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雪の精霊~命のきらめき~  作者: あるて
第1章 充電期間

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第16曲 姉妹たちの収録見学

 話は戻ってわたしが初めて体育の時間に注目を浴びた、その日の夜。


 約束していた動画投稿見学のときに今日のわたしの体育の話になって、それを唯一見ていたあか姉が他の姉妹から羨ましがられていた。


 特により姉は年齢的に同じ学校に通うことは小学校の時の1年間しかなかったので余計にうらやましいみたいで、部活の助っ人に参加することとなったことを知るとあか姉に録画してくれるように依頼していた。


 普段見る機会がないとはいえ、学校での姿を見たいというより姉の気持ちが嬉しいような恥ずかしいような。


 わたしのかっこいいところを見たいってことなのかな……。


 そう思うとなんかこそばゆくなって照れくさくて、顔が熱くなってしまう。それはまだわかるんだけど、この胸の高鳴りはなんだろう。


 ドキドキしてしまってより姉の顔をまともにみることができない。


「それじゃ、まずは歌の収録からやっていくね」


 動揺を隠すためにも今日の本来の目的である投稿動画の収録を始めることにした。


 生配信の時は口パクを絶対しないのがわたしのプライドでありポリシーなんだけど、投稿動画に関しては歌とダンスを別撮りにしてある。


 ヘッドセットが邪魔にならず思い切り踊れるというのもあるけど、複数のカメラで同時撮影した動画を編集して、MVみたいなスタイリッシュでかっこいい動画にしたくて楽曲は別で流している。


 まだ勉強中なのでカメラは3台しかないし、編集もまだまだだけどそのうちプロが作ったようなものにしたいと思って猛勉強中。


 別撮りと言っても完全に口パクなわけじゃなくて、マイクをつけていないだけで毎回ちゃんと歌いながら踊ってる。


 わたしにとって歌とダンスは切っても切り離せないもので、歌いながらの方がリズムやステップが合わせやすいから。


 ただあくまでも別撮りだから曲だけに興味がある人や、編集で少しは見栄えも良くなったダンス動画を見たい人は投稿動画をメインに見るし、それよりも口パクなしのダンスパフォーマンスに関心がある人は生配信の方で楽しんでもらえる。


 加えてやっぱりリアルタイムでリスナーさんとのコミュニケーションを取れるのが生配信の醍醐味であり大事な要素。


 投稿頻度って大切だから動画、生配信ともに手抜きしたりせずに真心こめて制作しているんだけど、歌って踊るだけの動画投稿と違って、リスナーさんと直接対面する生配信はその日どんなことを話題にするか考えておく必要もある。


 飽きずに楽しんでもらえるよう、いろんなネタを用意するのが一番大変だ。


 会話の流れによってはセンシティブな内容に踏み込んでしまうこともあるので、姉妹たちには生配信を見せることはできない。


 ただそれだと家族にはわたしの歌を聴かせないということになってしまうので、投稿動画の収録見学をしてもらおうというわけ。


 曲はもう作ってあるので、まずはそれに歌声をのせる録音からなんだけど、よく考えたら姉妹たちの前で歌声を披露するのはかなり久しぶりな気がする。


 アメリカで新曲を出すときに聴いてもらったけど、すぐに修業期間に入ってしまったのでそれ以降はみんなの前で歌っていない。


 久しぶりすぎて少し抵抗があるというか純粋に恥ずかしさがあるんだけど、みんなわたしの歌が聞けることをめちゃくちゃ楽しみにしてくれている。


 だから今日は家族サービスと思って、恥ずかしい気持ちは忘れて思いっきり情感込めて歌い上げることにしよう。


 誰かを招くこともあるだろうと休憩用も兼ねて設置しておいた大きめのソファーがちょうど役に立った。みんながそのソファーに座ってじっとこちらを見てる。


 今日までの努力の結果、よく聴いていてね。

 

 * * *


 茜にゆきの部活風景の録画を依頼した後、ソファーに座って歌の準備が整うのを待つ。ワクワクしながら以前聴いた時の事を思い出していた。


 演奏が始まり、美しい歌声が耳朶をなでるように響いてくる。数年ぶりに聴くゆきの歌声に衝撃を受けた。


 ずっと歌やダンスの勉強と練習をしていたのは知っていたけど、ここまで上達しているとは予想以上だ。


 子供の頃からずばぬけて可愛かったゆきは当初その容姿で芸能界へスカウトされたんだけど、すぐに歌の才能を見抜かれてふわふわダンスのもとになった歌を発表。


 幼い子供とは思えない歌唱力とダンスで社会現象と呼べるほどに大流行したんだけど、今の歌声はあのころとは別次元で、もう十分にプロとして活躍していけるレベル。


 やっぱりゆきは天才だ。


 ゆきのことだからまだまだ上を目指していくのは間違いない。これからどこまで昇っていくのか末恐ろしい。


 茜は目を閉じて自分の世界に入り込んで聞き入ってるし、楓乃子と陽愛はすでに泣いている。気持ちはよくわかる。かくいうあたしもすでに胸がドキドキして顔も熱くて仕方ない。他の三人も顔が真っ赤だ。


 だっておもいっきりラブソングなんだぞ!


