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現実でのひととき

 「……やっば、寝坊した!」

 

 枕元にある時計を確認し、慌てて布団から這い出る。

 昨日調子に乗って遅くまでサモクロをやっていたせいだろう。

 急いで着替えて学校に行く準備をする。

 居間に降りると、既に妹が朝食を食べ終え学校に向かう所だった。

 

 「珍しいね、お兄ちゃんが寝坊なんて」

 

 慌てて朝食を用意している僕に向かって、妹が物珍しげな視線を向ける。

 というか起きてたならひと声かけて欲しかった。 


 「ちょっと昨日遅くまで遊んでてな」

 

 「ほほう、何をして遊んでたのか気になるけど遅刻しちゃうから帰ってきたら聞こう。それじゃあ先に行くねお兄ちゃん」

 

 バタン!とドアをしめて先に妹が先に家を出て行く。

 僕も急がないと本当に遅刻してしまいそうだ。

 最低限必要な物が鞄に入っている事を確認して、僕も妹の後を追う。

 

 全速力で走ってなんとか授業に間に合った僕を、教室でいつもの二人が出迎える。

 

 「今日は随分遅かったじゃないか涼太。さては昨日遅くまでサモクロやってたせいで寝坊したな?」

 

 樹が息を切らしている僕の脇腹を肘でつつきながら聞いてくる。

 

 「ご明察……。見事に寝坊しちゃったよ」

 

 そんな僕の言葉を聞いて、舞花がクスクスと笑う。

 

 「わかるよ、私も最初にやった時楽しすぎて夜更かししちゃったもん。まぁ私の場合は見事に次の日遅刻しちゃったけどね!」

 

 えへん、とささやかな胸を偉そうに張る舞花。

 ここは突っ込むべき所なのだろうが全速力で走った後ではそんな気力もわかない。

 

 そんな感じにいつも通りの他愛も無い会話をして授業が始まるまでの少しの時間を費やしていった。

 


 「というわけで今日の授業も全て終わったわけな」

 

 そして放課後、人気も少なくなった教室に再び僕と樹、そして舞花が集まっていた。

 

 「というわけで、の意味が分からないけど授業終わったら残ってて欲しいってなにか用でもあるの?」

 

 そう、なんで僕らがここにいるのかというと日中樹に放課後話があると呼びだされたためだった。

 

 「涼太も本格的にサモクロを始めたわけだし、ぜひとも教えておきたい事があってな。ところで涼太、ちゃんとPIDの設定はしてきたか?」

 

 それを聞いて、昨日の放課後樹に言われた事を思い出す。

 

 「あっ……」

 

 昨日のゲーム内での体験が鮮烈すぎて完璧に忘れていた。

 

 「あっ、じゃねぇよ全く。あれだけ登録しとけっていったのに。今日帰ったら絶対やっとけよ。んで、ちょっとそのPIDとの連携機能について説明しとこうと思ってな」

 

 どうやらわざわざ、それを俺に教えるために教室に残っていたらしい。 


 「まぁ説明するより見せた方が早いな。来い、シェル」

 

 樹が自分のPIDに向かって声を発する。

 すると、音声を認識したデバイスの画面に、デフォルメされたシェルの姿が映し出された。

 

 「と、こんな感じにあのゲームと自分のPIDとで連動してるわけだ。この登録をしとくと、IPDを使ってミニゲーム感覚でレベル上げができるからすげえ便利なんだぜ」

 

 そういえばサモクロの魅力はこの連動機能にもあると言う話を聞いた事がある。

 屋外でも気軽にゲームに参加できるシステムというのが、時間があまりない社会人や学生にうけたらしい。

 

 

「それにレベル上げだけじゃなくてスキンシップも出来たりするんだよ!ほらほらみてみて」

 

 舞花がPIDにフィオーレを喚びだし、その姿が映っている画面をタッチする。

 すると、フィオーレが嬉しそうに画面の中を飛びはじめた。

 

 「ね、可愛いでしょう?」

 

 確かにこれは良いシステムだ。

 ゲームの中での相棒である召喚獣と、現実世界でもこうした形で触れ合えるというのはとてもおもしろ発想だと思う。

 

 「いまはまだこれくらいの機能だが、のちのちはPIDを使った対戦システムなんかも組み込む予定らしい。そうなったらまた遊ぶ幅が広まるよな」


 樹の言葉に僕も思わず頷く。

 どうやらサモンクロニクルにはまだまだたくさんの魅力があるようだ。

 

 こんな話をしていたら段々とサモクロをやりたくなってきてしまった。

 シュリさんとの約束もあることだしそろそろ帰ってゲームを楽しみたい。

 

 「さて、俺が教えときたいのはとりあえずこんなとこだ。ゲーム内でのことはまた今日も一緒に遊ぶだろうからそんとき教えてやるよ」

 

 僕のそんな雰囲気に気がついたのか、樹がを終えて解散する事になる。

 

 「わかった、色々ありがとう樹。それじゃあ今日は大規模クエストが実装されたら、昨日と同じ場所に集合ってことで良いかな?」

 

 僕の質問に、ふたりが異議なーし!と答える。

 今夜の予定も決まった所で、僕らは教室を後にした。

 

 家に帰り、早速VR機器の準備をする。

 どうやら僕もどっぷりこのゲームにはまってしまったらしい。

 好奇心に高鳴る心を抑えつつ、僕はゲーム起動のスイッチを押す。

 

 そして再び、僕はサモンクロニクルの大地に降り立った。


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