第16話 やる気満々でパーティー登録しに行く
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訓練場を出て、街の通りに戻る。
夕方の光が石畳を照らし、昼よりも少し落ち着いた空気が流れていた。
依頼帰りの冒険者たちが、仲間と並んで歩いているのが目に入る。
(……パーティーか)
ハジメはその光景を見て、ふっと息を吐いた。
(いいよな、ああいうの)
(ちゃんと“それっぽい”)
そして横を見る。
リナが普通に歩いている。
(……まあ)
(こっちも一応パーティーなんだけど)
(まだ“それっぽさ”ゼロだな)
「で」
リナが前を見たまま口を開く。
「これからどうするの?」
その一言に、ハジメは少しだけニヤッとした。
(来たな)
「決まってるだろ」
ハジメは少しだけ胸を張る。
「パーティー組んだらまず何する?」
「知らない」
「即答かよ!!」
(まあそうだよな!!)
「いいか、よく聞け」
ハジメはなぜか少し偉そうに言った。
「まずギルドに行く」
「うん」
「パーティー登録をする」
「うん」
(……こいつ、本当に聞いてるか?まいいや)
「それから依頼を受ける!!」
ドヤ顔で言い切る。
「なるほど」
リナは軽く頷いた。
「じゃあ行こう」
「反応薄っ!!」
(もっとこう、感動とかないの!?)
そんなやり取りをしながら、二人はギルドへ向かう。
(よし)
ハジメは内心で気合を入れる。
(ここからが“冒険者っぽい流れ”だ)
やがてギルドに到着する。
扉を開け、中へ入る。
いつもの騒がしさ。
酒の匂いと、笑い声。
(うん、いいなこの感じ)
二人で受付へ向かう。
「すみません」
ハジメが声をかけると、受付の女性が顔を上げた。
「あら、また来たんですね」
「どうも」
軽く会釈する。
そして——
受付の視線が、ハジメの隣へ移る。
「……お連れの方ですか?」
「はい!」
ハジメは少しだけ勢いよく答える。
「さっきパーティー組みました!」
すると受付は、ほんの少しだけ笑った。
「早いですね」
「ですよね!」
(そこは自分でも思ってる)
「では——」
受付が続けようとした瞬間。
「パーティー登録お願いします!!」
ハジメが食い気味に言った。
(決めた!!)
(ここが第一歩だ!!)
だが——
「しない」
横から、リナが即答した。
「……え?」
ハジメが固まる。
「いや、さっき道で説明した時『うん』って言ったじゃん! 登録するって言ったじゃん!」
「……あー」
リナは興味なさげに視線を逸らした。
「ハジメが楽しそうに喋ってたから、適当に相槌打ってただけ」
「聞いてなかったのかよ!!」
(俺のあのドヤ顔解説を返せ!!)
「まだ組んだばっかでしょ」
「いやまあそうだけど!」
「合わなかったら終わりだし」
「現実的すぎる!!」
受付がくすっと笑う。
「確かに、その判断は間違っていませんね」
「ですよね」
「納得すんな!!」
(なんで俺だけ浮いてんだよ)
さっきまでのやる気が一気にしぼむ。
(いやでも)
(確かに言ってることは正しい)
冷静になると、何も言い返せない。
「登録はしないけど、今回はお試しってことで、特例でこの依頼に二人分の名前を載せておきますね」
「そんな事できるんですね…お願いします……」
ハジメは少しだけテンションを下げながら答えた。
(初手で理想崩されたんだが)
「依頼はどうされますか?」
受付が聞く。
ハジメは一瞬考えてから言った。
「ゴブリン討伐で」
「またですか?」
「はい」
(いやまあ、他無理だし)
「さっきやったばっかだけど」
ハジメはリナをちらっと見る。
「二人なら、さっきより楽だろ」
「そうだね」
リナはあっさり頷く。
「じゃあそれで」
(軽いな!!)
受付が手続きを進める。
「はい、受理しました」
「ありがとうございます」
ハジメは項垂れながら書類を受け取った。
背後で酒を飲んでいたベテラン冒険者たちの「振られてやんの」という笑い声が、耳に痛い。
(ギルド到着後10分。パーティー結成の夢、終了)
それでもリナは、当たり前のように隣に出口へ向かおうとしている。
受付嬢は心配そうな顔をしながらハジメに言った。
「気をつけてくださいね」
「…はい。」
「ご武運を!」
(そんな事も言うんだけな。士気はあがらないけど!)
受付嬢に挨拶をした後ギルドを出る。
外の空気は少しだけ冷えていた。
(……よし)
ハジメは軽く息を吐く。
(パーティー登録はできなかったけど)
(依頼は受けた)
隣を見る。
リナはのほほんとした顔で歩いている。
(まあいい)
(まずは一回、ちゃんと成功させる)
「行くか」
「うん」
こうして。
ハジメの初パーティーは——(仮)
理想を一つ折られながらも
またゴブリン討伐へ向かうのだった。
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