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〝金銀花〟は止まらない  作者: 白神 怜司
第2章 魔力は世界を変える

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【配信】お披露目 Ⅰ




「やぽやぽー。おひさしー」


『きちゃ!』

『おひさー!』

『超待ってた!』

『めっちゃ久しぶり!』

『顔アップ助かる』


「いやー、〝天秤トラップ〟突破してからちょい色々やること多くてね。ほら、ウチら学生じゃん? だからさー……や、別にカンケーないけど」


『草』

『あれ? カナっち髪染めた?』

『学校行事とか……って関係ないんかーいw』

『相変わらずのゆるゆる感w』



 ARコンタクトレンズを通してコメントを確認しつつ、奏星は密かに驚いていた。

 元々明るい髪色をしていたこともあり、髪の毛の色がどうのというツッコミが入ってくるとは思っていなかったのだ。


 レベルアップによる因子効果が現れ始めているのは確かだ。

 元々は奏星の髪はかなり明るい金髪で、毛先をピンク系に染めていたのだが、今ではインナーカラーがオレンジがかった明るい金色に変わってきている。


 レベルアップから一日経つ毎に、髪の色は徐々に、まるで力が浸透するかのようにゆっくりと色が変わっていっている。

 先駆者である莉緒菜曰く、「レベルアップからだいたい一ヶ月半程度の髪の色が完全に変わる」とのこと。

 莉緒菜が言う通り、あまり変化の現れていなかった莉緒菜との合流時の写真と、今の自分の写真を比べれば、明らかに色が変わっている。


 そして、そんな奏星の相棒はと言えば。



「あ、ども……。ルカ、です」


《イメチェン!?》

《ほわー、綺麗な銀……?》

《あー、だからさっきから二人の顔だけ映してんのかw》

《珍しい色してる。ちょっと青っぽい……?》



 ――まあるかちーはそうなるわな。

 配信越しに騒ぎ始めた視聴者のコメントたちはともかく、奏星はつい数日前を思い出す。


 莉緒菜と会ったあの日は、流霞の髪はまだ「確かにちゃんと見てみるとちょっと色素が抜けた感じ?」ぐらいのものだったのだ。


 しかし、それからだいたい3日ほど経った頃。

 奏星も自身の髪色がオレンジがかってきたことに気が付いていたが、金色からオレンジがかった金色ならば、その差はあまり大きくはなかった。

 それに比べて、黒髪の流霞の髪が見て分かるぐらいの灰色に変色し始めたのはかなり見た目的に大きな変化であった。


 なお、この日の朝、奏星もいる雅らを含めたグループチャットに送られてきた、髪を映した写真と共に送られてきた流霞からのチャットは、「若白髪の一揆が始まった……!」である。寝ぼけて因子の影響を忘れかけていたらしい。


 朝っぱらから全員のツボに入り、しばし大草原が生まれた。

 若白髪と一緒にするな、というツッコミがあちこちから入ったのは必然と言える。


 ともあれ、髪の色が一気に変わるのではなく、徐々に変わっていくという性質上、配信をするならば髪色がある程度変わってからの方がいいよ、という先駆者こと莉緒菜の助言。

 それに加えてテスト期間であったこともあって、配信をしばし休んでいたのである。


 もっとも、誰もテスト勉強なんて微塵もしていない上に、〝がちけん〟メンバーは自分たちの因子を使ったスキル実験に熱が入っていた。

 さらに奏星と流霞は、レベルアップによる身体能力の強化具合に慣れること。それに加えて、技術をつけるために動画を漁っては軽い模擬戦を繰り返して、という具合に過ごしていたが。


 そうして今日、ついに上層の攻略を再開するに至ったのである。



「やっぱみんな気付いたー? あーしもるかちーも、この前の〝天秤トラップ〟でレベルアップしてさ。んで、ちょっとイメチェンしよってことで染めたんよねー」


『似合ってる!』

『きひ子ちゃんが銀髪は意外だけど、よくよく見ると顔は綺麗なんよな、この子』

『きひってる時以外に見てみると、結構小顔でパーツ整ってるんよねw』

『なお、きひってる時はどう見ても狂戦士』


「おっ、るかちー似合ってるって」


「ぁ……っす。ど、ども……」


「褒められ慣れしてなさすぎかよ、うける」


『同族のにほひ』

『きひ子ちゃんはほんまw』

『もうちょい笑顔見せてくれてもええんやでw』

『獰猛じゃないヤツなw』

『お、るかちー呼び解禁?』

『まあ俺たちはきひ子ちゃんとしか呼ばないが!』



 配信中ということもあってなんとなく他人に見られていると思ってしまうと素直に喜びにくい、コミュ障オタク少女の見本のような反応をする流霞に、コメント欄が盛り上がっていた。



