第一章(3) 少女は目覚め、少年は終に神託を聞く
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「そら、起きた起きた。今日はあんたが主役なんだよ?色々と聞かせてもらいたいこともあるんだから。」
ゆさゆさ
そんなことを言って起こしてる私に気づきもせず昨日の女の子は安らかに眠っている。結界をくんでいる間もぴくりともしないで寝てたので、多分一度眠ったら絶対に起きないタイプだろう。
「……まるであいつみたいだなぁ。」
つい、そんなことを思ってしまった。これは、多分ちょっと嫉妬が混じってる。だって、昨日の二人はまるでおとぎ話の騎士と天使のようで、とてもじゃないけど、私が割っては入れるようには見えなかった。神様ってやつは意地が悪い。こんな横やりを入れてくるだなんて。
「んぅ……。」
そんな、つまらないことを考えている間に、どうやら女の子が起きたらしい。
「…………こんばんは。あれ?おはよう、かな?」
この子は敵だ。恋敵だ。でも、なんだろう、この保護欲を引き出す小動物系のお姫様的なかわいさはッ!昨夜と印象が違いすぎるんですが!!
「おはようであってるわよ。さ、寝間着を着替えなさい。」
やばい。ついリスとかに話しかける系の優しい声になってしまう。籠絡される前にさっさとあいつを起こしに行かないと。
やばいなぁ……このかわいさには勝てないわ。
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「やっと来たか。座りな、二人とも。ずいぶん長い話になりそうだ。」
僕らは言われたとおりに座った。ちょっと緊張してしまう。
「何から説明しようか。まずは神の代理者がどのようなものか、かな?」
「お母さん。その前に本のことでしょ。」
「ああ、そうだったね。」
「本というと、昨日エル君が話していたあれかね?」
「ああ。明らかに様子が違った。間違いなく彼女と関係がある品だ。」
「で、こういう品はたいてい所有者が手に取れば何らかの変化があるものだからやってみよう。というわけ。」
「じゃ、エル取ってきてくれ。」
エルは小走りで広間を出るとすぐに白い本を抱えて戻ってきた。霊的な力がそれに溜まっているのがなんとなく分かる。
エルがそれを女の子に渡したら、すぐに変化があった。彼女の身体が光り輝き、本がパラパラとめくれ、びっしりと文字が書き込まれていった。やがて、ゆっくりと光は収まり、彼女は口を開いた。
「また会えたね、少年。時間がないので早速自己紹介といこうか。私の名前はアルメティア。この世の理に関わる大天使達の一角、月を司るものだ。」
え?
「遅いんだよ。さっさと初めな。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ、マーサさん。なんでいきなり大天使が降臨なさっているんだ?」
口を挟んだのはルベルトさんだ。それもそうだろう。何がどうなってるのかさっぱりわからん。
「普通はな、祝詞をあげたときに諸々の説明を一緒にやるもんなのさ。だけど今回はそれがなかったからね、また降りてくると思ってたのさ。」
「予想通りさ。この子の能力は、私のような大天使を儀式無しで下ろせるレベルの強力な降霊術のはずなのに、どうして昨日は途切れたんだか。本の副作用かねぇ。」
「最後にちょっと聞き捨てならないことが聞こえたが、この際そんなことはどうでもいい。昨日の続きとやらをはやくはじめな。」
「はいはい。じゃあまずは神の代理者の話をしようか。これは、神様の代わりに使命を果たす役割を与えられた人間のことだ。ちょっとハードルの高いお使いみたいなものだよ。」
「その、使命ってのは何なんですか?」
「まあ、そこがはっきりしないと実感もわかないよね。それじゃあ神託の時間だ。少年、私と向かい合う位置に来てくれ。いや、もうちょっとこっちへ……。そうそう、それでいい。」
