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雪の精霊~命のきらめき~【PV45000突破☆感謝!完結保証】  作者: あるて
第1章 充電期間

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第13曲 男の尊厳

「あのね、みんなに報告があるんだ」


 朝食の席。昨日の夜、より姉に相談したことを打ち明けることにしたわたしは緊張しつつも一気に告白した。


「じつはね、男でもまれにあることらしいんだけど、わたし、胸が出てきてブラをしないといけなくなりました……」


 気持ち悪いとか思われたらショックだなーと思いながら俯いていると一番最初に口を開いたのはひよりだった。


「知ってるよ」


 へ?


「ゆきちゃんに抱き着くたび、だんだん柔らかいものがあたるようになってきてたからね! やぁらかくて気持ちいいんだ」


 その測定のされ方は恥ずかしい!

 でもだからってひよりにハグ禁止なんて言ったら泣いちゃうだろうしな。

 せっかくかわいい妹がなついてくれてるんだからそれくらいは我慢するか、お兄ちゃんだしね。


 予想外の答えに錯乱してるな。


「わたしも知ってた」


 あか姉も!?


「ゆきの服を選ぶ時、気づいた」


 あーそれもそうか。


「わたしも当然知ってましたよ! わたしのゆきちゃんセンサーに狂いなどありません。今は78のBといったところですね」


 昨日測った数値と完全に一致してる! その見抜き方はちょっと怖いよ、かの姉!

 あとさらりとサイズを公表しないで!


「なんだよ、気づいてなかったのわたしだけかよ」


 まぁより姉は細かいことを気にしない大雑把な性格だから、些細な変化にまで気が付かないだろうと思う。

 というよりもまだ目立つほど大きくなってるわけでもないのに、他の姉妹が知ってたことの方が驚きだよ……。

 太ったりしたらすぐにバレそうだ。


「男なのにブラジャーするとか気持ち悪いって思わない?」


 引かれたりしないか心配だったので率直に聞いてみた。


「そんなこと思ったりしないよ! 逆にゆきちゃんの美貌にさらに隙がなくなって羨ましいくらい」


「いよいよ完全体に近づく」


 変身していくみたいに言わないで。

 わたし第三形態とかないよ?


「さすが神が与えてくれた最高傑作です!」


 それはいくらなんでも大げさ。

 みんな肯定的にとらえてくれてるのでそこは安心したけど、わたしの体がどんどん女体化していくのを歓迎すらしているようでちょっと複雑な気分。

 自分がだんだん得体のしれない生物になっていくみたいだ。


「ブラはいつ買いに行くの?」


 いつもわたしのコーディネートをしてくれるあか姉が聞いてきた。


「今日の講義は午前だけで終わるから、すぐに必要な分は昼から買ってきとくよ。当面の分だけ買ってくるから、また次の休みにでも一緒に行って選んでやってくれ」


「わかった」


 自分の役割を取られるわけではないとわかってあか姉は満足げ。


「ゆきちゃんの初ブラ選びわたしも行きたい!」


 ひよりも興味津々といった感じで手を挙げる。なんでみんなわたしの服を選ぶのが好きなのかなぁ。

 しかも今回は下着だよ? 照れたりしないのかな。

 わたしは恥ずかしくて仕方がないんだけど。


「じゃあ今週の休みに三人で買い物に行こうか」


「わーいたのしみ!」


「腕が鳴る」


 週末の予定が決まった。


「あと、昨日は記念配信やっちゃったから流れたけど、今日の投稿動画の撮影ってみんな見に来るの?」


 緊張の瞬間が去ってどうにか落ち着きを取り戻したので、約束していたことを確認する。


「当然だろ」

「絶対行きます」

「愚問」

「もちろん!」


 声は揃ってないけど意見は全会一致の模様。


「じゃ、晩御飯食べてちょっとしたら撮影に入るよ。みんな揃ってスタジオに行こうか」


 今度はみんなそろって「はーい」と元気な返事。

 弟が唄って踊るのを見るのがそんなに楽しみなんだろうか?

 まぁひよりは昔から収録を見学するのが大好きだったけど。



 

 学校は何事もなく平和に終わった。

 さすがにまだノーブラ状態なのでカミングアウトは明日に延期。

 そこまではよかったんだけど、事件は家に帰ってから起こった。


 今日さっそくより姉が買ってきてくれたブラにとんでもないものが混入していたのだ。

 洗い替えも必要だということでとりあえずシンプルなスポブラ三枚。

 これは年齢相応なものだからいいとして。


 その横に思わず赤面してしまうようなセクシーなブラが黒と赤、一枚ずつ。上半分透けてるし……。


「より姉、自分の分も混ざってるよ。こんなところに放置してないで片付けておいてよ。目のやり場に困るってば」


 ソファに寝転がってテレビを見ていたより姉だったけど、わたしの苦情を聞くなり顔だけをこちらに向けた。満面の笑顔。

 嫌な予感しかしない。


「何言ってんだ、全部ゆきのために買ってきたんだよ」


 オーマイガッ。

 やはり頼む相手を間違えてしまったのだろうか。

 当の本人は実に嬉しそうな顔。


「試着してみてくれよ」


 着るの? これを? わたしが?


