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♯102 Heavy Rain 47
ここは、艾が存在しない世界──
世界は変わらず、時を刻み続けている──
並行世界の娘も2人の茉莉も、何事も無かったかのように爻を見ている。
「…………俺が……可能性の守護者だ」
出来るだけ感情を殺し、この世界は自分のものであることを伝えると、何故ここにいるのか不思議がりながら、状況を把握する為、周囲を観察し始める娘と茉莉達。
「茉莉。“ターミナル”の危機は回避された。ここにいる理由はもう無いんじゃないか?」
「あっ……うん……そうだね」
『……かえ……るか』
艾が関わった記憶だけが無くなっているので、情報処理が追い付かないのだろう。
「……君も……ママのところに戻った方がいい。きっと心配してる」
「うん。私、ママのところに帰る」
(……本当に誰も艾のことを覚えていないんだな。でも、これで全ての世界が護られた)
雨は止み、暖かな日差しを体に浴びながら、爻は心の中の喪失感に寄り添う──
「……俺も戻って、艾が残したものを探そう」