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〝金銀花〟は止まらない  作者: 白神 怜司
第1章 〝金銀花〟結成!

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【配信】最上層攻略配信 Ⅲ




 ダンジョンという存在は、半世紀近く前に突如として登場した。

 それ以来、数が増えることもなければ減ることもなく、誰が、どうやって、何のために生み出したのかも不明。

 レベルアップ、スキルの獲得によって消費する力についても、便宜上魔力と名付けているが、この力についても未だに分からないことだらけだ。


 それでも、判ったこともある。

 その一つが、ダンジョンの最上層と上層はどこのダンジョンであっても変わらない、全く同じ造りであり、同じ魔物しか出てこない、ということだ。


 チュートリアルとでも言いたげな最上層では、〝魔物を倒すこと〟に慣れさせるような構成であった。

 魔物の攻撃における殺傷能力も低く、どちらかと言えば、躊躇したり迷ったりすれば痛い目を見るような、そんな魔物たちしかいない。


 しかし上層では違う。

 ここから先は、一方的な環境ではない。

 魔物たちもまた、人間を、侵入者を殺すべく襲ってくるのだ。


 殺気に曝される経験がない者、耐性のない者の多くは、この上層に入って後悔する。

 自分を殺すべく躊躇なく迫ってくる魔物に恐怖することになる。


 命を狙われるというのは、恐ろしい。

 そのような経験にない者であれば、誰もがその緊張に追い詰められ、身体を強張らせ、反応が遅れてしまう。

 場合によっては相手の先手を取られてしまい、そのまま命を落とすようなこともあるのが上層以降のダンジョンという場所だ。


 故に、上層に潜る最初の内は、そういった修羅場を乗り越えた先輩探索者と一緒に探索し、緊張せずに動けるようになった方が良い、というのが大手クランの考え方でもあり、探索者ギルドの推奨している方針でもあった。




 ――――そのはず、なのだが。




「――きひっ」



 特徴的な笑い声に続いた、ぶおん、と重たい銀色の鉄の棒が振るわれる音。

 直後に鳴り響いた鈍い音は、魔物の叫び声に掻き消された。


 仲間が殺されたことに恐怖するでもなく、他の魔物が笑い声の主を通り越して斜め後方から肉薄し、死角から飛び込んだ――そのはずなのに、目が合った(・・・・・)

 ぐりん、と身体を回転させながら風を切って迫る銀色の棒が、側頭部を打ち付け、意識を刈り取った。否、正確に言えば命を刈り取った、とでも言うべきか。


 ダンジョン上層。

 石造りの洞窟から一変して、遺跡の中を思わせるようなその場所は等間隔にランプが吊るされて、ぼんやりとした光が通路を照らしているその場所で。

 通路の先から現れた3匹の魔物が、次々と銀色の棒に殴打され、砕かれ、そして今、最後の一匹が殴られた衝撃で吹き飛ばされて力なく横たわった。


 上層の魔物、〝初心者殺し〟とも呼ばれるのは〝レッドハウンド〟。

 鋭い牙を剥いて唸りながら襲いかかってくる、中型から大型サイズの猟犬を思わせる魔物たち。

 四足歩行の独特な加速、殺意を剥き出しにした猟犬たち。


 そんな魔物が今、流霞によって真正面から打ち砕かれていた。



『きひってきたああぁぁぁ!』

『なんでレベル1で一対三を制することができるんですかねぇ……』

『やっぱおかしいでしょ、きひ子ちゃんw』

『何がおかしいって、レッドハウンドって後方に跳んだりして攻撃受け流されるはずなのよ。なのにきひ子ちゃんの攻撃は一撃で粉砕してんのよ』

『きひ子ちゃんの魔装、そんな重いの?』

『ゴリマッチョきひ子ちゃんなの?』



 ゴリマッチョきひ子。

 なんだか売れない女子プロレスラーのような名前がコメントで書かれていることに気が付いて苦笑しつつも、奏星は改めて口を開いた。



「いやー、ヤバいね。ルカって戦ってる最中、未来見えてんのかってぐらいめっちゃ的確なんよね、動きが」


『ほんとそれな』

『いや、マジでそう』

『というか、あの銀の棒って何キロあんの?』

『あれ石割り用のハンマーみたいな重さありそうだが』

『少なくともバールのようなアレ並には重いはず』


「実はあーしも気になってんだよね。ねーねー、ルカ。その魔装、ちょっとあーしも持ってみていい?」


「うん、いいよ」



 そう言いながらすっと突き出すように渡された銀の棒。

 思わず奏星がぴたりと動きを止め、流霞が首を傾げた。



「……や、さすがにそんなバトンみたいに渡すのは無理くね? 絶対持てないし。それの音ヤバ過ぎっから。わーいありがとー、とはならんくね?」


「え、あっ、それがね、実はそんなに重くないんだよね、これ」


「それルカ視点だからってオチじゃないん? あーしが持った瞬間地面に真っ直ぐごとん、みたいな。なんかそんなドッキリになりそうな予感しかしないんだけど。ほら、ちょっと地面に立てるような感じでおね」


