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怪談遊戯~冥界ドライブ~  作者: 雪鳴月彦
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第三十三話:報い

「これから廃屋となった場に赴かれる身としては、なかなか刺激のあるお話になったのではありませんか?」


 話を締めくくると同時に、見越のにやついた目元が鏡越しに俺を覗き込んできた。


 最後にもう一押し、恐がらせてあげよう。


 そんな魂胆でもあったのかもしれないが、生憎俺は怪談を楽しめることはあっても、恐がるような性分ではない。


 むしろ、今から訪れる場所で聞いた話の内容と類似するような体験ができたなら最高じゃないかと、聞いている最中にワクワクし始めたくらいだ。


「そうですね。刺激と言うか、活を入れられたような気分です。もし俺が霊に襲われるようなことがあったら、次にお会いすることがあれば是非体験談としてお話させていただきますよ」


 見越の視線に強気な笑みを真っ直ぐに返し、俺はニヤリと笑い返す。


 それから目をすがめるようにして周囲の様子を確認し、まだもう暫し車が走り続けることを把握した俺は、こちらからも最後の話をしておくかと手頃な怪談を記憶の中からチョイスした。


「もうちょっとくらいは時間がありますよね? 俺からも最後に一つだけ、語らせてもらっても良いですか?」


「ええ、構いませんよ。私としても、今後お客さんへ話せる怪談が増えるのはありがたいですからね」


 逡巡することもなくあっさりと了承する見越の返答に、俺は無言の頷きを返し車が向かう前方へ視線を移動させる。


「では、お話します。これはネットで読んだ話なんですけれど、人を殺した人間が体験した……何でしょうね、復讐または因果応報とでも言うべき話です」


 悪いこと、それも殺人という重い罪を犯した者が受けた報い。


 そんなことに纏わる話を、俺は正面の闇を見据えたまま静かに語り始めた。




       ◇◆◇◆◇◆◇




 いつどこで起きた事件なのか、詳しい詳細は書かれていませんでしたが、ある夜、客のいないスナックに一人の男が押し入り、経営者である女性を刺し殺し店の金を奪って逃げるという事件が起きたんです。


 犯人の男とスナックのママには面識がなく、また店内及びその周辺に防犯カメラなどはほとんどなかったせいで、手掛かりが少なく捜査はかなり難航したそうで。


 犯人の目撃情報も得られない、捜査を始めた段階では警察は犯人の性別すら断定できない状態であったため、捜査は長期戦になるだろうと警察の関係者はある程度の覚悟を決め地道な情報収集を進めていたそうなのですが、それがある日、事件は意外なかたちで解決してしまった。


 警察署に、犯人の男が自首してきた……っていうんです。


 色々と話を聞いて、警察側も確かに犯人に間違いないという裏付けが取れ、その後逮捕に至ったわけなんですけど、そもそもどうしてうまく逃げおおせていた犯人が自分から出頭なんてしてきたのか。


 警察も当然そのことを問い質したらしいのですが、これに対して男は


「一人でいると、殺した女が俺の前に現れるんだ。このままでいたら、呪い殺されるような気がして、恐くなって出頭した」


 と、そんな供述を繰り返していたそうで、嘘をついているような感じもなく薬を使用している形跡もないことから、この供述に関しては警察もどう対応して良いのか扱いに困ったそうです。


 家に一人でいると、窓の外から自分を睨んでいたり、ふとした瞬間にドアの隙間から覗き込んでいたり、夜中に目を覚ますと枕元に立ちジッと見下ろしていることもあったと、犯人の男は取り調べの最中、落ち着かない態度でそんな内容の話を多々漏らしていたらしいとサイトには書いてありました。


 何の前触れもなく、命を奪われた女性の無念が犯人へ復讐をしようと現れていたのか。


 それとも、逃げることなく自らの罪をあがなうよう仕向けたのか。


 後者であれば、少しは美談にも似た救いのオチになったのでしょうが、この犯人は刑務所へ入ってからも頻繁に殺した女が側にいると喚き散らし、最終的には精神病院へ移された挙句、最期は自死してしまったんだそうです。


 一時の金欲しさに最低な罪を犯したがために、悲惨な最期を迎えたわけですから、因果応報、自業自得という言葉がぴったりな話でしょう。




 この殺された女性は、犯人へ復讐を果したことで無事に成仏することができたのか。


 この話を読んで、俺は最後にそんなことが気になりましたけどね。

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