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魔道具エンジニアによる異世界革命〜魔改造済みにつき魔王はご主人様に逆らえません〜  作者: マシナマナブ
第五章 黄昏編

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ヨトゥンヘイム

 新たな古代魔法を求め、俺たちは東の大陸――ヨトゥンヘイムへ足を踏み入れていた。

 アースガルドのある偉大なる大地(ギンヌンガ・ガルド)から海を隔てた、巨人の大地だ。


 かつてこの地を踏んだことのあるエルマの転送魔法を頼りに、ヨトゥンヘイムへ侵入した俺たちはすぐに悟った。

 ここは、想像をはるかに超えた場所だ。


 ずしん!


 頭上から落ちてきたのは、俺の胴体ほどもある松ぼっくりだった。

 地面に叩きつけられた衝撃が、鈍く足元を揺らす。

 見渡せば、樹木のすべてが規格外の大きさだ。

 幹は天にそびえる塔のようで、見上げても全体像が掴めない。


「さすが巨人の大地というだけあって、スケールが違うにゃん。矮小なご主人様には、刺激が強すぎるかもしれんにゃんね」


 リリィがなぜか上から目線だ。まあ、俺が圧倒されているのは確かだが。


「原始の自然って感じだな……恐竜が出てきても不思議はないな」


「竜もおるぞ。ほれ」


 エルマが空を指さした。

 雲の切れ目を縫うように、翼を広げた巨大な影が流れていく。


「風竜と地竜は、この大陸では珍しくはないぞ」


 風竜は、空を制圧する翼竜。絶対的な捕食者だ。

 地竜は、地を踏み鳴らす巨大な爬虫類。こちらはまさに恐竜のイメージに近い。


「わわわ……あの大きさ……食べられたらどうしましょう……私なんて、『大して栄養にもならないおやつ』みたいなものです……」


 ミーアが両手で頭を抱え、ポリポリ食べられているところを想像して震えている。


「確かに竜も厄介じゃが、この厳しい土地を生き抜いておる、亥人(ゐじん)丑人(ちゅうじん)も、侮れん。油断するでないぞ」


 エルマの言葉に、自然と背筋が正された。

 ヨトゥンヘイムに暮らす巨人たち。

 オークとも呼ばれる、猪の頭部を持つ亥人。

 ミノタウロスとも呼ばれる、牛の頭部を持つ丑人。

 その体躯は、この大地の環境に適応した結果なのだろう。


「あらあら、到着早々、手荒い洗礼ですわね。油断への戒(メー)、というところかしら」


 成り行きで同行することになったメリーが、穏やかにまとめた。


 俺たちの最初の目的地は、古代魔法の一つ――創造魔法(ケン)が眠る、『アナンタ古代遺跡』。


「アナンタの遺跡は、亥人どもの縄張りじゃ。できれば、事を荒立てずに済ませたいところじゃな」


 俺たちが遺跡にたどり着くと、エルマの懸念は的中。遺跡は亥人たちによって守られていた。

 厚い毛皮に覆われた巨体を揺らし、槍や斧を軽々と携えて周囲を巡回している。彼らにとってもここは大切な場所なのかもしれない。

 揉め事を避けるため、俺たちはエルマの迷彩魔法に身を包み、その警戒をすり抜けて、静かにアナンタ古代遺跡へ忍び込んだ。


 遺跡内部は薄暗いが、これまで踏破してきた古代遺跡と同じような、薄く光を放つ壁で構成されている。

 内部に亥人の姿はないようだが、守護者(ガーディアン)は、ここにも待ち構えていた。

 俺たちの姿を認めるや否や、侵入者を排除する力が、容赦なく振るわれる。

 斥力と引力の念動魔法、あらゆるものを焼き切る熱線。

 もっとも、今の俺たちにとって、守護者は大きな障害ではない。


 問題は――音だった。


 熱線が炸裂する衝撃音が反響し、静寂を破った。

 案の定、外を守っていた亥人たちが、こちらの動きに気づいたらしい。

 ざわめきと共に、足音が遺跡内へなだれ込んでくる。


「まずいな……」


 だが、立ち止まる選択肢はない。

 俺たちは次々に出現する守護者を手早く蹴散らし、そのまま足を進めた。

 目指すは、『古代の叡智』が眠る、遺跡の最深部。

 やがて、行く手に巨大な扉が姿を現す。

 扉一面に刻まれていたのは、巨大な蛇の彫刻だった。太い胴体が幾重にも折り重なり、扉全体を覆っている。

 おそらくこの奥に、目的のものがある。


 ――その瞬間。


 ずどん、と空気を叩き潰すような衝撃。

 目の前に、巨大な影が落下した。


 見覚えのある逆立つ金色の(たてがみ)

 筋骨隆々の巨体から放たれる圧は、まるで地獄の門番を思わせる。

 薄暗い中でも俺には分かった。


 彼こそ『金色の豪鬼(ゴールデンオーガ)』の異名を持つ、亥人の魔王――グリン・ブルスティだった。

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