「イヤイヤイヤイヤイヤ、気は確かですか? わたし十三歳の男子中学生ですよ? このデザインはいくらなんでもないのではないでしょうか……」


 思わず敬語になってしまったが、何を言っているか分からないと言いたげな怪訝な顔をしている。

 その表情をしたいのはこっちだよ。


 いわく、学校に派手なのをつけていくと校則違反って言われるから地味すぎるくらいのを選んだけど、プライベート用はしっかりオシャレしないと、とのこと。

 いや、オシャレどころかもはやエロイんですけどこの二点。


「オシャレしないとってとこまでは理解できるけど、だからといってなぜ男子中学生にセクシー下着をチョイスしたのかがわからないんだけど」


 わたしの常識的な質問に対する答えは「似合うから」という実にシンプルなもの。

 どう考えたら男子中学生に似合うという考えに至るのかは理解しがたい。

 ここはいつもわたしに年相応な服を選んでくれる常識人、あか姉に助けを求めるしかない。


「あか姉からも何か言ってやってよ。これはいくらなんでもわたしには大人すぎると思うでしょ?」


 あか姉とひよりはさっきからこっちのやりとりを無視して、問題のブラを手に取り無言で考え込んでいる。

 きっと呆れているんだろう。二人はわたしの味方だよね?


「似合う」


 たった一言で裏切られてしまった。

 一番頼りにしていた人が賛成派に回ったおかげで膝から崩れ落ちそうになるのをこらえ、なんとか説得を試みる。


「あと何年か経てば大丈夫かもだけど、さすがに中二でこれは早いと思わない?」


「ゆきはあどけないところもあるけど、雰囲気が大人びてるから下着はこれくらいのを着ていても何も違和感がない。」


 言い切った。


 ジーザス。


 絶望に突き落とされそうな気分のわたしに追い打ちをかけてきたのは、ずっと静かだった最愛の妹だった。


「ゆきちゃんがつけてるのを想像してみたけど、絶対似合うと思うよ! てゆーかつけて見せてよ!」


 あぁ、なんて純真無垢で己の欲望に素直な提案なんだろう。

 君の目の前にいるのはれっきとした男でお兄ちゃんなんだよ?

 少しくらいは心情を忖度してくれてもいいんじゃないのかね、妹よ。


 しかしここにきて賛成派がすでに三人。

 かの姉が帰ってきてないからまだ三対二になるかもしれない。最終的に両親の意見で逆転できる可能性もある。

 でも現状反対派はわたし一人のみ。圧倒的劣勢。


 さらにひよりの発言によってなにはともあれ試着してみないとわからないという結論に至ってしまっている。

 はじめてスカートをはいた時の事を思い出した。

 あの時は家族全員一致で似合うという結論が出て、わたしのクローゼットにスカートが追加されていくようになってしまった。


 つまりこうなってしまうと逆らえない。


 早く着てみろと急かされるまま、脱衣所へ例のブラと共に押し込まれてしまった。

 しばし逡巡のあと、男なんだから上半身の裸を見られたってどってことない! これはネタなんだ! と自分に言い聞かせて正気へ戻る前に一気に着替えてしまった。


「着替えたよー……」


 着替えるまではできたが、ここからさらにそれを披露するという難関が待っている。

 いくら開き直ったところで恥ずかしいもんは恥ずかしい! しかし悩んでる時間は与えてもらえなかった。

 ドアノブを握って固まっていたところにより姉が容赦なく乱入してきて、無理やり連れ出されてしまった。


「うひゃあぁぁぁぁ!」


 女の子のような悲鳴を上げて座り込んでしまった。

 もちろん胸は両手で隠して。

 反応が完全に乙女やん。


 妹も見てる前でこれでは兄としてのメンツがたたない。

 なんとか立ち上がり隠していた腕を離したけど、つい恥ずかしくて腕を前に回し少しでも隠そうとしてしまう。

 顔から火が出そうなほどの羞恥に耐えながら披露したわけだけど、自分から感想を聞くなんてできるわけがない。

 針のむしろ状態のまま固まっていると、ひよりが感極まったかのように叫んだ。


「めちゃくちゃ似合う! 大人っぽくてセクシーだよ! ゆきちゃん!」


 いや、セクシーは求めていないのよ……。


「まさかここまで色っぽくなるとはな、予想以上だぜ」

「鼻血出そう」


 姉二人も悶絶している。


「ゆきちゃんも自分で見てみなよ、ほら!」


 そう言ってひよりが玄関に置いてある姿見を取りに行くと同時にかの姉も帰ってきた。

 かの姉はわたしの姿を見るなり明らかに目の色が変わってしまう。


「あらあらあらあらまぁまぁまぁ!」


 あ、これ聞くまでもない反応だ。


 これで両親に頼っても逆転はできなくなった。

 実のところお父さんはともかくお母さんに関しては絶対賛成派に回るだろうということは予想できてたんだけど。


 家に帰ってきて弟がブラをつけてたら普通は家族会議になるんじゃないかなぁと意識を遠くに飛ばして現実逃避していると、ふとひよりが持ってきてくれた姿見に目が向いた。

 腰まで伸びたロングヘアにくびれたウエスト、ヒップから足にかけても文句なしの曲線美。

 そして胸元には大人びた黒のブラジャー。


 我ながら思わず色っぽいと思ってしまった。

 姿見を見て赤面しているわたしを見てあか姉が「ほら、よく似合ってる」と言ってきたので思わず「うん」と答えてしまった。


 しまった。自分で全会一致にしちゃった。


 こうして男の尊厳と引き換えに、追加法案で出された上と下はある程度合わせないといけないという案も可決され、わたしの下着すらも女体化していくことが決定してしまいました。

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