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教会滅亡後世界  作者: 木島別弥
贋作遺物篇
21/56

盗賊の襲撃

 ベイケたち四人は、大富豪グラッドとその使用人と一緒に『ギルベキスタの盾』をグラッドの屋敷まで運ぶことになった。

「これが世界で最も価値のある加工物だよ。あの値段で落札できたのは、私の大儲けだ」

 大富豪グラッドがいう。

 いったいこの大富豪はどのくらいの資産を持っているんだ。四人にはとても不思議だった。世界は平等ではないのか。この大富豪は、いったいこの盾を何に使うつもりなのか。飾るのか。それとも、この大富豪も戦闘に出ることがあり、盾を使うのだろうか。

 護衛なので、ベイケとミシアが大富豪の前を歩き、ノアミーとウォブルが大富豪の後ろを歩いた。盾は大富豪自身が持って運んでいる。


 競売の落札品の護衛だ。競売は大金が動くので、そこを狙って来る盗賊もいることだろう。確かに、護衛を付けたいのはわかる。しかし、この大富豪はベイケたち四人をそこまで信頼しているのだろうか。ベイケたちは誰もこの盾を盗んで逃げようとは考えていないが、だからといって、なぜベイケたちに護衛を任せたのだろうか。

 そんなことを考えていると、大きな足音で近付いてくるものがいる。四人とグラッドたちが後ろを振り向くと、その足音は盗賊鬼だった。盗賊鬼が十人で襲撃してきた。狙いは大富豪グラッドの資産か、落札した聖遺物か。

 戦うことになるのか。命のやり取りだ。

 ウォブルが重力操作で五体の盗賊妖怪を宙に浮かせて、歩けなくさせる。残り五体の盗賊鬼が物凄い勢いで迫ってくる。

 ベイケがグラッドより前に出て、契約魔術で毒魔術を使う。一撃では、盗賊鬼は倒れなかった。しぶとい敵のようだ。ミシアが杖の斬撃(物理魔術)でベイケと同じ盗賊鬼を斬り捨て、倒した。

 グラッドと使用人は戦う様子はない。この二人は魔術が使えないのかもしれない。

 盗賊鬼が毒の息を吐く。それがベイケの魔力に反応して、ベイケがその毒の息の動きにかぶせるように優位に立ち、毒魔術を発動する。

 ウォブルの体力が切れて、重力操作が解かれる。

 盗賊鬼の剣でウォブルが浅く斬られる。ノアミーがすぐに回復する。

 ミシアは盗賊鬼の剣術を見極めて、振り下ろされる剣を何度もかわして隙を突き、杖の斬撃(物理魔術)で斬り倒す。

 バリバリバリとノアミーが雷撃で集団攻撃をする。

 ベイケは近付いてきた盗賊鬼を順番に毒魔術で倒していく。

 盗賊鬼の剣がベイケを斬り裂こうとしたが、ベイケが攻撃を先取りして毒魔術で倒す。

 ウォブルは重力操作で盗賊鬼の一体をねじまげる。

 ミシアがまた新しい技を見せた。杖の斬撃(物理魔術)の乱れ斬りだ。一本の杖から複数の斬撃が発生して、次々と盗賊鬼を切り倒していく。

 しかし、不意を突かれ、ミシアが盗賊鬼の一体に斬りつけられる。ミシアの体に深い斬撃が入る。しまったとミシアは不覚を感じる。

「やばあい、今、わたし、回復できないよ」

 ノアミーがいう。

 まさか、わたし、ここで死ぬのか。ミシアは衝撃を感じる。

「そんな時におれの回復魔術だ」

 ベイケがミシアを毒栄養で回復する。ベイケが毒魔術を応用して編み出した回復魔術だ。毒の作用で人の体の怪我を治す。

 ベイケの回復魔術だって。これがそれかとミシアは考える。確かに、痛みが退き、傷が治っている。

「助かる。きみはいろんなことができるな」

 ミシアはひとことそう感謝すると、再び、盗賊鬼に斬りかかる。

 戦いはつづいた。

 そして、グラッドや使用人を守りながら、盗賊鬼十体をすべて倒すことができた。


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