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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第五章 黄昏編

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公開処刑の罠

 公開処刑――その場で命を奪われなかっただけまだ良かったと、理屈ではそう判断することもできる。

 だが、胸の奥は少しも軽くならない。

 まさか、あのリリィが群衆の視線に曝され、処刑される光景など、俺は想像すらしたくない。


「力を誇示するためでしょう。つまり、亥人の皆さんへの見せし(メー)……」


 メリーは両手を胸の上で組んだ。


「それと同時に、儂らを引き寄せる餌かもしれんな」


 エルマの言う通り、これが罠である可能性は高い。

 丑人たちは、こちらが動くことを前提に準備を整えているはずだ。


「さて、リバティ、どうする?」


 エルマの問い。もちろん答えは一つしかない。


「助ける」


 俺たちが行かなければ、二人は確実に処刑される。

 それなら、罠であろうと、行くしかないだろう。


   ◇ ◇ ◇


 俺たちはメリーの案内で、鉱山近くの処刑場へ向かった。


 そこは岩盤を削り出した広場で、視界は開けていた。こっそり近づこうとしても、隠れる遮蔽物はほとんどない。

 大勢の丑人たちがその場を守っている。

 そしてその中央に――魔王モレク。

 遺跡で対峙したはずの巨体が、静かに立っていた。


 そして磔台には、金属製の十字架に、太い鎖で拘束された二つの影。


 黒と金の髪を風に揺らすリリィ。

 その隣、傷だらけの巨躯グリン。


 処刑の準備は、すでに整っているように見えた。

 二人ともぐったりと力を失い、頭を垂れている。


「メリー、あの二人は大丈夫か?」


「あらあら、おそらく気絶しているだけです。まだ生きていますよ」


 遠目に観察する。確かに呼吸はありそうだ。

 しかしさらによく見ると、リリィは普段の幸せそうな寝顔をしているようにも見える。


「……リリィ、寝ているだけに見えなくもないな」


「あらあら。もし本当に寝ているなら、とんでもない胆力と言えますわね」


 冗談ぽくも聞こえるが、笑える状況ではない。


「さて、どうする? 正面から踏み込むのは自殺行為だ」


「うむ。あれだけ数を並べられてはの。飛んで火に入る虫けらの仲間にはなりたくない」


「あら、それでしたら――このような作戦は、いかがでしょう?」


 メリーが静かに一歩、前へ出た。白い毛並みが風に揺れる。


「まず、わたしが注意を引きましょう。その瞬間にエルマさんが転送魔法を使って磔台の直下へ移動し、十字架を切断。拘束者を回収し、即時再転送というものです」


 メリーの即興の作戦なのだろうか。確かに悪くない。俺たちの能力をよく理解した作戦だ。

 俺の強化済み魔法サーキュラーソーなら、あの金属柱も断てるだろう。


「うむ、二度の転送か。儂なら三秒で終えられる」


 エルマがわずかに目を細め、俺と視線が交差する。

 そこでエルマが俺に小さく耳打ちをした。


「分かった、師匠」


 作戦を正しく共有した俺たちは覚悟を決める。


「では、五秒後に始めますわよ」


 メリーは静かに数え始めた。


 五、四、三、二、一……


 次の瞬間、メリーは丑人たちの前へ躍り出て、大きな声で叫んだ。


「あらあら――私ったら、もう絶体絶(メー)ェェェ!」


 丑人たちの視線が一斉に注がれる。


 その刹那、エルマが転送魔法を発動。

 磔台の直下に、二つの人影が出現した。

 このタイミングなら、誰も気づかないはず……


 ところが、それを見計らったかのように、磔台を中心に、幾何学的な紋様が展開される。

 これは、大勢の術者による強力な結界……これでは、転送経路が遮断され、鳥籠の中に閉じ込められたことになる。

 つまり……俺たちの動きは今回も全て読まれていた。


 間髪入れずモレクが跳躍し、巨大な斧が振り下ろされる。

 回避不能。俺たちの身体は粉砕され、原形を失った。

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