そして、真面目な顔をした天使は、淡々と神に託された言葉を語り出した。
『国王アルフレッドが禁忌に触れた』
『そなたは同行者とともに王都に向かえ』
『かの王の行いをこの目で見届けよ』
『そなた自身がかの王を裁くのだ』
「これで全部だ。」
「おいおい、これは今までと明らかに違うじゃないか。これはどういう」
「みんな面食らっていると思うが、使命の内容に対する話は後にしてくれ。これまでに例のない神託であることはこっちも理解している。だが、まだやることがあるんだ。」
「少年、神の代理者というのは無作為に選ばれるものじゃない。そのものが待つ本質、特性でもって選ばれるんだ。君の本質をはからせてもらう。」
「なに、難しいことじゃない。君が私と出会ったとき、どんな気持ちを抱いたか、それを思い出してもらうだけだ。イメージの具象化はこっちでやる。」
俺は目をつむって昨晩のことを思い返した。
『俺は昨日の天使様を見て、どうなった?そうだ、すげぇ熱い使命感がわいてきたな。彼女を見たらどう思ったっけ?きれいだと、そう思ったな。彼女の瞳はきらきらに光ってたんだ。あー他には……』
「もう大丈夫だ。目を開けてみ。」
そっと、目を開けると、鎧の腕が一本浮かんでいた。
「騎士の腕、か。これは不思議だねぇ。これは「受け取る」とか「継ぐ」という意味なんだが。」
『アルマは早すぎるよ。私がおきるまで待ってほしかったのに。』
突然、そんな声が聞こえた。いや、響いた。
『初めまして。ティアといいます。ごめんなさい、アルマをおろしているのでこんな話し方しかできないの。』
『そのうでは私があらわれた結果です。アルマ、ちょっともどるよ』
「え、ちょっと待って、わたし二度も降りられないから」『っと。なるほど意識の裏返しか。』
「そう。ちょっとだけだからがまんしてね。」
「おまたせ、アルト。あんまり時間ないから、はやあしになっちゃうけどごめんね。これが、私があなたに『授けるもの』だよ。」
そういって彼女が虚空から取り出したのは、一振りの剣だった。
「とある神話にとうじょうする魔剣レーヴァテイン。さだめられた運命と、これまでをやきつくす炎のしょうちょう。」
「ねぇ、アルト。」「わたしといっしょに、せかいを」『ッ!?いきなりなにするの、アルマ。』
「いやぁちょっとあんた言い過ぎだよ。ただでさえこの件には多大な干渉をしてるってのに。」
『……なんのこと。』
「ん?ああ、記憶が完全にもどってないのか。例の本にいろいろと書いてあるだろうから参考にしな。」
『……むぅ。』
「悪いね、状況がうまく掴めてないだろうが、先に説明だけさせてもらうよ。さっきから言ってるとおり時間が惜しい。」
アルマは白い羽を取り出して言った。
「これはあたしの羽だ。持っておいてくれ。それをあたしの意思表出器物として扱ったり、色々使い道があるから。」
「それと、ティアについてだが、例の本とリンクしたことである程度本来の性質を取り戻しているものの、まだ完全では無いようだ。詳しいことは本に書いてあるから、読んだこの子から聞きな。あ、勝手に読もうなんて思うんじゃないよ。色々事象があるんだから。」
「最後に、拗ねて黙ってるこの子は意識を落としておくから、目覚めるまでに朝ご飯でも作っておいてあげてくれ。一緒に飯を食うのが打ち解けるには一番いい。」
「全部了解したよ。ちょっとの間眠らせておくだけでかまわないからね。」
『え、ばか、なにをかってに決めて』
「じゃ、失礼するよ。」
ふっと少女から力が抜けた。眠るというより気絶に近そうだがまぁいいのだろう。
「じゃあ朝飯の支度をしようか。アルト、エル、手伝いな。」
「私もなにか手伝いましょう。アルトの朝飯はだいたい俺が作ってやってたんです。」
「それならお願いしようか。」
俺は、彼女と食べる朝飯がなぜかとっても楽しみだった。
本当に遅れてすいません。<(_ _)>
謝罪、言い訳、予告その他諸々は活動報告でしっかりと致しますので、後書きはこれくらいにさせて頂きます。