 ポップな曲調だけど、歌詞が片思いの相手に向けた情熱的な恋心をつづったもの。


 それを生歌で、しかも至近距離で歌われた日には、まるで自分だけに向けられたメッセージみたいに勘違いしてしまうのは不可抗力!


 それをしっかりと情感込めて歌ってくるんだから、そりゃ感涙にむせぶのも仕方ないってものだろ。


 あたしもさっきからやばいけど、極力平静を装おうとしているのは自分でもよくわからんが、長女としての意地みたいなもんか。


 途中まではなんとか耐えてきたけど、最後のサビに入ってゆきが目線をこちらへ向けるようになったのでとうとう涙腺崩壊。


 こっちを見て何度も『大好き』って連呼されたら陥落必至! 赤面爆発! ただでさえ姉妹みんなブラコンなのに、そんなことされたらもっと重症化するに決まってるじゃないかよ……。


 狙ってやってるのか? つってもまぁゆきのことだから無自覚なんだろうけど……。


 涙腺は崩壊したけどどうにか正気を保ったまま曲が終わり、ゆきが録音スイッチをオフにした途端、3人はゆきに飛びついていった。


「めちゃくちゃよかったよ、ゆきちゃ~~ん!」


 陽愛が真正面から抱き着いて、胸のあたりに顔をうずめてグリグリしてる。


「ゆき、大好き」


「お姉ちゃんに聴かせるのにこの曲をチョイスするとはさすがゆきちゃんです~」


 茜はゆきの頭を抱きかかえて、楓乃子は右腕を抱きしめてスリスリ。もう完全にゆきの歌にやられちゃってるな。


 あたしは長女としてそんな姿を温かい目で見守る……なんてできるわけがない! 羨ましいに決まってる!


