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ちみっこ魔王は呵呵とは笑わない。  作者: おおまか良好
■■2章-ただ守りたいものを、守れるように-■■
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2章-小さき者は狂王を纏いて、嘲笑を浮かべる

執筆再開から、早くも一ヶ月。15件もブクマ増えました。

本当にありがとうございます。

今後も一話一話、極力楽しんで頂ける様に、

文字数もなんとか5000前後に留めてお送りしたいと思ってますっ!


と言いつつも、7500文字越えてしまいました(ニッコリ

「だ、大丈夫?ルイ、吐くのなら出しちゃいなさいっ」


「はあ…はあ…地面がこんなに安心出来るって、初めて知りました。

 サミュル姉様、大丈夫ですよ。ちょっと、そっとして頂けたら落ち着きますから」


レオンの肩車から降り、自身の両膝に手を置き荒い呼吸で涙を浮かべるルイの姿に、

普段、冷静沈着なサミュルも、動揺の色を隠すことなく、

慌ただしくルイの背中を摩ってみたり、叩いたりを繰り返していた。


別に、ルイも吐きたい訳ではない。ただ、足が震えて心臓が激しく暴れているだけだ。


「着地の衝撃なんか無かっただろう。途中で酔ったか?」


ルイの不調が、恐怖体験からだと言うことに、全く気付いていないレオンは、

やや的外れな言葉を口にし、困惑の表情を浮かべる。


「怖かったんですよ……それも、物凄く」


弱々しい声音で、怨み言を口にするが、サミュルが騒がしくてレオンには届かない。


実際レオンの言葉に嘘はない。


隕石を思わせる恐ろしい速度で地上へ飛来したものの、

着地の衝撃も反動もなく、地面へ着弾する手前で、ぴたりと静止して降り立った。


だが、ルイはそのような着地になるとは、微塵も思っていなかった。


着弾後、吹き飛ばされないよう、死なぬよう、必死に恐怖と闘い、口を塞ぎ続けた。


結果、無事に地上に降り立った途端、安堵で気が緩んだのと同時に、

それまで堰き止められていた恐怖が、濁流となってルイを飲み込み、

顔色を青く染め上げ、足を震えさせ、心臓を暴れさせていた。


周囲で様子を見ていた名無しの一人が、手渡してくれた水を飲み込み、

漸く、ルイは恐怖から脱却する事が出来た。


冷静になってすぐに、狼狽するサミュルを宥めて落ち着かせて、

希薄な気配の位置を把握、総勢で20人。


姿こそ見せないが周囲を取り囲み、こちらの様子を窺っているのが分かった。


一人一人に視線を向け、手信号で情けないところを見せた事を謝罪した。

落ち着いた今だから分かるが、全員、里帰りの際にダンサイと共にいた精鋭たちだ。


名無しが今回の件に、協力要請を快諾したとだけリグナットに城壁で聞かされたが、

動員された面々を考えると、相当本腰を入れて望んでくれているのが分かる。


ルイは、それが心から嬉しく、感謝の気持ちで満たされた。


程なくして、ルイの調子が戻った事に安堵したレオンは、

ハンニバルに戻り、エドガーと合流して後処理をして吉報を待つと言って去った。


「ルイ、お前に託す。2人は任せたぞ」


去り際に、そう言い残し、無言で突き出されたレオンの拳にルイも拳をあわせた。


「リグナット殿に頼んだ言伝は、聞いてもらえましたね?」


「はい、それで僕からもサミュル姉様たちに、聞いて頂きたい事があります」


ルイは、晩餐会での出来事を時系列に沿って伝えた。


報告が、子女たちも共に誘拐された件に及び、また、それはパブタスへの貢物だと、

ニサスカが口にしたと伝えた時は、サミュルだけでなく、

静かに聞き耳を立てていた周囲の家族からも殺気が漏れだした。


その後、ハンニバルを出立する前に目撃した冒険者街の小火らしき火の手。