「こう?」



 地面に突き立てるように置いた銀の棒。

 流霞がそのまま銀の棒を押さえて立てていると、奏星はそっと近づいて、銀の棒へと近付き、優しく触れた――その瞬間だった。


 突如として流霞の魔装である銀の棒の先端に描かれた蔦を思わせるような青白い模様が、ぼうっと淡く金色の炎に包まれるように輝きだした。



「――ぇ?」


「おわっ、え、なに!? あーしなんかした!?」


「う、ううん、何もしてないよ!?」


『なにごと?』

『まぶし』

『え、待って、なんか模様広がったっつーか伸びた?』

『ゆっくり伸びてってる!?』

『なにこれ……?』

『え、マジでなんなんそれ』

『まさかカナっちの【太陽】が何か引き起こした?』

『やば、こんなん初めて見た』



 流れるコメントはARレンズをつけている奏星にしか見えていないが、そんなコメントを無意識に追いかけていたおかげで奏星も気が付いた。


 流霞の魔装である銀の棒に描かれた、青白い蔦の模様。

 それが金色の炎に触れたことによって燃え上がるように輝いて、確かにゆっくりと成長したかのように広がっていることに。



「る、ルカ! 見て!」


「え? えぇ……!? なんか模様が成長した!?」


『今気付いたんかいw』

『きひ子ちゃんちょいちょい抜けてて草』

『その草というか蔦が燃えて伸びてんだよなぁ』

『魔装がそんな反応するなんて初めて聞いたけど!?』

『これはカナっちがすげーのか、それともきひ子ちゃんのせいなのか』

『だいたいきひ子ちゃんのせい』



 突然引き起こされた前代未聞の変化。

 ただただ理解が追いつかずに呆然とする流霞と奏星の二人であったが、しかしそんな二人よりも先んじて冷静な判断を下した者がいた。



『奏星! とりあえず検証して報告するって言って配信終了して!』



 それは雅からのメッセージだった。

 コメント欄とは違う箇所にポップするように表示されるそのコメントに、はっと我に返って奏星が咄嗟に口を開いた。



「――あー……、ちょっとビビったけど。とりま、なんかちょっと検証したり報告したり、色々やってから改めて報告ってことでよろー」


『それな』

『カナっちの【太陽】の因子のおかげで魔装が強くなるとかだったら大変なことになるぞ』

『どうせなら今見せて!』

『おねがいします!』

『いや、下手に何も分からないまま配信はしない方がいい。場合によっては自由を奪われかねない』

『魔装強化とかやべえな』

『きひ子ちゃんも変わった感じ何ができるのか判ったら教えてね!』

『期待!』

『全裸正座して待機してます!』


「だいじょぶだいじょぶ、ちゃんと報告すっから。だんまりとかさすがにないっしょ。っつーわけで、ウチらも帰りまー。まったねー。ルカも挨拶よろ」


「えっ!? あっ、えっと、さよなら。お元気で」


『草』

『なんかもう会う気ないレベルの挨拶きたw』

『あ、配信切れた』

『このエンディングクリップ好き』

『音楽もフリー素材じゃないのな』

『あー、気になるんじゃああ』

『ホントもう、なんなのこの二人w』

『太陽と月どころか、そこに魔装成長フラグとか、話題に事欠かないレベルw』

『切り抜きは程々になー。公式で切り抜いてくれるからw』

『次回に期待だろ、これ!』



 画面が切り替わり、エンディングの映像と音楽が鳴り響く中もコメントの書き込みは終わらない。

 徐々に視聴者数を示すカウンターが下がっていって、そうして50名を切ったそのタイミングで、そのコメントは書き込まれていた。



『見つけた』



 そのコメントの存在に奏星と流霞が気が付くのも、その意味を知ることになるのも、まだ少し先の話。

 けれどその時、そのコメントは確かに存在していたのであった。



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