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#47 ゾンビ
「……た、ただいまです」
電話しただけで、人はこんなにも憔悴するものなのかと、自分達の目を疑った艾と爻。
「よっぽどハル君は、ボスのこと怖いんだね? パワハラとか大丈夫?」
発言した爻の方をゆっくり向くと、一瞬ビクッとなり、すぐさま正気を取り戻したようだった。
「はっ! ……爻君か。サプライズは無しで頼むよ」
艾も心配そうな表情をしながら──
「ちょっとお部屋で休んできていいよ?」
(勤務中に電話が掛かってきたからと、持ち場を離れたと言うのに、何て優しい2人なんだ……ボスなら怒る。間違いなく怒る……)
「……お言葉に甘えて、少しだけ休んできます」
ハルは艾と爻に合掌すると、まるでゾンビのような足取りで、店の奥へと消えていった。
(爻……君はなんというか)
「泣いて……ましたよね?」
「はい。私にもそう見えました」