領城より感知したリズィクルの魔法と思われる閃光。

小火については断言出来ないが、

陽動部隊は、すでに鎮圧されたのではないかと持論を口にした。


また、北の大門で開門を待つ一団の構成と規模を伝える際に、

ルイと別れたリグナットが、そちらを追跡しているのでいずれ、

こちらに到着するだろうと伝えた。


「……なるほど、概ね理解しました。では、目的を明確にする事から始めましょう。

 ルイは、誘拐された子女達も救いおうと考えているとの理解でいいですか?」


救う気かと問うのではなく、救うのだろうと前提で、そう問うサミュル。

ルイは迷う事なく、それに頷いてみせた。


「ゼル兄様、リーヌ姉様に危険が及ばない。その前提が、必須だと理解しています。

 その上で、僕やゼル兄様たちと然程、年の変わらない彼女たちが、

 犠牲になって良いとも、僕もゼル兄様もリーヌ姉様も思いません。

 むしろ…2人は、救えと僕に命じてくれるはずです」


「あの2人ならば、ルイが無茶をしない事を、前提命じると思いますが。

 その事を、きちんと理解しているのですね?」


「理解しているつもりです。兄弟子からも、同じように釘を刺されましたから。

 …そのためにも、サミュル姉様も含め、ここにいる家族のみんなに、

 ひとつ、僕の提案に協力しては頂けないでしょうか」


ルイは、そう切り出して淡々と作戦概要を告げて行く。


現状ルイが把握出来ている情報を、全て開示した上で、

容易に想定でき、かつ高い確率で、相手が取るであろう行動、そして対応。

加えて、確率が低かろうが起こり得る危険。


それら全てに対応する事が出来れば、どんな事態であっても、

人質の安全は保障され、問題なく帰路につける、

自身であれば、それらを成す事が可能だと主張した。


だが、最善を測るためには、ルイひとりの力では不安も残る。

ルイは万全を期すためには、名無しの構成員たちの助力が必要だと訴えた。


静かに、ルイの提案を脳内で検証するサミュル。

そんな彼女を除き、他の名無しの構成員たちは、難色を示す。


提案自体には、彼らも不満はない。

充分に理解が出来た上で、納得も出来る物だった。


なにより、確実に相手の裏をかけると確信すら抱いた。


だが、起こり得るかも知れないと、ルイが危惧した幾つか問題。


それらが起きると、ルイの役割が背負う危険度が数段階増す。

なにも、彼らはルイの能力を疑っている訳ではない。


強いか弱いかではなく、家族として末の子に危険な役割を背負わせたくないのだ。


そんな彼らの心情は、当然ルイにもきちんと伝わっている。

家族から向けられる優しく暖かな愛情に、心が震えるほどの感動すら覚えるほどだ。


胸の内に彼らへの感謝の言葉を押し留め、ルイは底冷えする様な圧力を放った。


愉悦の表情を浮かべ、作り物めいた妖しい笑みを湛えた。


「はははっ……可笑しいなあ。誰よりも戦える者が、危険な役目を負うだけ。

 僕の提案したのは、それだけのだと思うんだ。それなのに、どうしてだろうね?」


ルイの変貌ぶりに、難色を示していた者だけでなく、

サミュルも驚愕を浮かべ、ルイの姿を凝視する。


「あれ?もしかして皆さんは、無関係な上、巻き込まれ誘拐され今も怯える人たちや、

 誰かが、犠牲になるのならばと、その身を差し出す事を良しとした人たちに、

 危険な役目を負わせろとでも本気で思っていたりしないよね?」


流れる様に、ルイの笑みに歪んだ唇から流れ出る言葉の数々。

それらに含まれた嘲笑、冷笑、そして憤怒が、聞く者の胸を掻き毟る。


「おやおや、失礼な事言っちゃったかな。…良く考えてみてよ?

 だってね、僕と後者の彼ら、どちらかは危険な目にあうんだよ?

 むしろ、後者の皆さまは絶賛、危機の真っ最中。僕はそれを救うためにここにいる。

 僕の安全なんて瑣末な問題で、手を貸す貸さないを論じてる場合なのかな?

