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♯104 店へと続く道
「万理姉もハル君も……艾のとこ忘れているんだろうな」
手に持っていた水を口に含むと、言葉と一緒にのみ込んだ。
「……店はどうなっているんだろう。艾に言われた物も探したいから、このまま行ってみるか」
お酒の入った万理華は、恐らくこんなに早くハルを帰す訳もなく──
「……ハル君には悪いけど、ちょうどいいや」
店までの道は薄暗く、街灯も頼りない光で照らしている。
その分、建物からもれる明かりが、道行く者にほんの少しだけ安心感を与えてくれるのだった。
「………………な、なんで?」
思わず駆け出す爻──
その明かりは艾の本屋の中からもれていた。