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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第五章 黄昏編

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亥人の覚悟

 モレクは三体に増えていた。

 並び立つ黒い巨躯。この絶望を、どう崩す?


 だが、おそらくモレクの力も無尽蔵ではない。この力の維持には必ず相応の代償が必要なはずだ。


「もはやまともに受ける相手ではないの」


 倒しても増える。正面から挑むのは悪手だ。

 エルマは空間湾曲の魔法を解くと、転送魔法でモレクたちから距離を取った。


 モレクたちはそれを悟った瞬間、三体同時に向きを変えた。今度は近くの亥人の隊列の方へ。


 俺は即座に転送魔法でモレクの先へと滑り込む。そこには、亥人を指揮するミーアがいる。


「ミーア、気をつけろ、三体のモレクが迫っている。さらに数が増える可能性もある」


「わ、わわ……これは本当に地獄絵図ですね……」


 地響きを上げながら迫り来る巨人を見て、ミーアは慌てて姿勢を正す。


「あいつは仲間を生贄にして自分を増やす。だから、これ以上増えないように、丑人たちを石に変えられないか?」


「……やってみます。石にしてしまったほうが、丑人さんたちからしても安全ですからね」


 言い終えるより早く、俺たちの間へ白い奔流が割り込んだ。液体のようにうねる槍。だがこれは液体ではない――毛の束だ。無数の白い繊維が束となり、槍のように突き出される。


「あらあら、私をお忘れですか? そんな都合のいい話、見逃すわけがありませんわ。」


 魔王メリー。背後で幾筋もの毛束が生き物のように蠢いている。

 ミーアの石化邪眼が煌めいた。

 だが白い毛束が壁のように重なり、視線を受け止める。


「眠らせて差し上げた後、沈黙の巨蹄(サイレントフーフ)さんの生贄になっていただきますから」


 メリーの瞳が怪しく明滅した。


「ならば、お主の相手は儂がつとめよう」


 一歩、エルマが前へ出る。

 彼女を囲うように魔法陣が重なり合い、邪眼に対する幾重もの防御を展開していた。

 エルマの多重魔法を基盤とする空間制御に対し、メリーは多重精霊魔法で応じた。炎と風を重ね合わせた渦を放つ。


 その間にも、モレクは止まらない。三体が同時に踏み込み、その一体が、最前列の丑人へ腕を伸ばした。

 自分が生贄だと悟った瞬間、丑人の顔に恐怖が広がる。


「――石化邪眼!」


 だが、モレクの手が触れる直前、ミーアの視線により、丑人は石に変わっていた。

 モレクが石像を掴み、魔力を流し込んでも反応はない。

 ミーアはそのまま次々に丑人たちを石に変えていった。

 これで、モレクはもう分身を増やせない。


 次の瞬間、三つの視線が同時にミーアを射抜いた。次の獲物を定めた獣の目だ。

 モレクたちは向きを変え、一直線にミーアに迫る。


「蛇は我らの守り神! ミーア嬢のところへは通さぬ!」


 すると、ミーアを囲む亥人たちが動いた。

一体のモレクにつき、五体の亥人が同時に踏み込み、腕に絡みつき、動きを阻む。

 大きさはモレクには及ばぬとはいえ、亥人もまた巨人だ。五体が絡めば、魔王もさすがに一息では振り解けない。

 しかし、モレクの腕が荒々しく動き、亥人の一人を鷲掴みにした。


「生贄……」


 低い唸りとともに、魔力が込められる。次は亥人を自分の器にするつもりか。


「ミーア嬢、やってくだせえ!」


 掴まれたまま、その亥人は叫んだ。恐怖よりも覚悟が勝っている。

 ミーアは即座にうなづいた。


『石化邪眼!』


 冷光が走り、モレクに取りついていた亥人たちが、その姿勢のまま一斉に石へと変わった。

 石化によって質量が大きく増す。絡みついた数体分の石像の重みでモレクは地に膝をつき、動きを封じられた。


 動きの止まったモレクの一体へ、ミーアは視線を据える。


『――石化邪眼!』


 直撃。巨躯の表面が灰色に染まりかける。だが次の瞬間、凄まじい魔力が噴き上がり、石化の効果が弾き飛ばされた。

 やはり魔王そのものには通らない。


 しかし、放出された魔力が限界を超えたのか、骨格が歪み、モレクの輪郭が崩れた。残ったのは、力を失った丑人の肉体だった。

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