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雪の精霊~命のきらめき~【PV45000突破☆感謝!完結保証】  作者: あるて
第3章 拝啓、未来のわたし

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第152曲 お土産にはささやかな気持ちを込めて

「それじゃ、明日はお仕事もあるしそろそろ帰るね」


 お昼ごはんを食べた後、アトラクションも大方回り切ったころに琴音ちゃんが切り出した。


 時刻は18時。そろそろお腹も空いてきた頃だ。


「晩御飯は一緒に食べないの?」


「さすがにいつまでも遊んでるわけにいかないからね。新幹線の時間もあるし、そろそろここを出ないと」


 お仕事の都合とあれば引き留めるわけにもいかない。少し寂しい気持ちもあるけど、快く見送ることにした。


「それじゃ、お姉さん達もゆきちゃんも、またね」


 手を振り颯爽とゲートを潜り抜けていく琴音ちゃん。決して振り返ることなく、前だけを見て進んでいく姿はかっこいい。


「かっこいいじゃねーか」


 より姉も同じ感想を抱いたようだ。ほんと、わたしなんかよりよっぽど大人だよね。


 どうかもっといい恋をして、素敵な人に巡り合ってね。



 あらかたアトラクションは制覇したので、もう一度楽しみたいものを回りながらお土産を見て歩いた。


「そろそろトートバッグも買い替えないといけないんだよね」


「そんなのはその辺で買う方がいいんじゃないの? 記念品なのに普段使いするの?」


「こういうのは使ってなんぼでしょ。これなんか買い物の時に持ってたら可愛いと思わない?」


 キャラクターが印刷されたトートバッグを手に取り、ひよりに見せる。


「うん、可愛いね。……こういうのは何のてらいもなく乙女っぽい物を選ぶんだよなぁ」


「何か言った?」


「なんでもなーい。買い物目線が主婦みたいだなと思ってただけ」


 失礼な。誰が所帯じみてるってんだ。わたしはまだまだイケるぞ。


「ゆきちゃん、これなんて可愛くない?」


 そう言ってひよりが持ってきたのはキーチェーン。


「大きすぎないし、カバンのストラップにつけたら可愛いだろうね」


「種類があるからペアで持とうよ」


 見てみると色違いがあるようだ。


「ちょうど五種類か」


 少し考えた後、思い切って全種類買うことに。


「ひょっとしてみんなの分も?」


「そうだよ。ひよりはどの色がいい?」


「ゆきちゃんはどれにするの?」


「わたしはこれかな。一番大人しめの色だし」


 わたしが選んだのは白をベースにしてピンク色の彩が施されたもの。白だから男の子が持っててもギリいけるでしょ。


「ゆきちゃんならどれを持ってても違和感ないけどね。わたしはこれにしようかな」


 ひよりはわたしの選んだ奴とは配色が逆のもの、ピンクベースに白のキーチェーンを選んだ。

 実質的にこれがわたしとお揃いになっていて、これを選んだのもそのせいだろう。なんというか、ひよりらしい。


「お姉ちゃん達もこれがいいって言うかな」


「みんなそんなこと言わないよ。ひよりが気に入ったのならそれでいいよ」


 少し気を遣ってるみたいだけど、そんなに大事そうに握りしめてたら誰もそれを選べないと思うよ。ほんとかわいいな。


「ありがとね、ゆきちゃん」


「どういたしまして。大切にしてね」


「もちろんだよ! どこへ行くにもつけていくんだから」


 大した金額でもないのに、そこまで喜んでもらえたら買った甲斐があるというものだ。


「お、キーチェーンか。かわいいじゃねーか。あたしはこの色がいいかな」


 どこからともなく現れたより姉がわたしの手元を見て、ひょいとひとつ持っていってしまった。


「より姉! ゆきちゃんが買ってくれたんだよ! ちゃんとお礼言って!」


 ひよりに咎められ、舌を出すより姉。


「へいへい。ゆき、ありがとな。大事にするよ」


「おや、キーチェーンですか。わたしにも?」


「わたしも欲しい」


 かの姉とあか姉もやってきて、みんなでキーチェーンを分け合う。


「みんなでお揃いだね」


「ゆき嬉しそう」


 そんなこと言うあか姉だってニコニコしてすごく嬉しそうだよ。


「よく考えたらみんなでお揃いのもの持つなんてこれが初めてかもしんねーな」


「言われてみればそうだね。五種類の色違いってそんなに見かけないからじゃない」


 ひよりの言うとおりペアの物って言うのはよくあるんだけど、五種類の色違いでそれも可愛いデザインのものとなればなかなか見つからない。