 是非、君たちがどう建設的な事を考えて、答えを出し渋っているか聞かせてよ。

 くだらない感情的な意見はいらないよ? これ以上、失望したくないからね」


ルイはそう告げ終わると、ひとりの目を見つめ笑いかけ、

また別のひとりの目を見つめて笑みを向ける。


凶悪な荒れ狂う様な圧力と、路傍の石にでも向けているかのような無機質な瞳。


サミュルは、そんなルイの姿に背筋が震わせた。

決してそれは恐怖したなどではない、沸き立つ歓喜に震えている。



「……()()()()()()()()()()()()()()



サミュルは、自分にしか届かぬ声で英雄の名を口にする。

彼女は、そこに在るルイの姿に、そこにいない英雄を重ね見ていた。


「名無しは、ルイからの協力要請に応えましょう」


最後にサミュルに視線を向けた、ルイへ笑みで返し提案を受け入れた。


「……四半数は、ただちに、ハンニバルへ増員要請。

 晩餐会が行われていた館で、依然戦闘中と思われる四柱(朱華)

 冒険者ギルドへ向かった六柱(ドリュン)は、任務継続。

 領城へ向かった五柱(ラーミエ)八柱(オーリ)の任務を解除、こちら召集。

 六柱と共に在る七柱(マケニティ)には、領城へ向かい五柱たちの任務を引き継がせなさい」


サミュルの指揮に従いハンニバルへ向け、五名の構成員の気配が動く。


残った者の中には、今だ納得がいかない者もいる。


「ルイの提案に不備はないと思いますが……。実力でも劣り、言葉でも黙らされた上で、

 まだ不満があると言うのでしたら、参加しなくて構いません。作戦遂行の邪魔です」


それは、誰に対して言った訳でもない。

ただ言い放たれたサミュルの言葉は、全員の胸に突き刺さる。


「イサルグ、ルイの案内、野営地の説明を。2人支援に連れて行きなさい。

 他の者は、3人編成で1班を組んで、ルイの立案に最適な経路を見つけ確保。

 ルイは、師匠の方々から魔物との接触事態禁じられています。

 特に、その点は考慮して適宜行動して下さい。

 ハンニバルからの増員は、一刻半程で到着するでしょう。以上、散開」


ルイの案内を言い渡されたイサルグ、他2名を残し、全ての気配が遠ざかる。


サミュルが指揮している間も、張り付けた偽りの笑顔でいたルイも漸く弛緩した。


「サミュル姉様、無理を聞いてもらって、ありがとう」


「無理な提案だったら、幾らルイの頼みであっても受けていませんよ。

 マサル様を彷彿させるような立案に、異論を唱えさせない素晴らしい舌端。

 此度の協力は、その手で勝ち得た事です。感謝の言葉などいりません」


サミュルはルイの頭を優しく撫でつつ、我がことのように誇らしそうに笑う。

長らく表情を固定していたため、強張った筋肉を揉みほぐしながら、

ルイは自然な笑みを返し、ありがとうと再度、感謝の言葉を口にした。


「ルイ、こっちだ。ついて来い、案内する」


サミュルからイサルグと呼ばれた黒装束の男が姿を現し、ルイに声をかけ先導する。


「もうっ、ちょっと待ってよ、()()()っ。

 サミュル姉様、僕行きますねっ!宜しくお願いします」


「ええ、こちらのことは任せなさい。ご武運を」


ルイは、サミュルに手を振って、イサルグが向かった方へと駆け出す。

それに合わせ、二つの希薄な気配が、ルイの横を並走した


「……ユネちゃんとコイハかな?」


感じる気配から、ルイは並走する2人にそう問いかける。


「おー、さっすがルイっ。気配だけでボクたちを識別してるの?」


「仕事装束着てんのに、あたいだって、区別ついちゃうんだからすげーすげー」


ルイに敬称で呼ばれたユネスとコイハは、顔の覆いをはずし顔を見せた。

そんな和やかな3人に、足を止め振り返ったイサルグは険しい表情を浮かべる。


「ばか野郎、任務中だぞ。だべってないで、さっさと来い。……ったく」


昔から手厳しい発言の多かったイサルグの叱責が懐かしくも心地良くて、

ルイは思わず笑みを漏らす。


ああ、始まったと言わんばかりに、苦笑するユネスとコイハと共に、

イサルグの背を追うようにルイは地を蹴った。


足場の定まらない雑木林をしばらく行くと、炎が断続的にゆらめいているのが見える。

その光源こそが野営地なのだろう、先行して駆けていたイサルグの足が止まった。


「この周囲には、魔物避けが張ってある。野営地の監視にも適しているだけあって、

 頻繁に巡回、魔物の間引きも行われているため、その心配もない。

 …まあ、魔物たちにとっては、目の前に御馳走(人の群れ)がぶら下がってる状態だ。

 絶対とは言えないがな…ルイ、登るぞ」


10メートルは無い程度の木の幹を蹴り、イサルグは駆け昇って行く。

ルイもその後を追い、軽々と駆けあがって行った。


幾つもの篝火が煌々と焚かれ、等間隔で打たれた丸太の防壁。

その内側には、数えるのも嫌になるほどの天幕が見える。


篝火に照らされ蠢く者たち、それらを目で追うも、

事前に想定していた数を優に超えている。


「ちなみにだが、両殿下。それから貴族の子供だったか?

