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銀狼フェリル


 「おし、こいつらを倒したらレベルアップだ」

 

 あれから30分ほどひたすらスライムを倒し続けていた僕たちだったが、やっとまんじゅうが進化できるレベルに達しようとしていた。

 

 「よーしこれで最後だ、やっちまえ!」


 シトロンのかけ声を合図に、まんじゅうがスライム達にとどめを刺す。

 

 『進化が可能になりました。進化させますか?y/n』


 レベルアップの音と共に目の前に進化を実行するかを尋ねる画面が現れる。

 

 「yesっと」

 

 特に迷う理由もないのでyesを押す。

 するとまんじゅうが強い光に包まれ、その姿を変えていった。

 

 「おぉ……!」

 

 光がおさまり、進化を終えた元まんじゅうが新しい姿を現す。

 それは白銀の毛並みを持つ犬の様な獣だった。

 

 「わー!ルートの召喚獣はわんちゃんなんだね!」


 舞花が駆け寄ってきて元まんじゅうを抱きかかえる。

 

 「これは犬って言うより、小型の狼か?なんにせよ強そうな召喚獣じゃないか」

 

 シェルを喚び戻したシトロンも近くに寄ってきて舞花が抱えてる僕の召喚獣を眺める。

 

 「そうだ、ステータスステータス」

 

 進化時には特殊スキルが追加されたりステータスにボーナスポイントが着いたりする。

 ランダム要素が強いので進化時のステータス確認はこのゲームの醍醐味と言える。

 

 「えぇとなになに。おぉ、俊敏と攻撃にボーナスポイントが入ってるな。特殊スキルは……銀狼の加護?」

 

 「おぉ!一次進化で特殊スキルついたのか!」


 僕の言葉にシトロンが驚きの声を上げる。 

 基本的にこの特殊スキルと言うのは進化時にしか付与されないので貴重なのだ。

 

 「効果は……っと、スキル発動時に俊敏と攻撃のステータスを2倍、効果が切れた時点で一定時間全ステータス半減。……これはまた随分と使いづらいスキルだな」

 

 強力な能力には違いないが、デメリットも大きい。

 使いどころを見極めなければかえって不利になる事もある難しいスキルだ。


 「そのステータスといいそのスキルといい一撃必殺タイプなのかね、ルートの召喚獣は」

 

 シトロンの言う通り、高い火力と素早さで一撃で相手を倒していく戦い方が一番合ってそうだ。

 

 「まぁ実際にモンスターとちゃんと戦ってみてから戦法は考えよう。それより進化もした事だしちゃんと名前を付けてあげなきゃな」

 

 さっきから舞花とじゃれている子犬を眺めながら名前を考える。

 どうやらスキル名からも狼のようだし、せっかくだからそれに関係した名前をつけることんにした。

 

 「よし、お前の名前をフェリルだ。改めてよろしく頼むよ」

 

 狼と聞いてぱっと思い浮かんだのが神話にあるフェンリルだったので、それをもじって名前をつける。

 フェリルも気に入ったのか、ぱたぱたと何度も尻尾を振っていた。

 

 「さて無事名前もきまったことだし、次の狩り場にいくか!」

 

 シトロンのかけ声に、おー!と僕と舞花が声を上げる。

 

 

 そんなわけで、草原を後にした僕たちは深い森の中にいた。

 本来なら僕のレベル的に次の狩り場は草原を抜けた先にある湖なのだが、僕のステータスをみたシトロンがこのパーティならばその先の森のなかでも十分戦えるといったため、段階を飛ばしてこの森へきている。

 

 「狩りの仕方は基本的にはさっきと変わらない。俺のシェルが盾になって舞花が支援と後衛からの攻撃、そしてルートとフェリルがその高火力でとどめといった流れだな」

 

 僕と舞花がうなずき、シトロンの言葉に従う。

 

 「この辺りならまだ大丈夫だと思うが万が一強い敵がくるとシェルが持たない可能性がある。だからハウリングボイスは使わずに一体ずつ確実に仕留めるぞ」

 

 さすが三つ目の狩り場ということもあり、遭遇する敵によってはシェルの防御が破られる可能性もあるらしい。

 

 「それじゃあ始めるぞ。シェル、アクアブレス」

 

 シェルが木々の合間から見えた大きい鹿のようなモンスターに口から吐いた水の球を当てる。

 すると、水球をあてられた事でこちらに気がついたシカが猛突進してくる。

 

 「ロックシェルター!」

 

 シトロンがスキル名を叫ぶと、シェルがその身体を甲羅の中に引っ込めシカの猛攻を防ぐ。

 激突した瞬間シェルの体力が大幅に減ったが、さすがの耐久力のようで見事にシカの動きを止めた。

 

 「私たちに任せて!クイックヒールっ」

 

 フィオーレがシェルに向かって回復魔法を放つ。

 すると削られた体力がみるみるうちに全快していく。

 

 シカもその大きな角でシェルをどつきながら攻撃を加えるが、その度にフィオーレに回復されて壁を破る事が出来ない。

 

 「いくよフィオーレ。アイスブリッド」

 

 舞花の声と共に、フィオーレが氷の弾を形成しそれを鹿に向かって放つ。

 シェルに行動を制限され、まともに弾をうけたシカの体力が大幅に削れた。

 

 「後は任せたよルート!」

 

 舞花の言葉に頷き、僕とフェリルが戦闘態勢に入る。

 

 「これでとどめだ!フェリル、ウィンドファング!」

 