 だからみんなで同じデザインの物を持つというのはこれが初めてだったりする。


「いい記念になりましたね。これは生涯大切にしないといけません」


 生涯はさすがに大げさじゃないかな。それくらい大切にしてもらえるのは嬉しいけどね。ありがと、かの姉。


「お土産も買ったし、そろそろ行くか」


 いや、より姉何も買ってないでしょ。


「会社の人にお土産は?」


「そんなのいるか?」


 おいおい社会人。


「普段お世話になってる方々にお土産を買っていくのは、社会人としてのマナーだと思うんだけど」


「あたしはそんな旧弊には縛られねー! それにお世話になんてなってねーしな」


「雇ってもらってるだけでも十分お世話になってるでしょうが。もうしょうがないなぁ。わたしも学校に持っていくお土産を選ぶから、ついでに見繕ってあげるよ」


 ほんとうに仕方のない長女だ。自由奔放なところがより姉らしいっちゃらしいけど。


「ゆきちゃん、生徒会へのお土産はどうしよう?」


「お小遣いがいくらでもあるわけじゃないんだからいいよ。わたしが買っておくね。ひよりは自分のクラスに配る分だけでいいから」


「はーい。ありがとう、ゆきちゃん!」


 うんうん、しっかり生徒会の事も考えてて偉いぞ。長女も末妹を見習ってほしいもんだ。


「あたしは逆にお世話してやってる方だからな」


 新米が何言ってんだ。まだ社会人になりたてでしょうが。


 しばらくお菓子なんかを中心にグッズショップを渡り歩く。より姉は退屈そうにしてるけど、文句を言いながらも後をついてくるのが可愛らしい。

 ひとりで遊んできてもいいよって言ったら「仲間外れにすんなよー」ってべそをかかれてしまった。

 何をするにも家族一緒がいいんだね。


 わたしがお会計をしていると、そのより姉が寄ってきた。


「えらくたくさん買ったんだな。人付き合いが多いゆきらしいけど、いくらなんでも多くないか?」


「クラスに配る分と生徒会、あと職員室にも持っていくつもりだからね」


「先生たちにまで? それは随分律儀なことだな」


「生徒会長だしね。今年で終わりだから少しは恩返しをしておきたいなって」


 今年も含めて三年間。生徒会長としていろんなことをやってきた。例年にはやっていなかったようなことも、いろいろ作り出した。

 それら全部に、うるさく注文を付けることもなく許可を出してくれた先生方には感謝の言葉しかない。


「わたしが好きなように学園を作り替えることが出来たのも、先生方が支えてくれたおかげだからね」


 そう言って笑うわたしを優しく見つめるより姉。


「そうやってなんでもポジティブにとらえられるのはゆきのすごいところだよ。あたしは学生の頃、先生なんて口うるさいだけの面倒な存在だったけどな」


「叱ってくれるのも気持ちがあるからだよ。どうでもいい相手なら、わざわざ自分の気分を害してまで叱ろうとは思わないでしょ」


「……そうだな。何も言わないってのも、黙って見守ってるだけかもしんねーしな。悪くとらえたらきりがねーか」


「そうだよ。中にはおかしな人もいるかもしれないけど、そんな一部を見て全体を決めつけてしまうのはもったいないことだよ。悪いところを見てみぬふりをするのは違うと思うけど、積極的に良いところを見ていきたいなって思うんだ」


 どうしようもない人というのは存在するし、他人に迷惑をかけても平然としている人もいる。だけど、その一部を見て世を憂いてしまうのは性急すぎると思う。


 もっとたくさんの人を見て、いろんな人の温かさに触れることが出来ればきっと印象は変わると思う。

 人の温もりに触れようと思ったら、まずは自分が温かい存在でいなければならない。他人は自分の鏡でもあるんだから。


「そんなゆきだから、いろんな人がおまえを慕うんだろうな。自慢の弟だよ」


「妹じゃなくて?」


「真面目に言ってんだから茶化すんじゃねーよ。それとも本心か?」


 そんなわけねーだろ。

 最近よく持ち上げられるから照れくさいんだよ。わたしはそんなに大した人間じゃないのに。


「弟と妹を見習って、あたしもお土産を選んでみるかな」


 って言いながらなんででっかいぬいぐるみを見てるのかな。誰に送るつもりだ。迷惑だろ。


「そんなもの贈る相手がいるの? 一緒に選んであげるよ」


「やっぱダメか。事務所に飾るのにいいかなと思ったんだけどな」


 やめなさいって。


 それからショップが閉まる時間になるまで、ああでもないこうでもないと言いながらみんなとお土産を選んで過ごした。

 普段の感謝を込めて、みんなの顔を思い浮かべながら選ぶのは楽しいよね。

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