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♯94 Heavy Rain 39
早速、艾は現実世界へと戻るため、目を閉じ集中し始めた──
(2人とも、ちょっといいか?)
残像もなく消えた艾を確認してから、爻は口を開いた。
(……“可能性の分岐点”て、いったい何なんだ?)
「私が説明するよ。この世界は、爻が住んでいる現実世界の過去なんだけど、単純に時間を遡っただけの過去とは違うの。私達が存在する世界の過去ともリンクした特異点……あらゆる世界において、この一点だけが交錯する特別な時間と空間。だから……ここを支配する者は “灰色の天秤” でなければならないの……」
(灰色の……天秤……)
『黒でもなく白でもない中立なる者。それが……灰色の天秤だよ』
ただの小さな街の小さな書店で働く、小さな女の子だと思っていた艾は、1人で世界の可能性を背負い、ずっと生きてきたのか──
爻は一切の不安や恐怖を、ここに捨てようと決めた。
(もう……ひとりぼっちになんてさせないよ。艾さん……)




