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〝金銀花〟は止まらない  作者: 白神 怜司
第4章 新人探索者パーティ対抗戦

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学校側からの要請




 ロングホームルームが終わり、織方によって追い出されるように教室から出ることを命じられた生徒たちが去っていく。

 そうして残された雅と雪乃、美佳里、奏星と共に集まった流霞は、一体何事だろうと思いながら織方が口を開くのを待っている。


 そうしてしばし、織方が手元のタブレット端末を操作して教室の扉をロックすると、改めて一行へと顔を向けた。



「放課後だっつーのに悪いなー。こっちも頼まれちまってなぁ」


「頼まれた、って?」


「んーとだな。まず、姫屋と八咫島、それに川邊もか。〝金銀花(カプリフォリオ)〟ってパーティで活動してるよな? で、矢ノ沢と東は『ガチ攻略女子のダンジョン研究所』っつークランの代表メンバーで、〝金銀花(カプリフォリオ)〟を支援っつか、〝金銀花(カプリフォリオ)〟もそこの所属ってことでいいか?」



 織方から向けられたのは、正しいことを改めて確認するような物言いであり、確証なく問いかけているような物言いとは異なるものであった。

 驚愕する一行に対し、織方は所在なさげに頭を掻いた。



「あー、その辺はあまり公にしてないんだろうし、隠したいって気持ちは分かるんだがな。立場上、在校生の探索者パーティがクランに所属した場合、クラン側も調査せにゃならんのよ、俺も。ま、誰かに言ったりするつもりはないから安心してくれや」



 織方が言う通り、これは探索高校と名付けられている高校の義務でもあった。


 過去、学生探索者の面倒を見るという名目でクランに引き入れ、その生徒らがダンジョンで得たものを無理やりクラン側が安く買い叩くというような事件が起こったこともあり、学校側では生徒の探索者活動についてはかなり目を光らせているのである。


 そうした背景があってのことだと理解し、一応は警戒を解いた面々。

 そんな中で、雪乃が口を開いた。



「つかおがにゃん」


「おがにゃんやめようなー? 俺、もうおっさんだからな? そんな呼び方されるのは一周回って恥ずかしいんだわ」


「まあいいじゃん。おがにゃんさ、そういうの調べてたんなら〝金銀花(カプリフォリオ)〟に対する世間の噂とか、SNSとかとテレビとかマスコミとかの件とかも、ちゃんと把握してたってこと?」



 ――その割には、自分たちに向けられる目線とかそういうのに触れなかったよね、と。

 そんな風に言下に責めるような物言いをしてみせた雪乃の質問に、織方は小さく溜息を吐いた。



「そりゃ知ってるに決まってんだろー。あんだけ騒がれて、おまえらテレビに出たしなぁ。けど、探索高校っつーのは探索者協会ともそれなりに付き合わにゃならんのよ。で、俺の立場上、そこの雇われ教師の俺がおまえらの行動を認めてやることはできなくてなぁ」


「おがにゃん全然触れなかったもんね、うちらのこと」


「下手に触れたら、おまえたちを取り巻く騒動を知ってたのに探索者協会を否定した、みたいに言われるかもしれないからな。知らんぷりしてんのが一番だったっつーことだよ。公務員に人権なんてねーんだわ、クソが」