 当然空いてる左腕を確保。ゆきの温もりをめいっぱい感じてすごく幸せな気分。


 そのままほっぺにキスでもしたい衝動にかられてしまったあたしが実は一番重症かもしれん。


「そんなにみんなでくっついたら暑いってば~」


 ゆきからそんな苦情が出てるけど、まんざらでもないみたいだし離す気もないから当然のごとく却下。あんな曲を選んだ責任をとってしばらくもみくちゃにされてろ。



 満足するまでゆきを堪能した後、次はダンスを収録するというのであたしたちはほくほく顔でソファーに戻った。


 アメリカではメディアへの露出がなかったに等しいので、ダンスを見せてもらえるのはそれこそ子役の時以来になる。


 子役の時のダンスもかわいかったけど、それがどんな風に進化しているのか期待に胸が膨らんできた。


 曲が始まってゆきの体が動き出す。そんなにアップテンポの曲ではなかったのでダンスも激しいものではないんだけど、そんなことは関係なく始まるなり見入ってしまった。


 さっきと同じ曲だから熱烈な恋心を聞かされてまた赤面しそうだったけど、今回は曲よりもゆきのダンスに見入ってしまい照れている場合ではなくなった。


 専門家ではないのでどこがどういいとか詳しくは説明できねーが、とにかくキレイだ。


 特別な動きでもない、ちょっとした腕の動きにも洗練された美しさと言うか色気が漂っているような気がする。


 時に激しく時に妖艶に、しなやかな動きとキレのある動きが組み合わさって見事としか言いようのないパフォーマンスから目が離せない。


 他の姉妹の顔を見てみると、まるで美術館で心を打つ絵画を見た時のように恍惚とした表情で、食い入るようにゆきを見つめてる。


 ゆきは普段の所作からしてキレイで感心することも多いが、それがダンスにも活かされているのか。

 腕や足の上げ下ろしといったような単調な動きでさえ、ここまで流麗で芸術的なものになるものなんだなと感心する。


 足先から指先の動きまで、どうやったらこんなに美しく見えるように動かせるのか不思議なくらい、どこをとってもしなやかでキレイだ。


 ダンスを見て鳥肌が止まらないのは生まれて初めての経験だ。


 ゆきには底がないんじゃないかと思うくらいのポテンシャルが秘められている。


 ただでさえ完成されているように見えるこのダンスも、これからさらに洗練されていくんだろうなと思うと、いつまでもそばで見ていたいという欲求があふれてくる。

 どこまで成長していくのか、ずっと見守っていたい。


 この気持ちはきっとここにいるブラコン4姉妹がみんな抱いている想いに違いない。


 曲が終わって最後のポーズが決まっても、さっきと違って誰もゆきに駆け寄ったりしない。


 みんな芸術作品や名作映画を見た後のように、感動の余韻に浸っている。かくいうあたしもそうだ。


 駆け寄るどころか無意識のうちに立ち上がって拍手をしていた。4人だけのスタンディングオベーション。


 言葉であれこれ言うよりふさわしいような気がして、最大の賛辞を込めて惜しみない拍手を送る。

 ゆきは少し照れながらも、すごく嬉しそうな顔をしている。


 今はたった4人だけどいつか何万人、何十万人もの観衆から雷鳴のような拍手を浴びる日が来るに違いない。


 そう考えるとその場面が目に浮かぶようで、涙があふれそうになる。すごく楽しみだ。その場面をお姉ちゃんに一番近くで見させてくれよ。


 * * *


 愛情込めて精いっぱい歌い切った。ちょっと選曲がアレだったかなとは思うけど、元々予定していた曲だし、あくまでも歌だしね。


 けどちょっとは意識してくれたりなんかして……ってそんなわけないか。


 照明の配置上、マイクのある場所よりもソファーのある位置の方がちょっと暗くて表情は良くわからなかったけど、ダンスが終わった後にいっぱい拍手をくれたからおおむね好評だったみたい。


「みんなに見られてちょっと緊張しちゃったよ。わたしの歌とダンス、どうだった? ちゃんと歌えて踊れてたかな?」


 コメントでいろんな人からの賞賛の言葉はもらえるけど、少しは身内視点からの感想も聞いておきたい。


 キリママが気合を込めて可愛く作ってくれたアバターのおかげで、かわいいとチヤホヤされている現状ではリスナーさんの評価が甘くなっている可能性があるから、そういったフィルターがない家族なら忌憚(きたん)のない意見を聞かせてくれるだろう。


 改善できる点があるならどんどん改善してもっと上を目指したい。そしてもっとたくさんの人に聴いてもらって、より多くの人に幸せを届けたいから。


「感情がこもった歌声に胸が熱くなった! テクニックも以前の比じゃないし、声量もやばくて思わず感動して泣いちゃった! 歌ってここまで心を動かすものなんだなって再認識させられたよ。ダンスもすっごいキレイだったよ!」


 ひよりが興奮気味に賞賛してくれた。実際に泣いていたようで、かの姉とひよりは目が赤くなって腫れている。


「心に響く歌唱力はそこらのプロでも太刀打ちできないと思う。しなやかなダンスはまるで芸術作品を見ているようだった。細部まで動きが洗練されていて、そんな繊細な動きはアバターでは表現できないからVtuberでやっていくのはもったいないくらい」


 あか姉は冷静ながらもべた褒めなのは同じ。いつもより饒舌なのは少し興奮しているのかな。


 アバターでもないし画面越しでもない生で見ている分、細かいところまで良く見えて、レベルがより高く見えたかもしれない。


「本当に最高でしたわ」「文句のつけようがない」

 かの姉とより姉も口をそろえて賞賛してくれる。


 結論。いろいろ条件に違いがあるとはいえ、身内の方が評価甘々だった。


 まぁそれだけわたしのことを好きでいてくれているということだから、嬉しくはあるんだけどね。


 リスナーのみんなからも家族からもみんなに褒められてるんだから少しくらいは自信を持ってもいいのかな。


「ありがとうね。みんなに褒められて少し自信がついたよ! でもそれで慢心しないようにもっと精進しないとね!」


「慢心なんてゆきはしねーだろ。いつだって努力してるのはあたしらもずっと見てきてるよ。だからあたしらが褒めたのは本心からだし、もっと自信もっていいんだよ」


 より姉がそう言って微笑んでくれる。いつも否定せずに受け入れてくれるこの姉妹に囲まれて、今までずっと支えられてきた。


 この賞賛と期待を裏切らないように、もっと上を目指して結果を残したい。


 もっとたくさんの人に聴いてもらえるようになったらきっとそれが一番の恩返しになる。まずは目指せチャンネル登録者100万人! 頑張るぞ、おー!

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