第46話 魔神を斬り舞う
「グルぅぅぅぅ。殺ス! 絶対ニ殺シテやルゥ!
完全にグレーターデーモンへと変化した義眼男。
舌なめずりをして、わたしとひなの元へと近づく。
「嬢ちゃんたち。警視正は動いているんだろうな。俺は彼女に頼まれて、奴らの部隊に居たんだ」
戦隊ヒロイン姿のわたし達の背後でごそごそしながら尋ねてくる坊主頭の男、道明。
わたしや結衣の恩人でもあるし、ひなや警視正の知人。
元から敵では無いと思っていたが、どうやら敵の内部にいて情報収集をしていた様だ。
「ええ。今頃、警視正は逃げた大臣の身柄確保をしているはずです」
「お姉さま! そんなことより、今はコヤツを倒す方が先なのじゃ!」
ドスドスと床を軋ませながら近づく三メートル強、蒼い鱗で前人を覆う巨体。
大人の胴よりも太い尾を、ビタンビタンと床に打ち付ける。
背中の大きな羽が羽ばたくたびに、生臭い臭気が周囲に広がる。
そして尾よりもさらに太い四肢には、毒がしたたり落ちる鍵爪。
歪にねじくれた羊角を持つ頭部。
人間時代から浮かべていた下卑た笑みは、牙だらけの顔を歪ませる。
残った左目は、金色に輝く縦割れ瞳孔。
凄まじい瘴気と殺気、魔力を放つ最強たる魔神。
……前は満足に戦えなかったけど、今度こそ倒す!
「ひな。ううん、二号。マスコミの皆をお願い。コイツはわたしが抑え込む」
「了解なのじゃ、一号お姉さま。道明おじさま、遊んでないで手伝うのじゃ!」
「俺でも、こいつ相手は厳しいぜ、とはいえ、嬢ちゃん達だけを戦わさせるのは、大人失格。中距離から支援だけさせてもらう」
わたしが前に一歩前に踏み込む。
ひなは、逆に下がって、まだカメラを回すマスコミの前。
道明は、その中間に立つ。
「こ、こんなことがあるのでしょうか? ひ、人がバケモノに変貌しました。その上、このバケモノが警視庁で多くの人々。我々マスコミの同僚たちも殺しました。ゆ、許せません!」
「そうだ! 俺たちは、アイツらの敵討ちをする。死んでも、この場所でカメラを離しはしない。少女たちの戦いを世界に知らせるのだ」
強烈な殺気を前にしても、怯まないマスコミたち。
魔神からは距離を置き、広い会議室の端っこまで逃げるが、カメラは止めない。
正直なところ、逃げてくれた方がわたしは戦いやすいのだが、この戦いを世界に広める事で、わたし達に「錦の御旗」。
正当たる「正義の味方」であることを証明できる。
「シネ!」
まずは先手。
動いたのは魔神。
わたしを押しつぶす様に上から振り下ろされる鍵爪付きの右平手。
それを向かって右へ回り込む滑るような歩法で回避。
……縮地歩法!
「はぁぁ!」
がら空きの脇腹へ一閃。
ガキンという音と鉄を殴った様な感触が刀を握った手に返る。
「グワぁぁ!」
すかさず、突き刺してくるような左抜き手。
姿勢を低くして転がる様に回避。
魔神の背中側に回り込み、ゆらゆらと蠢く尾に最上段から渾身の一撃を放つ。
「……ふ!」
「ギェぇぇ」
今回は手ごたえあり、尾に半分ほど刃が食い込み、血しぶきも上がる。
「すげえなぁ。あの嬢ちゃん、猛攻を回避しながら、魔神に攻撃を通してるぜ」
「それがお姉さまなのじゃ。ほれ、おじさまも支援するのじゃ。<帝釈天・雷神撃>!」
正面からは、ひなの呪術攻撃。
ちゃんと弱点である眼を狙う雷撃に、魔神も一瞬ひるむ。
「グ!」
「もう一撃!」
更に切り込込もうとしたが、その瞬間。
背筋に、凄まじく冷たいものが走った。
「チ、チキショぉぉ!」
……危ない!
大きく背後に飛ぶが、わたしの残像は紫色の血しぶきをあげながら動く尾に薙ぎ払われる。
「踏み込んでたら、死んでた……」
「めすがきガぁぁぁ!」
わたしの方へ振り返り、怒りに左目が金色に。
そして機械仕掛けの右目は、血の赤を灯す。
「はぁはぁ。変身したら少ないボキャブラリーが更に減りますね。元々少ない脳みそをわたしが削ったせいかしら?」
半分息を切らしながらも、挑発をする。
こっちに攻撃を向けさせることで、マスコミやひなを守るために。
「動クナぁぁ!」
怒りのまま、左右の抜き手を繰り出す魔神。
わたしはステップバックしつつ、気配を読んで攻撃を躱す。
……殺気が消せないから攻撃場所は読めるけど、それでも避けてばかりじゃ、きっついなぁ。
「はぁぁ! <気功弾>」
道明が吠えたかと思えば、腰下で組み合せた両手に力を集め、光の球として撃ち出す。
「此方もやるのじゃ! <愛染明王・天弓撃>!」
ひなも呪符から光の矢を生み出して、魔神に撃ち込む。
「み、皆さま。見えていますでしょうか? バケモノの猛攻を、ひとりの少女が受け流し、刀一本で戦ってます。噂では、警視庁でも刀を使う女性が魔神を撃退したと言われていますが、それが彼女ではないでしょうか?」
すっかり興奮気味のマスコミ。
仕込みのテレビ局員さんは、わたしを褒めたたえるのだが、真面目に聞いている暇は無いし、迂闊な事を言われて正体が世間にバレるのは非常に困る。
……バレたら、学校に行けなくなっちゃうよぉ。
「更に、なんと! 大男と幼い少女が、まるで魔法みたいな攻撃をしています! これも噂レベルの話ですが、警視庁でも魔法少女が警察隊を助けたと聞いています」
仕込みテレビ局員は、すっかり本調子。
他のマスコミは、言葉も出ずに戦いを映すのが精一杯な中。
ただ一人、わたしたちの戦いを解説している。
「ギィィ! 雑魚ガ」
呪術攻撃に怒って、わたしに背を向ける魔神。
そこが隙だと、間合いを詰める。
「甘イ!」
しかし、それはわたしに向けた罠。
まだ血が止まらない尾を、槍の様にわたし目がけて突き刺してくる。
「そっちこそ!」
だが、それも読み切ったわたし。
ステップで突き刺しを避け、半分まで斬り込んだ傷跡に再び刃を打ち降ろす。
「グギャぁぁぁ!!」
わたしは、会心の一撃を繰り出して、刃を最後まで振り下ろした。
「……<虚空一閃・唐竹>」
その結果、魔神の尾を完全に切断。
切り離された尾は、ビクンビクンと痙攣したのち、チリと化す。
「ヨ、ヨクモォォォ!!!」
魔神は、半分以下になった尾から血しぶきを上げながら咆哮を上げた。
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