「さてさて、みなのしゅー。ウチら、この前の〝天秤トラップ〟で、早速とばかりに『&D』の装備壊れまくったじゃん? ってことで、はい、ドローンダウンー。ほらほら、見える?」


『おっ、新装備!?』

『おおぉぉぉ! いいね!』

『ちょっ、露出あるけど!?』

『防刃インナーは!?』

『てか、服だけ!? 胸当てとかなくない!?』


「んふっ、まあまあ。今日は新装備のお披露目もあってね。で、どうよ? 似合ってんべ? ん?」



 ドローンが遠距離操作モードに切り替わり、奏星の足元から装備を映していく。


 足のつま先から膝上まである、黒い編み上げのブーツ。

 その下に履いている白いニーハイソックスは、太ももの箇所はレースで刺繍されている。

 腰周りはプリーツ状の白を基調にしたスカートで、炎を思わせるような真っ赤な柄が入っていて、もちろんその下には黒いスパッツを装着済みだ。サービスする気はさらさらなかった。


 上着は白基調にオレンジ色の色味が強いベストとブラウスで、その上からロングの白基調の半袖パーカー。腕は手首から肘まで覆う薄いアームガードと、手は指貫グローブ。


 それらはさながら、中世から後世ヨーロッパ的世界観のオシャレな騎士服をモチーフにしている、アニメなどで見るようなコスプレめいた服装だ。

 なお、この世界のアニメでもこういった服装が使われることは珍しくはない。SFやロボットものがアニメなどになっているが、中世だの後世だののなんちゃってヨーロッパ世界観に魔法を使ったロボットなどは登場するのだ。


 一方で流霞は、膝下まである明るい灰色のブーツと、同じくニーハイソックス。

 腰回りは白のホットパンツで、上着はシャツの上に肩口までしか袖のないパーカーに、奏星と同じようなアームガードと手袋という、割とシンプルな服装である。


 両者ともに今回は白を基調にした装備を装着していた。



《かわいい》

《ダンジョンじゃなければいいけど!》

《似合ってるけどそこダンジョンよ!? 肌露出してたら危ないって!》

《けどこれで戦えたら格好いいしめっちゃ映えるっしょw》

《天秤トラップクリアしたからって調子乗り過ぎ》

《いくらなんでもそれは危ないって》



 コメントは賛否両論、どちらかと言えば否定的な声が多い。


 実際、視聴者は先日の〝天秤トラップ〟の一件でかなり増えていた。

 登録者数は気が付けば7万人を超え、視聴者数も今の時点ですでに4桁に届くというところだ。

 当然、誰もが何もかもを全肯定してくれるという訳ではないことは、奏星はもちろん、流霞も、そしてこの配信を観ている〝がちけん〟メンバーも理解している。


 そうしてヒートアップしていく批判の声だが、しかしそんな時、奥から武装ゴブリンたちが姿を現して、流霞が魔装を展開させ、銀のロッドをくるくると回した。



「――潰れて」



 くるりと回したロッドがカツンと音を立てて地面を打つ。

 その瞬間、武装ゴブリンの前衛役たちの足元に幾何模様を描いた魔法陣が浮かび上がり、そして直後、不可視の何かに叩き潰されるようにゴブリンたちがひしゃげながら、その場に縫い止められて倒れ込んだ。



『え?』

『なに?』

『は? え、魔法?』

『第2スキルってやつ?』

『いや、でもスキルって基本的に口にしないと発動しないんじゃ?』

『潰れて、っていうのが魔法?』

『弓残ってる!』


「はいはい、落ち着いてー。まー、見てなって」



 奏星がそんな風にドローンに向かって告げた瞬間、ひゅん、と武装ゴブリンの残っていた弓持ちから矢が放たれ、流霞がそれを一瞥して棒立ちする。

 慌てるコメント欄が何かを打ち込むより先に、弓ゴブリンの放った矢は流霞へと近づいていき、そして着弾――するかしないかと言うところで、半透明の光の板のようなものが現れて、その矢をガツン、と音を立てて弾いた。



『あぶ』

『は?』

『今のなに?』

『矢が何かに防がれた?』

『いやいやいや待って、ねえ待ってって!』

『今のって』



 類似したコメントを避けるAI監視ツールを通してなお、凄まじい早さで流れていくコメント。

 しかしそんなものを無視するように弓ゴブリンが再び矢を構え、そして放つ。

 今度はまっすぐ奏星の首元へと向かってきたそれは、しかし再び、ぶつかる寸前で光の板が現れてそれを弾いた。



「――はい、っつー訳でー、今日は〝魔法効果付き防具のお披露目〟でもありまーす」



 コメント欄はあっという間に叫び声のような何かで埋め尽くされた。



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