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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第五章 黄昏編

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革新魔法

革新魔法(ダエグ)は、何ができるんだ?」


 俺はエルマに問う。


「革新魔法は、常識を裏返す魔法じゃ。何かを呼び出したり、力を放つものではない」


 エルマが手をかざすと、俺も先ほど頭に刻み込んだ、革新魔法の魔法陣が浮かび上がった。


「ほれ、儂に向かって石を投げてみるがいい」


「いいのか?」


 躊躇いながらも、俺は足元の石を拾い、エルマへ放る。


『空間⭐︎反転』


 エルマが力を込めた次の瞬間、石がその魔法陣に弾かれたように見えた。

 俺の手を離れた石が、投げた軌道をなぞるように、逆向きで戻ってくる。


「いてっ」


 そして俺の額に直撃した。


「進行方向を反転させれば、この通りじゃ。他にも訓練次第で様々なものが反転できる」


 エルマは淡々と説明し、他にも幾つか簡単な例を見せてくれた。

 一見地味な魔法にも見えるが、その応用範囲は計り知れない。

 常識と思い込んでいる法則が、反転できる。

 これは、使い方次第で、世界さえ変わる。

 確かに――革新だ。


   ◇ ◇ ◇


 長く刃を交えてきた亥人と丑人は、魔王モレクの撃退により、ようやく手を取り合うことができた。

 丑人に奪われていた亥人の縄張りはすべて返され、必要な土地は共有するという形で、双方は合意した。

 丑人たちはモレクに従わされていただけで、元来、好戦的な種族ではなかったようだ。


 和解を祝う宴は三日三晩続いた。昨日まで睨み合っていた者同士が、酒を酌み交わし、今やすっかり意気投合している。


 宴の最後、皆の前にグリンが進み出た。


魔科学術師(トリックスター)よ。オレぁあんたに借りが多すぎる。(はがね)の作り方を教わり、モレクを倒してもらい、命まで救われ、鉱山まで取り戻してもらった。何も返さねえままじゃ、筋が通らねえ」


 拳を握りしめ、まっすぐ俺を見る。


「聞けば、あんたにはまだ大きな仕事があるらしいな。なら決めた。オレはあんたの下につき、手助けをする。それくらいして、ようやく釣り合う」


 他の亥人たちも、それを聞き頷いていた。


「俺は目的だった古代魔法を手に入れた。それで十分だ。そこまで恩を背負わなくてもいい」


 俺はそう返したが、グリンは首を振る。


「それじゃあオレの気が済まねえ。それにな、あんたについていけば、まだ知らねえ世界が見られるんじゃねえか、そんな打算もある。だがな、それ以上に――あんたを助けたい。それが本音だ」


 顎で周囲を示す。


「見てみな。他の亥人も、丑人どもも、同じ顔してやがる」


 振り向けば、大勢の巨人たちがこちらを見ていた。

 俺に救われたと信じている者たちの目――。


 いや……その視線は、俺ではなく、別の人物へと吸い寄せられているようだ。

 火の明かりに照らされた、巳人の少女。


 ミーアだ。


 どうやら慕われているのは、俺というより――あいつらしい。


「最近のミーアは、本当にしっかりしてきたよな。人望もある」


「ご主人様、もしかして気づいてないのかにゃん?」


 隣で、リリィが肉を頬張りながら聞いてくる。


解析(アナライズ)で見れば一目瞭然にゃん。ミーアはもう、あの能力に目覚めてるにゃん」


「あの能力?」


「巳人の女が得意とする――『魅了(テンプテーション)』にゃん。他者の心を引き寄せ、自然と従わせる力にゃん」


「……は?」


 思わず間の抜けた声が漏れた。

 あの純粋無垢なミーアが、他者を魅了する?


 だが確かに、皆の視線は彼女へ集まり、彼女の言葉で動いている。

 おそらく本人は無自覚でやっているのだろう。

 悪気はないとはいえ……兄としては、少しばかり複雑だ。


「このままいけば、ご主人様より配下が増えそうにゃんね」


 リリィが意地悪く笑った。


「理由が何であれ、味方が増えるのは悪くない。儂らの相手は大魔王であり、皇帝じゃ。一筋縄でいく相手ではないからのう」


 エルマの言葉に、反論の余地はない。

 巨人たちの協力には、確かな重みがある。

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