 それらしき馬車を引き連れた一団が、野営地に入ったって報せは、まだないぞ」


想定していた兵数の2倍では済まない事を、視認と気配察知で確認しつつも、

シュナイゼルとセリーヌ達が、運び込まれる前に、野営地の全容を把握しておきたい。


そんな想いを胸に、真剣な表情で野営地へ視線を向けるルイに、

イサルグが、少し諫めるような視線をルイに送りながら口を開く。


「……なあ、まじでこいつら相手に本気で、やる気か?」


「やるよ?相手が誰だとか、数が何人いるからやるって決めた訳じゃないから」


イサルグの言葉に、ルイは素気無くそう答えつつ目線を忙しく動かして行く。


巡回パターンから、重要度が高い天幕にあらかた目星をつけ、

自身が進入した後、どういう経路を辿るか、ぶつぶつと口の中で呟き組み立てて行く。


「何人か連れてきゃいいだろ。お前の口から頼めば……」


「僕は、ちゃんと頼んだよ」


イサルグの言葉を遮り、ルイは野営地から視線をはずしイサルグを見る。


「救出した人たちの保護。それ以上は、頼んでないし、望んでない。

 もし仮に、救出に多数の者が関与しても、その事が露呈すれば意味がないんだ。

 あくまでも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そうじゃないといけない、イサ兄も分かってるはずでしょ?」


シュナイゼルとセリーヌ、そしてまだ見ぬ、2人の兄ジュリアス。

この3人が、貴族たちの権力抗争に巻き込まれ望まぬ争いを強いられる未来。


マサルは、そんな事はあってはならないとルイに告げた。

そして、ルイが事を成せば、そんな未来を3人から遠ざける事になる。


そして、遠くない将来マサルは、不安の種は全て潰えるとルイに誓った。


「…ちっ。ああーっ、糞っ!」


真っ直ぐに見つめるルイの視線と、自身の甘さから目を逸らすように、

イサルグは乱暴に髪を掻いた。


「だっさいなぁ、いつまでぐじぐじ言ってるんだよ。三柱(サミュル)が、要請を受けたんだよ?

 下っ端のボクらが、いまさら、ここでルイに何言っても意味ないじゃん」


「だいたい、あたいらは、揃いも揃ってルイに吹っ飛ばされてんだ。

 兄貴風(あにきかぜ)をフカしたいんなら、ルイよか強くなってからやれよ。

 あたいらは、あたいらの仕事を完璧にこなす事に、集中だ」


いつまでも煮え切らないイサルグの態度に、我慢ならなかったのか、

2人のやり取りに口を挟まず見守っていたユネス、コイハが、胡乱げな目で見やる。


「分かった、分かったから、わーわー言うな。…はぁ、三柱が決めた事には従う。

 仕事は完璧にこなしてやる。だが、納得はしてねー。だから、()()()()()()()


不器用で遠まわしな激励だったが、ルイは笑うことなく強く頷く。


「素直じゃないねー、やだやだ。……それでルイ、勝算は本当にあるのかい?

 あの数は、あんたも想定外だったんだろ?」


顎を軽くあげ、野営地を指しコイハが問う。

ルイも表情を引き締め、野営地に目を向け口を開いた。


「さっき報告した中で、館に残った敵の中にいた例の2人組。

 あんなのが、複数いると手に負えないけど……、脅威になりそうな気配は感じない」


「油断は駄目だよ?ボクらみたいに、

 気配操作にこなれてる連中が、隠蔽してるかもじゃん?」


「んー、頭領(朱華)先輩(ルーファス)級の化け物が、あの中で隠れてるって言うなら自信ない」


「……んな化け物が、そうそういてたまるかよ」


油断を指摘したユネスも、呆れたように口にしたイサルグの言葉に、何度も頷いた。


「そもそも、あそこはあいつらにとっちゃ自分の庭だろ?

