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♯86 Heavy Rain 31
雨の中、傘も持たずに店の軒下に立ち、いつ来るかも分からぬ爻を想い続ける艾──
ピチャッ……ピチャッ……。
雨と暗闇で視界ははっきりとしないが、確かに地面を濡らす雨だまりを踏む音が聞こえる。
「爻さん?!」
道路へ駆け出し、音のなる方に目を凝らす。
ピチャピチャピチャピチャ……。
複数の足音を確認した艾が、軒下へと引き返そうとしたその時──
「待って!」
艾は何者かに呼び止められた。
「はい。何でしょうか?」
『あのさぁ。変なこと聞くけど、私達何人に見える?』
「……………………あぁ」
雨なのか涙なのか、現実なのか夢なのか、艾の目に映ったのは……。
「…………3…………人です」
どしゃ降りの中、声を上げ膝から崩れ落ちる艾。




