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#48 震える
その日の夜のこと──
ボスを待たせたら怒られるからと、ハルは閉店業務を2人に任せ、足早に店を出た。
「ハル君、ウチで働くんじゃなかったのかな?」
「まぁ、ボスって人がどんな人なのか知りませんけど、わざわざ日本まで追いかけて来るんですから、よっぽどハル君が仕事の出来る人なのか、あるいは……そのボスが、ハル君に依存しているのか……」
ポケットの中で震える携帯電話──
業務が終わっていたこともあり、艾に断りをいれてから、誰からの着信なのか確認する爻。
「……ああ」
「どうかしましたか?」
「こっちも……ボスからです」
頭の上に “?” が浮かんだ艾は、爻が見せる液晶画面に表示されている名前を見て、口角が上がった。
「……あっ、万理華さん」
と、ただ画面を眺める爻に対し……。
「爻さん、出なきゃ!」
その一言でようやく、着信の文字をスライドさせた──




