決行
監視人は俺の体に巻き付けたロープを手に持って歩く。
言うことをきかなければロープを容赦なく引っ張ることで、苦痛を与えて無理やり従わす。
古典的な方法だけど、ナカナカ上手いやり方だ。
それでも、このやり方は完璧なわけではない。
俺は今までの経験上、このやり方の弱点を知っている。
そして、この四日間の散歩でも奴らが自分たちの弱点に気がついていないことを知る。
散歩中、俺は従順な奴隷を演じて監視人に最も負担が掛からないようにした。
監視人もスッカリ安心しきって、時折俺に話し掛けてきたり、鼻歌を歌ったりしている。
やがて散歩のコースが丘にさしかかる。
丘の下に注意を払うと、松の影からユキの姿が見えて来た。
俺は行動に出る。
かなり恥ずかしい行為だが監視人の前で、何の前振りもなく失禁してみせた。
それも大きい方を。
綺麗で清潔な生活に慣れている奴らは、こういう時にも衛生面に気を使う。
俺のロープを握っていた監視人が、俺の失禁物を処理しようとする。
片手が塞がっているというのに、奴らは自分たちのテリトリーが汚されるのを嫌う。
案の定、ロープを握っていた手の力が緩くなる。
“今だ!”
急に全力でダッシュを決めると、ロープは呆気ない程簡単に、監視人の手から離れた。




