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#38 ハル
ある日のこと──
「おはようござい……ます」
爻が出勤すると、見知らぬ男が艾と親しげに話していた。
「あっ、爻さん。おはようございます」
いつもより少し明るい艾の声色に、爻の心は何とも言えない気持ちを灯した。
「やあ、君が爻君だね? 今日からよろしく」
「あっ、どうも。よろしく……」
敵のいなさそうな笑顔で手を差し出すハル。
(……ん? “今日からよろしく”って言ったよな?)
「爻さん。突然なんですけど……実は、今日からハル君もここで、一緒に働くことになっていたみたいで……」
「少し前に、艾のおじいさんに頼まれてね。助けてやってくれって」
「……そうですか。で、その荷物は?」
出勤にしては大層な量の荷物が持ち込まれていた。
「ああ。部屋が決まるまで、しばらくはここに住むことになっているんだよ。空いてる部屋、好きに使ってくれて構わないって言われててね」
(……!)
爻の心のど真ん中に、雷に打たれたような衝撃が走った──




