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【改訂版】転生賢者の麗らか貴族生活〜余生のつもりが過保護な家族に溺愛されて長生き待ったなしのようです〜  作者: 瀬那つくてん(加賀谷イコ)


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閑話【3】誕生日プレゼント

 シアンの部屋の一角には、クマのぬいぐるみが飾られた棚がある。父ゼニスから誕生日に贈られたプレゼントで、今回の誕生日で七つ目となった。よく見ると、少しずつ大きくなっている。シアンの成長に合わせてサイズを変えているのだ。

「何歳まで贈られるでしょうね」

 ぬいぐるみの位置を調整しながらマゼンタが言う。このぬいぐるみたちが綺麗に保たれているのはマゼンタのおかげだ。

「さすがに学校に上がったらぬいぐるみじゃなくなるんじゃないかな。僕ももう七歳だし、いつまでも子どもじゃないよ」

 賢者から見れば、子どもはいつまでも子どもだ。だが、こうして七歳の子どもになってみると、きっと数年後には「もう子どもじゃない」と言っているのだろう。実際、子どももいつまでも子どもではないのだ。

「シアン様も、いつか大人になるんですね……」

 そう言った途端、うっ、とマゼンタが唸る。豊かな想像力のもと、その瞳には涙が滲んでいる。大人になったシアンを想像しているのだろう。

「別に独り立ちするわけじゃないんだから」

 困って笑うシアンに、マゼンタは強く拳を握り締めた。

「けれど、サルビア家の男性は、成人したら侍女が付かなくなるんですよ!」

「そうだとしても、まだ十一年も先だよ」

「十一年なんてあっという間ですよ。子どもの成長は早いのです。この七年があっという間だったんですから」

 賢者はこれまで子を持ったことはないが、周囲にいた子どもに対してマゼンタと同じ感想を懐いていた。子どもはあっという間に大きくなる。それが喜びであることも知っている。子どもの成長は嬉しくもあり、寂しくもあること。親はよくそのように言っていた。賢者には完全に理解することはできなかったが。

「マゼンタが僕付きじゃくなったとしても、マゼンタがこの屋敷で働き続ける限り、会えなくなるわけでもないんだよ」

「私は生涯をサルビア家に捧げると決めています」

 マゼンタは真剣な表情だ。例え結婚したとしても嫁入りせず、この屋敷に留まるのだろう。それがシアンに対するマゼンタの愛だ。

「僕は幸せ者だね。僕を愛してくれる人たちに囲まれて」

「シアン様を愛する私たちも幸せ者ですよ」

「うん。このクマたちは幸せの証だ」

 クマが大きくなるたび、シアンが大きくなる。シアンへの愛を形にしたクマたちは、家族の喜びであるシアンの成長を表すものだ。

「明日はどのリボンにしましょうか」

 マゼンタがリボンタイの並ぶ箱を持ち出す。アズールから贈られたリボンタイはどれもが上等な品で、賢者であれば、もったいないと言ってしまい込んでいただろう。だが、プレゼントは使ってこそ意味がある。使うことが愛への返礼だろう。

「迷ってしまうね。ヘアピンもどれも素敵だし」

「奥様がお贈りになった本で夜更かししたりしないようにしないでくださいね」

「うっ……わかってるよ」

「教本は次のレッスンのときにカージナル様にお渡ししましょう」

「そうだね。練習するのが楽しみだよ」

「ブレスレットはポケットに入れておくだけでも効果がありますよ」

「失くしたら嫌だし、いつもポケットに入れておこう」

 賢者は明日を考えることがなかった。明日も生きている保証がなかったからだ。シアン・サルビアには明日がある。これから健やかに成長していく。ただそれだけで幸せであることを、賢者は初めて知った。

 明日を想って眠る。ただそれだけのこと。それがシアン・サルビアの幸せだ。

 賢者はそれが続くよう尽力しなければならない。それが賢者の転生の意義となる。

 明日はどのリボンにしようかと考える幸せ。それがサルビア家にはある。

 シアンは幸せを手にする。愛する家族とともに。




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