
「いちおう応接間に」
「会おう」

 また何かがおきてるかも知れない。困ってる人がいるかも知れない。
 俺はあうことにした。

 買い取り査定に戻るエルザにお礼を言って、俺は一人で応接間に向かった。
 ノックをして、中に入る。

 ソファーに座っていた男が俺を見て立ち上がった。
 二十代の後半くらいか、ちゃんと手入れされた髭を蓄えている穏やかな男だ。

「初めまして、レオン・ベイカーと申します」
「佐藤亮太だ」

 互いに自己紹介して、俺はレオンの向かいのソファーに座った。
 さて何の用だ――と切り出そうとしたら、レオンがすわらず俺をまっすぐみているのが分かった。

 彼は立ったまま俺をむいて、深く頭を下げてきた。

「ありがとうございます」
「どういう事だ? 初めて会うんだよなレオンさんとは。お礼を言われるような事をした記憶はないんだけど」
「初めてです。でも、ありがとうございます」

 またお礼を言われて、俺はチンプンカンプンで困惑しきってしまった。

     ☆

 シクロ街の南、一件のパン屋。
 そこに、俺はレオンに連れられてやってきた。

「ここが私の店です」
「いい香りだ」

 レオンに案内されてきた店は、お世辞にも客が多いとは言えないが、清潔に保たれてて、その上外にまでいい匂いが漂ってくる。

 通りかかったらついつい入ってしまう、そんな感じの店だ。

「見ての通りパン屋を営んでおりまして。ここ数日、サトウさんに麦を生産し続けて頂いて助かりました」
「はあ……」

 何となくつながりは分かった。
 分かったが……それってそんなにお礼を言うような事か?

「そんなにお礼を言うような事か? って顔をしてらっしゃいますね」
「端的に言えばそうだ。確かに材料がなければパンは作れないし、値上げしたら困るだろうけど。わざわざうちまでくるような話だとは思えない」
「中に入って頂ければ分かります」
「……そうか」

 そう言うからには何かがあるんだろう。
 レオンに言われて、俺は中に入った。

 パン屋の中は採光もよく、外から見たイメージのまま綺麗だったが、パンのラインナップが地味だった。

 食パン、フランスパン、テーブルロール。

 惣菜パンらしき物は一切無い、それどころかあんパンとかそういうものない。
 とにかくシンプルで、地味なものしかない。

 どういう事だ? ってレオンを振り向くと、彼は更に奥にむかった。

「どうぞ」

 案内されて通された厨房――パンの工房にはいった途端、俺はそこの光景に驚いた。

 三匹の子ぶた。

 最初に頭に浮かんだ言葉がまずそれだった。
 小学生低学年くらいの大きさの、人型の豚が三匹いて、それがパンの生地を練っていた。
 愛嬌はあるが、どう見ても人間ではなくモンスター。

「これは?」
「ミニオークです。ダンジョンに住んでいた魔物、今はハグレモノですね。サトウさんなら分かると思います」
「ああ、うちにもケルベロスがいる」

 それと同じ、って事か。

「数年前に野外で出会いました。最初はこの子達に襲われるのかと思ってましたが、どういうわけか懐かれてしまいまして。それで一緒に暮らす事にしたのです」
「首輪――は手首についてるな」
「首につけるのは忍びなく、許可をもらって手首につけさせてもらってます」

 俺とレオンが話してる間も、三匹の子ぶた――もといミニオークはパン生地を練り続けた。
 ひたすらと、一心不乱に。

 そのうち、一頭が練り上げた生地をレオンに見せに来た。

「オゴ」
「どれどれ……うん、いいできだ。頑張ったね」
「オゴ♪」

 生地の出来を確認したレオンはミニオークの頭を撫でた。
 ミニオークは大喜びで、また次のパン生地を練りだした。

「一緒に暮らすに当たって色々と試行錯誤しました。色々」
「……そうですか」

 きっと、「色々」は本当に色々あったんだろうな、と想像にがたくない。

「辿り着いたのがこのパン屋です。これしか出来ない……とは言いませんが、これが一番合ってるのです、この子達には。今のをみるとわかると思いますが、この子達は上手く生地を練って、私にほめられるのが嬉しいのです」

 いい関係だ、ちょっと羨ましいくらい。

「パンを作れない日があると悲しむのですよ、この子達が。例えばわたしが病気になって、生地を確認できない人か」
「なるほど」

 ここでようやく話がわかった。
 レオンも俺が分かったことを理解した。

 クリフォードが麦の生産をとめてしまうと、レオンと三匹のミニオークが困る。
 それをつないで、更に元に戻るまで踏ん張った俺にお礼を言いに来たんだ。

「サトウさん」

 レオンはおれの方を向いて、改めて頭を下げて。

「ありがとうございます、本当に、ありがとうございます」

 俺がしたことは、意外なところで意外な結果を生んでいたようだ。
面白かったらブクマ、評価してくれるとすごく嬉しいです!

■書籍版一巻、おかげさまで重版です!

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