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姫始めです、魔王様☆

 勇者(男)は悩んでいた。


「何だろう、新年早々、魔王(男)が何かやらかそうとしている気がする」

「え? またですか? そうですか……どうしますか?」

「むー、むー、むー」

「……魔法使い(男)、まったく何も考える気がないだろう」

「いえいえ、現在僧侶(男)の相手をするのに忙しくて」

「むー、むー、むー」


 そんな僧侶は、口に猿轡を布でされて手を前で縛られて、魔法使いに後ろから抱きしめられながら、キスされていた。

 現在、僧侶は顔を赤くして体を震わせていた。

 そんな二人を見比べながら、


「……何で見せ付けられているんだ? 俺は」

「誰かに見られていると、僧侶が恥ずかしがりますからねー。本当に可愛らしい」

「……要するに、何処か行っていて欲しいと、そういう事だな?」

「いえ、私はかまいませんよ?」

「……僧侶に後で殴られても知らないぞ?」


 そう告げて、勇者はその場所を後にした。

 まったく新年早々実にけしからんとは思う。

 思うのだが……。


「魔王でも来ないかな。そうしたらたっぷりと可愛がってやるのに」


 そう呟くが、何しろあの魔王は気まぐれなので、いつやってくるかは分らない。


 そもそも出会い頭で、お前の力を見てやるぞ……と言いながら媚薬をかけてくる魔王が何処にいる。

 一応、魔王には媚薬でめろめろになった勇者を倒して、自分の恋人にしてしまおうという野望があったらしいのだが……。


「まさか、この俺が、魔王を瞬殺した挙句、押し倒すとは思わなかった」


 勇者は嘆息する。

 欲望で闘争心が非常に高くなり、今までに無い力を発揮して魔王を一撃で倒してしまったのだ。

 しかもその後、涙目で逃げようとする魔王に襲い掛かって……。


「ひうっ! だ、駄目ぇ……そっちだめぇえ、ぁあああんんっ」


 以下略。


「大体あいつが俺好みなのが悪い。それがいかにも食べてくださいとばかりにうろうろして……」


 しかも無理やり襲ったと思ったら、責任とって城まで来ないと人間滅ぼすからな! とか宣言してくる。

 それ所か、時々、やっぱりお前を倒して僕のものにする! と襲い掛かってくるので勇者は返り討ちにして、たっぷりと勇者は魔王を愛してやるのだ。

 その時の可愛さを思い出して、勇者はむらむらしてくる。

 そもそも先ほど見せ付けられるのもまた、勇者の欲望を刺激する。

 なのに勇者の欲望の対象である獲物は、遠くはなれて何をしているやら……。

 そんな嘆息する勇者だったのだが、そこで、ふっと奇妙な赤い服が目の前に現れる。そして、


「どうだ、いつもよりも可愛く着飾ってみたぞ!」


 そう、魔王が嬉しそうに赤く派手な妙な服を着て現れたのだった。







 数時間前の魔王の城にて。

 魔王の部下が何やらもって、城に駆け込んできた。


「魔王様、手に入りました! 東の方の島国で着られているという“キモノ”という服です!」

「よくやった! でも赤くて花柄で、金の刺繍がされていたり……凄いなこれは」

「はい! ただ着方までは学び損ねたので、それっぽい形になりますがよろしいですか?」

「うんいい。新年は、こういう服を着て、“姫始め”なる行事があるのだろう!」

「らしいです。ただ、現地ではもう、あまりなされていないようで……」

「そうなのか……だがこの服を着て、帯を引っ張ってもらって、『あーれー』というのをやるのだろう?」


 良く分らないが楽しそうだったので、勇者も喜んでくれるだろうと魔王はわくわくしていた。

 けれどそんな魔王に部下は、


「……そうでしたっけ?」

「違ったかな。でももう調べている時間が無いし、とりあえず綺麗に見掛けを整えて、今日こそ見惚れている間に勇者を倒すぞ!」

「頑張ってください、魔王様!」


 そう部下に応援されながら、魔王は絶対めろめろにしてやるぞ! と、着物を着始めたのだった。






 現れて速攻で、魔王は勇者に倒されました。

 魔王は涙目になって、


「ひ、酷い。僕、こんなに頑張って綺麗に着飾ったのに、勇者は瞬殺……」

「……お前、出会い頭にいつも攻撃を仕掛けてきておいて、何を言っているんだ」

「少しは見惚れてくれても良いじゃん」

「……ああ、可愛いぞ。その姿、犯しやすそうで」

「! どうしていつもそういう事ばっかりなんだ。もう少し僕のこと……」

「可愛い可愛い」

「だからそうじゃなくて……んんっ」


 倒された魔王は、勇者に唇をふさがれた。

 そしてたっぷりと味わい、魔王がとろんとなった頃に唇を離した。


「ふえぇ……んんっ、くすぐったい……」


 そんな魔王の白い首筋に、勇者は獲物の味見をするかのように舌を這わせる。

 小さく魔王が震えるのをみて、勇者はそのまま意地悪く魔王の耳元で囁いた。


「それで、ここで止めるか、それとも俺に抱いて欲しいか選べ」

「! な、何言って……」

「魔王がそんなに嫌なら止めて上げるぞ? 嫌がる子を抱くのは趣味じゃないからな」

「こ、この……」

「それで、どうする? ……俺も、出来れば魔王に俺の事求めて欲しいな。愛しているから」

「う……うあ、う……」

「愛してる、魔王」

「うぐぅ……勇者の意地悪、馬鹿、変態……うぅ、僕も勇者の事、愛してる」

「……うん」

「だから、勇者としたいです」 


 と、恥ずかしそうに言う魔王がやけに可愛くて、勇者は魔王の顎を上げて、再び軽くキスをしたのだった。







 そんなこんなで愛し合った二人。

 そうお互い微笑み合い、どちらともなくキスをする。そして、


「でも、これじゃあ、“姫始め”が出来ないね」


 と、乱れた帯を見て、魔王がいうが勇者は少し考えて、


「……確か東の方の風習だったか?」

「うん。帯を引っ張って、『あーれー』とか……」

「……多分それは違っていて、こうやって魔王とするのが正しいと思うぞ」

「え?」

「だから、こうやってするのが正しい」

「……間違えた?」

「そうだな。でも可愛い魔王をたっぷりと堪能させてもらえたから俺は満足だ。それに、わざわざ俺に会いに来てくれたわけだし、こんな可愛い格好で」

「う、え……まあ……ね」


 と照れくさそうな魔王に勇者はキスをして。


 その後、魔王を倒した勇者は、魔王をお嫁さんにして、かつ、魔族と和平を結び末永く幸せに暮らしたという。

 めでたしめでたし。




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