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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第五章 黄昏編

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魔王の生贄

 飛翔のような跳躍。


 巨体が消えた、と認識した瞬間には、すでに頭上だった。


 振りかざされた巨大な斧。


「ブモッ!」


 直撃は避けた。だが、斧が大地を断った次の瞬間、地面に叩き込まれた力が爆発的に拡散した。

 岩盤が剥がれ、破片が巻き上がり、衝撃波が貫く。

 そして――唐突に音が消えた。

 遅れてくるはずの、爆音は届かない。


 沈黙場。


 空間が、音を媒介することを拒絶した状態。


 俺に対するあらゆる状態異常は通じない。だが、場を書き換えられれば話は別だ。

 音が奪われた空間では、詠唱も、音声をトリガとした魔法プログラムも機能しない。

 ここでは俺の戦術は、半分を奪われたも同然。

 だが――エルマは違う。

 無詠唱で術式を編む、師匠の得意分野だ。


空間⭐︎湾曲(ディストーション)


 空間を引き延ばすエルマの無詠唱魔法で、モレクとの距離を空ける。


「至れ、我が工房。顕現せよ、魔道具二十番!」


 沈黙場の干渉が落ちるのを見計らい、俺は魔道具を呼び出す。

 これは、対象の位置を連続測定し、接続魔弾へ追尾情報を送信する――ホーミング魔法弾。


 弾幕展開。


 魔弾が軌道を折り曲げ、モレクへ殺到する。

 モレクは機敏に反応して、斧で数発を撃墜。

 だが複数が着弾し、爆発した。


 しかし巨体は止まらない。

 分かっている。これは前座だ。


「オーバーライド オンヒット コール トランスファー 魔道具八番」


 俺は魔法弾の処理の一部を置き換える『オーバーライド』で、衝突時の処理を変更する。

 これで、魔法弾の衝突時に魔道具八番『魔法サーキュラーソー』が出現するようになった。

 魔王向けにタングステンで魔改造した魔法サーキュラーソーは威力抜群。しかも事実上のホーミング。

 次々と呼び出される凶悪な円刃が、モレクの四肢へ食い込んだ。


「ブモォォッ!」


 肉と骨が同時に断たれ、巨体が揺らいだ。


 このまま押し切る。


 だがモレクは退かない。踏みとどまったまま、無造作に近くの丑人の首根を掴み上げた。


「モ、モレク様……や、やめて……」


 丑人の声は最後まで続かない。逃げることもできず、魔力が奔流となって流れ込む。


「生贄……」


 肉が内側から膨張する。骨格が軋みながら伸び、皮膚がはち切れた。膨張した影が地面へ落ちる頃には、そこに立っていたのは――モレクだった。


「あれが、生贄、か……」


 エルマが呟く。


 俺も理解した。

 他者の肉体へ魔力を送り込み、自身の存在で上書きする。それがモレクの能力だとしたら、全ての辻褄が合う。

 モレクが鉱山と遺跡に同時に現れた理由。

 一体を討ってももう一体が現れた理由。

 つまり、器が尽きない限り、奴は終わらない。


 目の前に、同じ魔王が二体。


「あの暴力の塊を、二体同時に相手するのは、儂にはさすがに厳しいのう」


 エルマがいつになく弱音を吐く。

 

 二体のモレクが、同時に動き出した。


 一方をエルマが空間ごと引き延ばし、強制的に間合いを空ける。だが、もう一体には対処できない。

 俺は再び、オーバーライド済みのホーミング魔法弾を解き放つ。

 着弾処理はすべて魔法サーキュラーソーへ転送。命中と同時に切断刃が顕現する。


 惜しまず消費した回転刃が肉と骨を断つ。


 だが――


 モレクはさらに別の丑人を掴んだ。

 怯えきった瞳。逃げ場はない。

 また一体、モレク。そしてまた一体。


 見れば、先ほど斬り刻んだ巨体は、既に元の丑人の体に戻り、力尽きていた。


「仲間まで使い捨てかよ……」


 丑人たちの動きはすっかり鈍っているように見えた。

 自分が次の生贄になるかもしれない。そんな怯えに囚われている。

 モレクは自分たちが仕える魔王でありながら、恐怖の対象でもあるのだ。

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