♯最終話 君色レイニードロップ
「これは、通り雨かな……」
店の前で傘立てを持ち、空を見上げる爻──
「すみません。雨が止むまで、軒先をお借りしてもよろしいですか?」
「それでしたら、外は寒いですし、もし…………」
言葉に詰まり、時間が止まったような感覚だが、それは爻の前に “艾” が立っていたためだった。
「…………よも……ぎ」
「えっ? あのぉ……私、どなたかと似ているのでしょうか?」
「………………あっ! ええ。とてもよく似ていたので……その、すみません」
クスクス笑う “艾” の姿をした女性。
それを見て、爻は思った──
君色をしたこの雨粒が、自分の瞳から零れてしまわないように、ここに誓うと──
(今度こそ、君に降りかかる全ての厄災を……俺がなぎ払うよ。だから……)
♪ポロロロン──
♪ポロロロン──
お客様の来店を知らせるメロディが店内に鳴る。
「いらっしゃいませ──」
(…………みんな……ただいま)
最後までお読み頂きまして、心からありがとうございます。
ラストは皆様の想像で、それぞれ補完して頂ければ幸いです。
もっと普通の恋愛のお話が書きたいと願う、ひな月雨音でした──
それでは、また次の作品で(*^^*)