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第7章 伝説の幕開け(3)

3

 ――――……み、……が……み、我が君!


「我が君! 敵襲です! お急ぎください!」


 ゼーデは、側近の叫び声で寝床から飛び出した。急いで身支度を整えながら、

何事なにごとか!」

と、側近に状況を伝えるよう命じた。


「やつらが城内に進入しております! 急ぎ非難を!」

側近が答える。


「なんだと? 前線は維持しておったのではなかったか?」


「はい、前線は維持したままで膠着しております。ですが、別動隊が忍び込んだようです!」


「どういうことだ……、まさか、転移系の術でも使えるというのか……」

ゼーデは驚愕した。


 その時だった――。


 寝所の扉が開け放たれ、()()の異形のものが侵入してきた。


 漆黒の甲冑、兜の額面には天高く突き上げるように1本の突起が施してあった。腰には銀色の鞘の長剣、背には表地黒裏地赤の外套を羽織っている。 


「なにものか!」

ゼーデが恫喝どうかつすると、


 そのものが反応した。

「竜族の長、ゼーデ・イル・ヴォイドアークとお見受けする――」


 言葉が通じるのか――? これまでのやつらとは明らかに違う、異質なものを感じる。


「いかにも、われがゼーデ・イル・ヴォイドアークである。名乗れ! 何者ぞ!」

ゼーデは堂々と正面に相対し名乗りを上げる。


「ガべディレイラ帝国軍参謀セ・ルス。――単刀直入に言わせてもらおう、『世界の柱』を渡してもらおう」

そいつがそう言って右手を伸ばした――


 瞬間、ゼーデに向かって右手の先から黒い稲妻が走った――


 とっさに交わしたところに、黒い霧が発生させられている――


――しまった! 誘われた――


 そう思った時には手遅れだった。ゼーデはその霧の中にまともに飛び込んでしまった。霧を浴びたゼーデは急速に力が抜けていくのを感じる。


「こ、これは、呪詛?」

ゼーデが膝を着き体勢を立て直しながらつぶやくと、


「いかにも。安心しろ、まだ殺しはしない。聞きたいことがあるからな――」

そう言ってゼーデに歩み寄ろうとした時だった。


「「グオオオオオオオオオアアアアアァァァ――――!」」

すさまじい雄たけびが黒甲冑の後方から上がると、そこに2匹の竜が出現した――。王城の天井を突き破り、壁を破壊し、床が抜ける!


 ゼーデもバランスを崩し、落下するが、地面の手前で何とか態勢を保ち、背から翼だけを具現化させ、ふわりと浮き上がる。しかし、次の瞬間、体に力が入らず、地面に打ち付けられた。


「ぐあぁっ――!」

さすがの衝撃に体中が痛む。


『ゼーデ様、ここはわれらが食い止めます。早くお逃げください!』

側近の一人から交信レパスが飛んでくる――


 黒甲冑は落下しながら術式を発動させると、体を紫のオーラが包み、落下速度が急激に減速した。


「すまぬ! 必ず! 必ず、戻るからな――」

そう言ってためらわず、術式を発動させた。

 頼む! これだけなんとか持ってくれ! そう願いながら渾身の魔素を絞り出した。


 やがて目の前に次元門ゲートが現れた――。

 ゼーデは転がるようにそこへ飛び込むと、即座に次元門ゲート解除した(とじた)


――――――



 ――――デ、ゼーデ!

 ゼーデは一気に覚醒した(めざめた)。少しうつらうつらとしていたようだった。

 アリアーデが、肩をもって揺すっていたようだ、まだ肩の上にやわらかい手のひらの感触がある。

「大丈夫? ちょっとうなされていたわよ?」

そう言って気づかう姉に、

「ああ、大丈夫だ。それより全員集結したのか?」

と、聞き返す。


「ええ、竜族10名集結したわよ」

そう応えるアリアーデに目線をあわせたゼーデは、

「では、始めるか……」

と、そう言って立ち上がった。


――――――


――『世界の柱』を確保し、人族の世界へ脱出する。


 その作戦会議が始まった。


 作戦内容が、ゼーデから皆に伝えられた。

 『柱』は父竜ゲルガとその同胞が張っている、『竜結界ドラグノートプリズン』の中にある、その正確な場所を知っているのはゼーデゲルガだけだ。

 だが、やつらが近くまで迫っているかもしれない。

 まずは、王城の東の裂け目(クレバス)から、リュシエル率いる竜族部隊8人で王城までの敵を引き付けてくれ、耐えれるだけ耐えた後、離脱しろ。決して命を無駄にはするなよ。

 東からの突入から少し遅れて、反対側の西の裂け目(クレバス)から王城の西にある山岳地に我々本隊が向かう。山岳地までは飛ぶが、そこからは地上を行く。

 地上を走れば10分足らずで目的地に到達する。


 あとは、父竜に会い、『柱』を確保し、離脱する――。


「リュシエル、やつらはこの地表にはほとんどいないようだが、やはり、飛べる個体はいないのか?」 

ゼーデはそう質問した。


「はい、いまだ空を飛べる個体はない模様です。ただ、大型弩おおがたいしゆみが配備されており、空中でもある程度の距離に入ると危険です。弩の矢は2メル以上ありますので、当たり所が悪ければ、致命傷になり地上に落とされます。そうなれば、数で勝るやつらにあらがうことはできません。いずれ、倒されるでしょう」

リュシエルは忌々しそうにそう言った。これまでも仲間がそうやって一人また一人と落とされるのを見てきたのだろう。


「ならば、『柱』確保後、ここで落ち合おう。そしてここから脱出する」

ゼーデがそう締めくくったとき、リュシエルが何かを口にしようとしたが、ゼーデはそれを遮って、

「大丈夫だ、心配するな。『柱』確保後、人族の者たちには先に次元門ゲートで脱出してもらう。何よりも大事なのは『柱』を向こうの世界へ移送することだからな。そのあと、私がここへ戻る。お前たちと合流して、我々も向こうの世界へ脱出しよう。向こうの世界への侵攻も程なく開始されるであろう。その時に我々竜族も人族の力にならねばならんからな」

そう言って、その両目に無念の色を残しながら、仲間たちの方へ微笑んで見せた。

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