「うわぁ」


「それでも教師かー、生徒を守れー」


「そうだそうだー」


「うーわ、めんどくせぇ。姫屋とか八咫島の方が圧倒的に守れるだろー? しがない公務員風情に期待しすぎんな」



 その場のノリでデモでも起こすようなノリの棒読みで文句を言い出した雪乃と美佳里に織方が訊ねれば、二人はぴたりと動きを止め、お互いに顔を見合わせた。



「まあ……髪ぼっさぼさ、身体ひょろひょろ、覇気なんて一切ないおがにゃんよりは圧倒的かも? 絵的にも頼りがい的にも」


「それはそう。おがにゃんに守られるぐらいなら奏星とるかちーに守られたい。なんならあーし、自衛できるし。おがにゃんが守るとかパス」


「よーし、そこまでだ。そんなぼろくそ言うと先生泣くぞ? 三十半ばのおっさんがガチで恥も外聞もなく泣き散らかすぞ?」


「は、キッツ」


「んなははは、それなー。俺もそれ思ったわ、キッツって。――って、こんな話ばっかしてたら終わんねーからな。さっさと本題入らせてもらうぞー」



 真面目な雰囲気なんて一切なく、どこか気の抜けた空気が漂う中、改めて仕切り直した。



「〝金銀花(カプリフォリオ)〟で今度の〝第23回 全国新人探索者パーティ対抗戦〟に出る予定、あったりしないか?」


「は?」



 タイムリーと言えばタイムリーな話題ではあるのだが、雅だけは「やっぱりそれに関する話か」と納得していた。

 実際、学校でもポスターなんかが貼られ始め、参加希望者を募るフォームの公開予定日なんかがでかでかと記載されているのだ。


 それに、〝全国新人探索者パーティ対抗戦〟でそれなりの成績を残せば、将来的にも探索者として活動するにあたってプラスに働くことも多い。

 生徒たちも腕試し目的で登録しようとする者は一定数存在していた。



「出る予定だけど、どしたん?」


「おー、そりゃ良かった。んで、ものは相談なんだが、それな、ウチの学校の推薦枠で出てくれたりしねーかなって」


「学校の推薦枠?」


「あぁ。〝全国新人探索者パーティ対抗戦〟ってのは、二十歳未満で結成、活動開始から2年以内の探索者が主体となっているパーティだけが参加できる大会だろ? 要は若手の活躍の舞台――っつーか、大手クランの青田買い大会なわけだ」


「身も蓋もない言い方しよる」


「こやつ、本当に教師か?」


「残念、俺は教師だ。たまに辞めたくなるが、それが現実なのだ」



 真面目な空気が長く続かず、茶化すように雪乃と美佳里がぼそっと呟けば、いちいち織方が拾ってキリッとした顔で答えた。

 そのやり取りがなんだかコメディチックで流霞が笑いを堪え、口元をむにむにと動かしていることには全員が気が付いていた。



「んでなー、まあ、東京には探索校が5校あるんだが、それぞれの学校で代表として推薦したパーティを出さないかっつー話になったらしいんだわ」


「あー、なーほーねー」


「んじゃ、ウチ(第3)からは〝金銀花(カプリフォリオ)〟を出したいってこと?」


「そうだ。けど、クランに所属してるパーティだと、クランにも話を通す必要があったりするからなぁ。だから矢ノ沢たちの許可が必要ってんで呼び出したっつーわけだ。どうせ出るならウチの推薦枠になんねーかってことよ」



 なるほど、と流霞たちが納得する中、ただ一人、雅は険しい表情を浮かべて瞑目していた。



「先生、それ学校的にどうなん?」


「おぉ、さすがクランリーダー。そういうとこ言及すんのは偉いな、矢ノ沢」


「そーゆーのいらねーし。ただ、〝金銀花(カプリフォリオ)〟はもうレベル3じゃん? ぶっちゃけ、学校の関係で出る一般的な高校生と〝金銀花(カプリフォリオ)〟じゃ、相手にならんくない?」



 入学から半年ほどか、1学年上の世代でも1年半足らずの学生探索者のレベルは、基本的にはレベル2になっていれば優秀、というような水準だ。

 そんな大会にレベル3探索者を学校側から推薦して出すとなれば、他の学校との軋轢を生み出す結果となりかねないのでは、と雅は考え、質問を投げかけた。


 しかし一方、そんな質問をぶつけられた織方はひらひらと手を振ってみせた。



「心配いらねーよ。実のところ、その辺については他校も色々考えているみたいでな。競技に多少ハンデがつくらしい」


「ハンデ?」


「さすがにそれは漏らせねーって。それより、どうだ? 何か特別なことやってほしいって訳じゃねぇんだ。ただ、ウチの推薦っつー看板を背負ってくれるだけでいい」



 織方の問いかけに対する答えをどうするか。

 流霞としては、特にやることが変わる訳でもないのであれば別に受けてもいいだろうな、とは思っている。


 他の面々も心情的には「どっちでもいいけど」という程度であったのだろう。

 必然、誰も何も言わず、こうした時に一番最適な回答を出せる雅に視線が集まり、集まった視線を受けて雅が口を開いた。



「先生、それ、〝金銀花(カプリフォリオ)〟が受けるメリットについて何も話してもらってないんだけど、そこんとこどうなの?」



 クランのリーダーとして、自分のクランに専属という形で所属している〝金銀花(カプリフォリオ)〟の看板を貸し出すというのであれば、相応のメリットがなければ協力する義理はない。


 そう考えた雅の一言に、織方はニヤリと笑った。



「推薦パーティは大会会場近くのホテル費用を学校側が受け持つぜ?」


「却下ね。その程度なら経費で出せてしまうもの」


「……普通の生徒が相手ならそれだけで喜ばれるもんなんだがなぁ。ま、そうなるわな。って訳で、これは学校側からの譲歩だ。――おまえたちのダンジョン探索を公休として扱おう。参加するだけなら、せいぜい出席日数の必要数を多少減らす程度だが、活躍してベスト4以内に入れば、その辺は無視して無制限で休んでも卒業資格を与える、ってのはどうだ? つっても、試験は受けてもらうけどな」



 ニヤリと笑うだけあって、破格な条件と言えるだろう。

 ある意味、そこで学校の看板を背負ってベスト4に入ってさえしてしまえば、学校に来なくても、赤点さえ取らなければ卒業資格を与えてくれるのだ。


 ――それってつまり、規則正しく起きなくてもいいって、こと……!?


 そんな条件に見事に釣られた一行の顔つきに、織方は勝利を確信したのであった。


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