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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第五章 黄昏編

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解放

 宿主の魔力が尽きれば、モレクの上書きは解ける。

 モレクほどの存在を維持するには、相応の魔力量が必要だろう。並の丑人の肉体では、長くはもたない。理屈は単純だ。


 他のモレクの個体にも、亥人たちが殺到する。盾で押さえ込み、腕に絡みつき、その状態で石になり、動きを封じる。

 皆、恐怖がないわけではないだろう。それでも彼らは、グリンを救うため、ミーアを守るため、退くことはない。

 彼らを束ねているのがミーアだ。こう見えて、アースガルド自警団の長。彼女は個の戦いだけでなく、集団の戦いを知っている。

 そして、覚悟を決めた者たちによる捨て身の攻撃は強い。

 やがてこのモレクも魔力の消費と共に輪郭を失っていく。


 ならば俺も動こう。

 これまでの情報をまとめれば、モレクの魔力を削ればいい。魔力がなくなれば体を維持できなくなるだろう。

 照準を、もう一体のモレクへ定める。


貪り喰うモノ(グレイプニル)!』


 過去のニブルヘイムで習得した、相手の魔力を枯渇させるまで吸い出す俺独自の多重魔法だ。

 モレクから夥しい量の魔力が引き抜かれる。

 モレクはしばらく抗おうとしていたが、やがて体表から光が抜け落ちた。巨躯の輪郭が震え、骨格が歪んでいく。

 魔力が尽きたのだ。


 こうして、戦場に並び立っていたモレクの巨体は、すべて消えた。

 これでモレクの存在が完全に消滅したのか、それとも本体は別に潜んでいるのか、断定はできない。

 だが、丑人たちの動きは明らかに変質していた。先ほどまでのモレクに対する恐怖は影を潜め、今は表情に喜びさえ感じられる。


「羊の魔王も退いたようじゃな」


 エルマが短く告げた。メリーも形勢の傾きを悟ったのだろう。

 深追いはしない。こちらも消耗している。


 丑人たちとの戦いは、終わった。

 鉱山を取り戻した亥人たちは歓声を上げる。肩を叩き合い、空へ拳を突き上げた。


  ◇ ◇ ◇


 ミーアが深く息を吸い、石になっていた亥人と丑人に視線を向けると、石像だった者たちは次々と元の姿へ戻った。


 俺は拘束されていたグリンとリリィを解放し、エルマの力でメリーの魔夢邪眼を解除する。

 時間はかかったが、やがて、二人は目を開けた。


「オレぁ、やられちまってたのか……。なんてざまだ」


 グリンのぼやけていた目に、すぐに悔しさが宿った。


「戦いには勝ったとはいえ、この体たらくじゃ、素直に喜べねえな」


 隣でリリィも立ち上がる。耳が怒りにぴんと立っている。


「あの羊女、ずっと味方のふりを潜り込んでたのかにゃん。そうなんじゃないかとは最初から思っていたにゃんけど、次に会ったら、必ずはらわたを食い尽くしてやるにゃん」


 その様子を見て、ミーアがほっとしているようだった。


「皆さんが目を覚ましてくれて……本当に良かったです。私もあの眠りの瞳に飲み込まれかけた時、もう二度と目覚められないのではないかと……少しだけ、覚悟しました」


 それでもこの戦いの最大の功労者は、ミーアだ。

 亥人たちをまとめ、仲間全員の力で魔王モレクを止めた。彼女が絶望的だった戦況を変えたのだ。

 亥人たちの視線が自然とミーアに集まっている。敬意と信頼が、はっきりと形になっていた。


 モレクを失った丑人たちは、もう刃を向けてこなかった。

 その表情にあるのは憎悪ではない。

 モレクの命令に従うしかなかった者たちにとって、今は敗北よりも重圧が失われた安堵感のほうが勝っているのかもしれない。

 彼らには、奪っていた亥人の縄張りにも、もはや執着はなかった。俺たちのティアマト古代遺跡への立ち入りにも、抗う気配は見えない。

 そこで俺たちは早速、ティアマト古代遺跡へ向かった。

 内部では守護者(ガーディアン)たちの眼が光っていたが、今の俺たちを止められる相手ではない。

 遺跡の最奥部。

 古代の叡智に触れると、俺はついに新しい古代魔法を獲得した。


 革新魔法(ダエグ)


 法則を覆す力。

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