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#75 Heavy Rain 20
(俺は艾さんを見ることが出来る。でも、自分がここにいると知らせる術がない……)
(艾さんは俺を見ることが出来ない。もちろん触れることも出来ないだろう……)
爻はどうやって自分の存在を知らせるか悩んでいた。
信号が変わり、行き交う人々とすれ違う──
ドンっ!
(あっ、すみません……)
「いいえ。こちらこそ」
軽く会釈して数歩進んだ爻は、ぶつかった感触を自分の手で確かめた。
(今……ぶつかった……人にぶつかった!)
これで、艾に存在を証明出来ると喜び、急いで振り返る爻。
(…………これは)
息をのみ、ゆっくりと眼球を動かす──
(…………やばい)