 先ほど新しく覚えたばかりのスキル名を叫ぶ。

 フェリルは風の魔力を纏い、その俊敏さを生かしてシカの喉元に噛み付く。

 すでに大分削れていた体力が一気に減り、そのままシカは絶命した。

 

 「やったね!」

 

 倒した事を確認した舞花が僕にハイタッチをしてくる。

 

 「いい感じじゃないか。その調子でどんどん次いこうぜ」

 

 シトロンにお墨付きを貰い、少し得意げになる。

 まぁ実際に戦ってるのはフェリルなんだけど。


 

 その後も同じように連携しながら森の中で狩りをしていたが、ある時からふと違和感を感じるようになってきた。

 

 「なんか、やけにモンスターの数が減ってない?」

 

 俺の言葉にシトロンも首を傾げる。

 

 「確かに最初は少し歩けばすぐモンスターがいたのにあんまり見かけなくなったな」

 

 他のプレイヤーがいるわけでもないのに、遭遇するモンスターが明らかに減っていた。

 と、その時森の少し奥から轟音が聞こえる。

 びっくりして三人同時にそちらを見ると、そこには巨大な爪を携えた大熊が佇んでいた。

 

 「げっ、エリアボスかよ!モンスターが少なくなってる原因はこれか!」

 

 シトロンが熊を見てすごく嫌そうな声を上げる。

 

 「まずい、こっちに気がついてる。あいつは俺たちでも倒せるか怪しいんだが目標にされてる以上逃げるのも難しいしな……。仕方ない、駄目元でやってみよう」

 

 シトロンがそう言い終わった直後に、その獰猛な目つきでこちらを睨んだ大熊が全速力でこちらに駆けてくる。

 

 「基本はいままでと変わらずいくぞ!マイカは回復重視で頼む!攻撃は頼んだぞルート!」

 

 「了解、まかせて!」

 

 「わかった、やれるだけやってみる」

 

 シトロンに僕と舞花が返事をし、エリアボスとの戦闘に入る。

 

 さきほどのシカの時とおなじように、シェルがロックシェルターで大熊の進路を塞ぐ。

 そこに邪魔だと言わんばかりに熊の大爪が振り下ろされた。

 

 「うっおさすがエリアボス。攻撃力が半端じゃないな」

 

 シトロンがシェルの体力を確認して驚愕の声をあげる。

 シカの突進で半分も削れなかった4分の1ほどになっていた。

 

 「危ないっ!ハイ・ヒール!」

 

 クイックヒールより強力な回復魔法をフィオーレが放つ。

 それによってシェルの体力が全快ちかくまで戻るが、それをだまってみている大熊ではなかった。

 凶悪な大爪を振り回し、何度も何度もシェルの甲羅に叩き付ける。

 一撃は大した重さではないが、それを素早く繰り返しているせいでガリガリと体力が削れていった。

 

 「これだとキリがないか。フィオーレ、ヒールリング!」

 

 体力が持ってかれる度にハイ・ヒールをかけていた舞花だったが、自動回復効果のある魔法をシェルに駆け直す。


 「さて、僕たちも見てるだけと言うわけにも行かないな。フェリル、隙を見てウィンドファングを当ててすぐ逃げるんだ」

 

 俺の言葉に従い、フェリルは熊の爪がシェルの甲羅にくいこんで動きがとれなくなった隙をついて、一気に距離をつめ風の牙を突き立てる。

 熊が苦悶に顔を歪め、フェリルを振り払おうとするが、その攻撃があたる前に持ち前の素早さで大熊から逃れた。

 

 「よしっよくやったぞフェリル!その調子だ!」

 

 思わず叫んでしまった俺にフェリルも嬉しそうに尻尾をぶんぶん振りまくる。

 

 「二人ともいい感じだね。私もサポートするよ!みんな目を瞑って、フラッシュボム!」

 

 舞花に言われた通り俺とシトロンが目を瞑る。

 フィオーレは熊の目の前まで接近すると、強烈な光を放つ魔法を炸裂させた。

 

 「やった!いまだよルート、やっちゃってっ」

 

 彼女の声につられて熊の様子を見ると、まともに光を受けてしまった目を抑えて地面をのたうち回っている。

 大きく出来たその隙にフェリルが熊の喉元に牙を突き立てた。

 急所にあたったためか、大幅に熊の体力が減少する。


 視力が回復した熊が怒り狂ってフェリルを襲おうとその爪を振り上げた。


 「させるかよ!シェル、ハウリングボイスだ!」

 

 爪がフェリルに振り下ろされる瞬間、シェルが先ほどスライムを集めるときに使ったハウリングボイスを放つ。

 強制的にターゲットを変更され、熊の動きが一瞬止まった。

 

 「隙ありだよっ!ライトバインド!」

 

 その一瞬の隙をついてフィオーレが光の鎖で熊の動きを封じる。

 

 「よし、動きを封じた。後は任せたぞルート!」

 

 シトロンの言葉に頷き、僕はフェリルに全力を出させる。

 

 「フェリル!銀狼の加護を使ってあの熊にとどめをさせっ」

 

 その言葉を合図に、フェリルの全身を銀色の光が包む。

 ステータスが2倍になったことでその攻撃力も大きく跳ね上がった。

 

 「やっちゃえー!」

 

 舞花の叫びを背に、フェリルが一直線に拘束された熊に走る。

 そして、再び熊の首元に銀色に光る牙を叩き込んだ。

  

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