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雪の精霊 ~命のきらめき~【PV50000突破☆感謝!】  作者: あるて
第2章 開花・覚醒

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第128曲 油断は禁物

 文化祭にやることは決まったけど、それまでに実施されるイベントは他にもある。


 まずは体育祭。


 結局2年連続で仮装リレーのおもちゃにされてしまったけど、今年はさすがにネタも尽きてくるだろう。いいとこナース服ってとこか。

 まぁナース服くらいなら。スカートが短いのさえ我慢すればそんなに恥ずかしくもない。ってこの感覚がヤバいのかな。


 開会式からつつがなく進行し、お昼ご飯は見物に来ていたより姉、かの姉、あか姉も含めて家族で食べた。


「ゆきは今年も仮装リレーに出るんだろ? 今年はどんな服装になるのか聞いてねーのか?」


 より姉がおにぎりを頬張りながら聞いてきた。


「なんだか毎年わたしだけ教えてもらえないんだよね。見てからのお楽しみだって」


 体育委員は男子ばかりなのだけど、去年までは上級生だったので悪ノリをしていたんだろう。


 今年は同じクラスの男子も委員の中にいるし、そんなに無茶な恰好はさせないだろうと信じている。


「あらあら。そんなことで大丈夫なんですか? 今年も期待していいのかしら。去年まで毎年可愛らしい服装でしたけど」


 うーん、かの姉は何を期待しているのかな。


「センスが試される」


 何のセンス? あか姉も何やら期待してるよね?


「さすがに3年連続で恥ずかしい恰好ばかりさせないでしょ! まがりなりにも生徒会長だし」


 って思ってたんだけどね……。


『さぁ次は我が校の名物会長のお出ましだ! 月に代わってお仕置きされたい! 魔法少女ゆきだぁー!』


 くそー! やられた!


 なんだこの格好は! めっちゃ恥ずかしい! ステッキまでつけやがって!

 男子高校生が……。父兄も見ている前で……魔法少女。


 より姉は笑い転げてるし、かの姉は写真を撮りまくってる……。あか姉は……あぁ、あれは脳内アルバムに必死に保存してる顔だ。


 スカートが短いのもあるけど、それ以上に膝上まであるブーツが歩きにくくて……。誰が作ったのか知らないけど、ちゃんと駆動するようにしとけよ!

 ブーツのおかげで走ることなどもっての他なわたしは、例年以上にたっぷりと恥をさらし続けることに。


 ええい! こうなりゃヤケだ!


 ゴールテープを切るときに、思い切って魔法少女の決めポーズ。


「お前ら全員、お仕置きだ!」


 どっと沸く観衆。笑うがいいさ……。


 より姉はいつまで笑ってんの……。そのまま酸欠になっちゃえ。



「いやー笑った笑った。体育委員には最大限の賛辞を贈りてーな!」


 賛辞より必要なのはお仕置きだよ。

 次の登校日が楽しみだ。


「わたしはあんなに愛らしいゆきちゃんが見られて満足でしたよ」


 かの姉はいっぱい写真撮ってたもんね。


「ポスターサイズに引き延ばして、部屋に飾っておきますね」


 ごめんなさいわたしが悪かったです勘弁してください。


「わたしの分も印刷希望」


「わたしも!」


「それほしーな」


 わたしの恥部が量産されていく……。くっ、殺せ!


「みなさん、本当に勘弁してもらえません? あれ本当に恥ずかしかったんですよ? そんなにゆきちゃんをイジメて楽しいですか?」


 もう涙目だよ。敬語だって出ちゃうよ。


「どうしてそんなに嫌がるの? よく似合ってたし可愛かったのに」


「いやわたし男だよ? 男が魔法少女とか変質者だよ。通報案件だよ。事案だよ」


 女の子にはこのなんともいえない気持ちが理解できないのかなぁ……。


「そーいやそうだった! アハハ!」


 何がそーいやなのかな? 小一時間ほど問い詰めてもいい?


「違和感なかった」


 ねぇ、あなた達ホントにわたしの事好きなの?


「性別なんて些細な問題じゃねーか」


 些細じゃないよ!? 大事な要素だと思うよ?


「ゆきちゃんはゆきちゃんですから。本当の愛の前では性別なんてちっぽけな問題ですよ」


 いいこと言ってる風に聞こえるけど違うからね? あなた達、性別不詳の正体不明な生き物に恋してるってことだからね?


