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深夜の溜り場、バー「Q:ミラクル・クワトロ」  作者: kyon²


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疲れ切った男たちが、深夜のバー『Q』の扉を叩く。そういう男たちを、バーの従業員4人がチームワークで再起させる物語。


「あんた、まだそんなところで自分に言い訳してんの?人生八転び十六起き。泥の中にいても、魂まで泥に染まる必要はないやろ。…立ち上がる準備、できてるんか?」


「…負けたからって何?それ、ただ自分が傷つかないように選んだ場所でしょ。…ダサいね。」


巨大な中華鍋を振り回し、「あら!あんた、そんな顔してたら味が落ちるわよ!とりあえずコレ食べなさい、ブチ込んだら全部解決!」と、謎の食材を炒め合わせている。


 愛すべきキャラクターで、来訪者の悩みをバッタバッタと解決していく、『ミラクル・クワトロ』の活躍が、今、始まります。



 路地裏のバー『Qミラクル・クワトロ』。

 看板も出さないその扉を叩く者は、誰もが等しく疲れ切っている。



『Q』の従業員紹介



山野やまの 美鈴みれい : 通称、ボルテージ


 山野美鈴が巨大な中華鍋を振り回し、「あら!あんた、そんな顔してたら味が落ちるわよ!とりあえずコレ食べなさい、ブチ込んだら全部解決!」と、謎の食材を炒め合わせている。


嗚呼ああ 野原のはら : 通称、ノイズ

 ド直球発言。タメ口、口調。見た目は、アイドル女子。 


部屋の隅でゲームの画面を睨んでいた嗚呼野原が、振り返りもせずにボソリと呟く。

「…ふん。負けたからって何? それ、ただ自分が傷つかないように選んだ場所でしょ。…ダサいね。」



杉与 ゴージャス : 通称、シンクロ

 太った巨体。女装家として、日本中に知らぬ者はいない程の知名度を誇る。

 言葉使いが丁寧で、ごく常識的なバランス感覚に優れた言動をする。たまに、言葉の間に、「てめぇ、コノヤロ」とか「あん! 知らねぇよ」とか、男言葉が混じる。

 


三日月みかづき あん 通称、レジリエンス

 極貧生活から這い上がったスーパー・レディ。高度なリテラシーを持ちながら、「人生、何度転んでも、転んだ回数の倍以上、起き上がるんや」というスーパー・ポジティブシンキングが常套句。




 路地裏のバー『Q』の店内。フロアの奥、紫煙とスパイスの香りが漂う個室。カメラの赤ランプが灯る中、『ミラクル・クワトロ』の面々はVチューバーの皮を被りつつ、熱い麻雀卓を囲んでいた。


「あ、これもう、ブロッコリーをですね、茹でるんじゃなくて、麻雀牌ごと油でコーティングしちゃえばいいのよ! ねえ、どう思う!?」


 ボルテージが騒々しく牌を叩きつける。彼女の放ったのは、あろうことかリーチの宣言牌。


「……それ、物理的に無理だし。ボルテージ、お前の料理理論、たまにというか、いっつも異常だよ。そもそもそのリーチ、裏目ってるし。死にに行くようなもんだよ」


 ノイズがアンニュイな表情で吐き捨てる。しかしその指先は、淀みなくピンフのテンパイを維持していた。彼女のVキャラは、目元が常に虚ろな猫系少女だ。


「ちょっとアンタたち! 配信中よ!? 画面の向こうの視聴者が引いてるじゃないのよ!」


 シンクロが、豪華絢爛な着物を纏ったキャラクター越しに、卓を揺らさんばかりの迫力で吠える。

「ボルテージ! あんた、さっきから料理の話ばっかり! 麻雀しに来てんのか、クッキングチャンネルやりに来てんのかハッキリしなさいよ! ほら、この牌はこう切るのよ。あーもう、見ててイライラするわ! テメェ、さっさとツモりやがれ!」


「ハッハッハ! シンクロ、落ち着いて。人生にはツモれない時もある。でも、その待ち牌の中にこそ、新しい世界が広がっているのよ。白はね、何色にも染まることができる『希望の色』。だから私は、この白を大切にする」


 レジリエンスが、眩いほどにポジティブな光を放つエフェクトを背負いながら微笑む。

「今の牌もね、捨てるんじゃないの。未来への投資として場に放つのよ。人生ポジティブ! この白を切った後のツモこそ、私が私であるための必然!」


「……ポジティブすぎて、逆に疲れる。レジリエンス、お前さっきから希望の色だの何だの言ってるけど、一番最初にドラの白切って、他の全員に後押しさせてるの、計算高いにも程があるよ」


 ノイズが冷ややかに指摘すると、ボルテージが「えっ、白って食べるの?」と頓珍漢な反応を見せ、シンクロが「食べねぇよバカ!」と一喝する。


「ああもう! 喧しいわね! 牌を捨てるんじゃない、自分を捨てるのよ! 今日という日は二度と来ないんだから、ツモった牌は愛してあげるの!」


 レジリエンスが牌を勢いよく叩きつけ、リーチを宣言する。その瞬間、ボルテージの料理のような乱雑な捨て牌が、奇跡的なカンドラを呼び寄せる。


「あ、ロン! リーチ・タンヤオ・ドラ・ドラ・満貫! 料理の隠し味と一緒で、この牌の組み合わせ、最高に美味しいでしょ!?」


「……は? なんでボルテージが勝つわけ。理不尽にも程がある」


「ハァ……。あんたのその適当さが、たまに奇跡を呼ぶのが一番ムカつくのよ! このクソッタレが!」


 シンクロの罵声と、ボルテージの陽気な笑い声がバーの個室に響き渡る。今日もミラクル・クワトロの夜は、混沌の中で極めて平和に更けていく。


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