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君色レイニードロップ  作者: ひな月雨音


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96/113

♯94 Heavy Rain 39

 早速、よもぎは現実世界へと戻るため、目を閉じ集中し始めた──



(2人とも、ちょっといいか?)



 残像もなく消えたよもぎを確認してから、コウは口を開いた。



(……“可能性の分岐点”て、いったい何なんだ?)


「私が説明するよ。この世界は、コウが住んでいる現実世界の過去なんだけど、単純に時間を遡っただけの過去とは違うの。私達が存在する世界の過去ともリンクした特異点……あらゆる世界において、この一点だけが交錯する特別な時間と空間。だから……ここを支配する者は “灰色の天秤” でなければならないの……」


(灰色の……天秤……)


『黒でもなく白でもない中立なる者。それが……灰色の天秤だよ』



 ただの小さな街の小さな書店で働く、小さな女の子だと思っていたよもぎは、1人で世界の可能性を背負い、ずっと生きてきたのか──


 コウは一切の不安や恐怖を、ここに捨てようと決めた。



(もう……ひとりぼっちになんてさせないよ。よもぎさん……)

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