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Day Break Frontline  作者: 白宮 える
re:1 日常ブレイカー
10/20

第8話 ブライトネス.3

 ガガンッ!


 近くで何かの衝撃音が聞こえた。暗闇であたりは何があるかわからない。ピチャピチャと液体の滴るような音も聞こえた。何がどうなっているかわからない。頭は思考することを拒んだ。暗闇の中で彼は無を感じていた。


 体が熱い。体をめぐる血液が沸騰しているみたいだった。脳内に何かが語りかけてくるように声が響く。


(生きろ、おまえはまだ生きなければならない。)


 暗闇で声が響いた。何度も何度も。

 程なくで苦しくなってきた。息ができない。体が空気を欲している。彼の頭は危険信号を鳴らし、先ほどまで感じていた静寂はどこかへ行ってしまった。

  そして、彼の意識は覚醒した。




「っはぁ!! はあ、、はあ、、、うぐっ!!ゲホッ!ゲホッ!」


  一気に上体を起こし、大きく息を吸い込んだ。しかし、思うように酸素を貪ることができなかった。口元を拭った。すると腕についていたのは見たこともないようなドス黒い液体だった。少し粘性もある。体を起こし、よく見ると顔だけでなく体のいたるところにそれが付着していた。まだ現状を読み込めていなかった。橙色と黒色のグラデーションが辺りに広がっている。そして、ビルの屋上に自分がいることも彼は理解した。なぜこんなところにーーー疑問が彼の頭をよぎるほどに思考力は戻ってきた。そして、これまでの状況を思い出し、認識した。巨大なバケモノに追われ、逃げ、そしてヒナミとともにここにきたこと、そして先程の常人を超えた力のことも。


「うぅ、、、くっ、、、」


 体の感覚が戻り、アオイは今まで味わったことのないだるさを感じた。痛みはいつのまにか消えていた。


(ヒナミは!!)


 そう思い、アオイは左右を見回した。近くに彼女は倒れていた。目を閉じ、ぐったりしていた。どうやら気を失っているようであった。彼女にも彼と同じどす黒い液体がこびりついていた。アオイは彼女の無事を確認して、安堵を感じた。そして彼女を抱き寄せた。


(それにしてもこの液体はーーー)


 彼がそう思ったとき、



 グゥヴォォオーーーーー!!!



 グァギャアーーーーーー!!!



 2つの咆哮が空気を振動させた。思わず耳を塞ぎ、目を閉じた。何度聞いても凄まじい。その咆哮が振動となって体のあらゆるところを揺らした。

  少してから咆哮は鳴り止んだ。アオイは目を開け、咆哮の主ーーー怪物たちの方を見た。彼の目に移ったのは驚くべき光景だった。怪物たちの片側の腕の先からがなかったのだ。それも2匹とも。何か鋭利な者で切り裂かれたのだろうか、腕の元からは黒い液体がボトボトと落ちていた。それは彼らに付着したものとよく似ていた。何が起こったのかは分からなかった。そしてーーー疑念とともにアオイの目に移ったの怪物の近くに煌めく青い光だった。いくつもの輝きが横一列に並んでいる。美しいーーーアオイはそう感じた。

  よく見ると、輝きを放つものはボードのようなものである。ジェットエンジンのようなものから放出されていて、上にはたしかに人が乗っていた。


「全員散開!! 目標、NWC通常型!!!」



「了解!!!」


 明るくすんだ声が響きわたり、光が散らばった。この空中浮遊する部隊の隊長なのだろうか、真ん中にいた金髪の男の人の声であった。

  ボードのようなものに乗った彼らは散開し、怪物の周りを取り囲んだ。その手には何やら特殊な剣や銃のようなものがある。それを怪物達に向けてはなった。放たれた銃弾や剣技は赤や青など様々な色を帯びていた。怪物にあたると、その体を容易にえぐり、そして砕いた。



 グァアーーーーーー!!!



 彼らに痛覚があるかどうかは分からないが、悔しそうに叫んだ。そして、光放つ彼らを叩き落とそうと残った腕を振り回すが虚しく空を切る。彼らの攻撃はまるで美しい舞のようであった。さらに今は夕暮れ時。彼らを包む橙色と黒のコントラストがさらにその美を際立たせた。アオイはその光景に目を奪われていた。



 ズズゥーーーン!



 二体の外部はなすすべなく膝をついて崩れ落ちた。どちらも傷だらけでボロボロだった。怪物達はもう、恐怖の対象の怪物ではなかった。彼らによって見るも無残に蹂躙されたのだ。そして、彼らのうちの声を最初にあげた金髪の隊長のような人がアオイに近づいてきた。


「さあ、もう大丈夫だ!!俺たちがきた!!!」


 澄んだ声が再び響き渡った。彼の表情や顔は夕焼けでよく見えなかった。もうアオイの心に絶望や恐怖といった負の感情はなかった。彼らはまごう事なき、アオイとヒナミを救う希望の光だった。


「彼らの避難の時間を稼ごう」


 金髪の青年はそう言うと、また怪物と対峙した。彼の着ていた白い上着が風で舞った。そして、彼の背中にあったのは黄金のバラであった。アオイが夢で見たのと全く同じあの黄金のバラ。夕焼けに照らされたそれは神々しくきらめいていた。青年は片手がちょうど収まるくらいの短い棒を取り出した。そして、何やら呟き、ボタンのようなものを押した。バチッと青い電気が走り、みるみるそれは形を変え、やがて剣となった。


「行くぞ!!!」


 黄金のバラを携えた彼らは再び怪物に向かって美しい舞を始めた。安堵とともに、アオイの心にあったのは疑問であった。何故夢と同じ黄金のバラを携えた彼らが実在しているのかという。しかし、考え始める前に彼の意識はブラックアウトした。


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