 自分の庭で隠蔽なんざする奴らなんて、名無し(うちら)くらいじゃねーの?」


「僕もコイハと同じ意見。兄弟子が前に遭遇した相手は、

 能力で隠蔽してたらしいけど、隠蔽も察知も話にならなかったって聞いてるし、

 僕が、館で対峙した仮面2人組を含めても、総じて()()()はお粗末な印象だよ」


「なるほど…ボクたち基準で警戒する必要はないと…」


「うん、だから強敵があそこにいないって言ったのは油断じゃなくて確信。

 野営地に、たとえ1,000いるぞって言われても、問題ないよ。

 糞師匠(エドガー)の相手に訓練するより余程、楽だよ。……腹も立たないし、苛々しないし」


「あんた……殺気漏れてるよ」


「普段、エドガー様に何されてんの?」


突然、剣呑な気配を纏い、瞳から光を失ったルイに、ユネスとコイハは困惑する。


「ははっ、英雄エドガー様を悪し様に言うやつなんざ、お前くらいなもんだぜ」


不穏な気配を漂わせるルイの背中を、お構いなしにばしばし叩き、イサルグは笑う。


「まあ、1,000人相手にしなきゃいけない事にはなんねーよ。

 現在駐留してるのは、およそお前の想定の3倍。約300ってところだ。

 そこに、両殿下と貴族の子供たちを輸送してくる連中が加わるんだが…。

 どれだけいたか分かるか?」


イサルグの問いかけに、ルイは子女たちを人質にとった者たちを思い浮かべ、

おおよそ50程度だったはずだと答えた。


「後詰の一団とやらは忘れろ。リグナット殿に、俺が合流して先に潰す」


「おいイサルグ、さすがにそれは独断専行だぞ?」


「んだよ、別にコイハについて来いとは言ってねーだろ」


イサルグは、コイハに素気無くそう言って

何か言いたげに口を開きかけたルイの頭に手を置いて、それを制す。


「心配しなくても、お前からの依頼は、完璧にこなしてやる。

 後詰の件は、俺が勝手に、俺が出来ると思うから動く。お前に文句は言わせねーぞ」


「あははっ、うん。良いよ、それっ! ボクも乗ったっ」


「まあ、当然あたいも行くけどね。始末書は、イサルグよろしく」


「あ、ボクの分も、よろしくー」


「おいっ、ふざけんなっ!」


イサルグの抗議に、全く耳を傾けないユネスとコイハ。


3人の様子に、笑みを浮かべながら、ありがとうと感謝の言葉を口にしたルイ。


コイハは笑顔でルイの頭をこねくり回し、ユネスは背後から抱きしめ応える。

イサルグだけは、満更ではない表情を浮かべるもそっぽ向いて見せた。



「じゃあ、ゼル兄様たちが来る前に、下調べでもしておくことにします」



ルイはそう言って、気配を霧散させ背景に溶け込み姿を消した。


「うわぁ、ボク自信なくしちゃうよ」


「全く見事なもんだ。一瞬で察知も出来なくなっちまったね」


「ただ嘆いてて、ああも至られるなら幾らでも付き合ってやるけどな。

 俺らの可愛い末っ子に、啖呵切ったんだ。さっさとリグナット殿と合流して、

 万全な状態で、あいつからの任務をこなすぞ」


弛緩した空気を消し去り、イサルグが目を細めて先を見据える。

ユネスも、コイハも同様に、ルイに見せていた笑みも喜色を霧散させた。



名無しの長い歴史の中でも、若くして柱に名を連ねる、稀代の天才と謳われるオーリ。


そんな彼女と、同時期に成人した彼ら3人。

共に訓練に明け暮れ、成長した彼らもまた、()()()()と呼ばれている。


呆然と見守るリグナットの前で、後詰の一団が、人知れず壊滅するに至るまで、

この時から、一刻ほどの時すら必要としなかった。

マサル「僕の出番がないね

ルーファス「俺っちもないっすね


ルイ「三章は更に減るらしいですよ」


マサル/ルーファス「「……え」」

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