「たとえゆきが女の子になったとしても、あたしらの気持ちは変わんねーよ」


 ならないから。

 性転換の予定はありません。


 なんなのこの人たち。どうしてわたしを女の子にしたがるんだろう。


「そんな可愛い顔で髪を伸ばしてるのが悪い」


 髪切るって言ったら猛烈に反対するじゃん! いつも家族会議ものでしょうが!

 だいたい髪を伸ばし始めたのだって、みんなが「その方が可愛い」って勧めてきたからなんだよ? 幼心に刻み込まれた結果なんだから。


「だったらバッサリ切ってもいい?」


「「「「ダメ」」」」


 ほらね。議論の余地もないじゃんか。


「ゆきはそのままでいい」


「男とか女とか、どうでもいいんだよ。ゆきはゆきだからな」


「そうですよ。どんなことになってもわたし達はゆきちゃんのことが大好きなままですから」


 どうにもならないっての。


「それとも何? 男らしくなって女の子にモテモテになりたいの~?」


 ぐ……。妹が悪い顔で意地悪な質問をしてきやがる。


「そんなわけないでしょ。あなた達に想われてるだけでも十分に贅沢なことだよ」


「だったらいいじゃん。ゆきちゃんはそのままでいいんだよ! こんなにキレイで可愛いんだから! 大好き!」


「ぐえっ」


 大好きと言いながら飛びついてこないの。


「それにしても魔法少女とは意表を突かれたなぁ。いろいろ考えてるけどそれは思いつかなかったわ。こりゃいろいろ幅が広がったな」


 ちょっとより姉? 何を参考にしたのかな? そっち方面に広げなくていいから。


 あいつら、より姉に余計な情報を与えやがって……。


「バトルスーツなんていいかもな」


 ほら来たよ。より姉の考えるバトルスーツなんて、絶対にろくでもないんだから。


「ちょっと露出が激しすぎる気もするけど、ゆきなら似合いそうだ」


 どんな姿を想像してるんだか。知りたくないな。


「いやいやより姉? もうお仕事なんだから、そんな趣味全開の衣装を作ってる場合じゃないでしょ。ちゃんと実用性のある服を作らないと」


「何言ってんだ。一部の人にではあるけど、ちゃんと需要はあるんだぞ。イベントに参加する人とかな」


 それってレイヤーさん! わたしのステージ衣装をなんだと思ってるんだ。


「戦闘服なんだから、ちゃんと全身を包み込むデザインだぞ。ちょっと穴を空けるだけだって」


 絶対ちょっとじゃないよね。


「へそと下乳が見えるくらいだ。太ももはがっつり見せるけどな!」


 十分だよ! 絶対着ないからな!


「背中はがら空きかな。戦士だから前だけ守れば十分だろ」


 武士か。

 より姉の服で背中が空いてない方が珍しいよね。

 デザインがまとまるにつれて、どんどんエロくなっていってるんだけど。


「さっそく明日にでもデザイン起こしてみっかな。楽しみにしててくれ」


 全然楽しみじゃない。むしろ恐怖だよ。


「そういえばゆき、休みの日にどっかで時間を取れねーか? 一度うちの会社に来てほしーんだよ」


「ん? 今週の土曜なら昼間は空いてるけど。より姉の会社がわたしに何の用?」


「いや大したことじゃねーんだけどな。出来上がった衣装を着てもらって、微調整をしたいんだ」


 本当にそれだけか? なんか怪しいな……。


「なんだよその顔は。嘘は言ってねーぞ。それもちゃんと目的のひとつだ」


 それ()ってどういうことだ。やっぱり他に目的があるんじゃないか。


「……エロいのは着ないからね?」


「それは大丈夫だ。ゆきは可愛い衣装を何着か着るだけ。それだけだって」


 恥ずかしい思いをしなくていいんなら別に構わないけど。

 なんか必死に説得してる気がして怪しいんだよなぁ。


「衣装を着て写真を撮るだけだから、そんなに構えなくても大丈夫だっての。ゆきは衣装を着て立ってるだけだから楽なもんだろ?」


「うん、それならいいけど」


「まぁそんなに固くならないで、肩の骨を外して来てくれよ」


 それを言うなら肩の力を抜いてでしょ。脱臼してどーすんの。



 その週の土曜、より姉の会社を訪れた。骨は外してません。

 でもまさかあんなことになるなんて、その時のわたしは想像もしていなかった。

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