魔王様のプレゼント☆
魔王は悩んでいた。
「人間共の世界には、カップル同士で祝う、クリスマスなるイベントがあるらしい」
そう側近に言うと、側近は嘆息してから、
「……それでそのようなお姿を?」
「うむ、クリスマスにはサンタクロースなるプレゼントを配るものが居るらしい」
そう言って、魔王は赤くてスカートの端の部分が、ふわふわの白い毛で覆われて服を軽く摘んでひらひらさせる。
俗物的な、ミニスカサンタの服だった。
「……その服をどうして選ばれたのでしょうか」
「うむ、店で恋人にプレゼントを渡したいので、サンタの服をくれと言うと、この服を勧められた。良く似合っているであろう」
「……ええ、本当に似合っております」
実際に似合っているのとこの服は流石に違うだろうという突込みから、側近は微妙に戸惑いながら答えた。
すると魔王はもう嬉しそうに、
「と、いうわけでプレゼントを勇者に渡してくる! 何せ勇者はこの魔王の城までの道のりの半分程度しか来ていないからな!」
「……プレゼントの箱から禍々しい気配がするのですが」
「大丈夫大丈夫、はっはっはー」
そんな側近の問いかけに、魔王はそのプレゼントを白い袋につめながら答えて、
「それでは行って来る!」
「……お気をつけて」
そして魔王は消えてしまう。
居なくなった魔王を見て、側近が呟いた。
「もうくっついてしまえ、アホらしい。……さて、私も帰って妻と子供とクリスマスだ」
明るくカップルがいちゃいちゃする姿を窓から見つつ、勇者は目の前の二組のカップルに目を移した。
「はい、あーん」
「あーん」
仲むつまじく、僧侶と戦士がいちゃついていた。また、
「もう、いやだってばぁ」
「いいじゃないか久しぶりに会ったんだから」
この町に残してきた幼馴染と再会した魔法使いがいちゃいちゃしていた。
部屋に広がる甘い空気。
そして程よくお酒が入った彼らの行動など、容易に想像がつくだろう。
ちなみに全員男である。
それはいいとして、その空気の中、勇者は延々と酒を飲んでいた。
勇者の飲んでいた酒の量はいつもと比べ物にならないくらい多く、それこそ現実と夢の区別がつかなくなるくらいの量だった。
だが周りのカップル達は気づかない。
ただいちゃいちゃするのみである。
そんなこんなでクリスマスパーティも終わりに近づいた頃、勇者が椅子を後ろに倒しながら勢い良く立ち上がる。
「勇者、様?」
そんな僧侶の疑問に目の据わった勇者が怖い笑みを浮かべながら、
「……カップルを抹殺してくる」
そんな何処かへ行こうとする勇者を戦士が引きとめながら、
「ま、待て、勇者、どうした!」
「俺が魔王といちゃいちゃできないのに、他の奴らはそろっていちゃいちゃいちゃいちゃ……ここから魔王の城までまだ数ヶ月はかかるのに……魔王だって襲いに来ないから会えないし」
時々どの程度強くなったか見てやろう、といって現れては倒されて勇者に美味しく頂かれているあの綺麗な魔王。
だが残念ながら、勇者は自分から会いにいけないのである。
しかもこのカップルがいちゃいちゃする中で、想いばかり募らされて、しかもここ暫く会っていないのである。
そのストレスが酒を飲んだ事で開放されたのだ!
「ふふふ、リア充め……リア充めぇえええ」
故に酒を飲んで暗黒面に落ちてしまった勇者は、そう叫んだ。
それを慌てて止めようとする仲間たちだが勇者は止まらない。
そしてもうすぐ部屋のドアだという所で、突然部屋のドアが開いた。
「めりーさんのくりすますー、さんたくろーすでーす」
そう場違いな明るい声で、勇者の獲物である魔王が現れたのだった。
「「「「……」」」」
「どうしてそろいも揃って、僕を見るのだ?」
「いえいえ」
「とんでもございません」
「折角ですので二人っきりがよろしいかと」
そう魔王という生贄を勇者に差し出して、仲間は逃げていった。それはいいとして、
「魔王、本当に魔王か?」
「うむ。勇者にクリスマスプレゼントを持ってきたのだ」
「……夢か?」
「うむ、夢のようであろう、なにせ僕がじきじきに持ってきたんだからな!」
「……そうか、夢か」
夢だと繰り返す勇者に、魔王は自分の持ってきたプレゼントを取り出した。
「ほら、僕からの勇者、クリスマスプレゼントだ」
魔王の顔が嬉しそうに輝いていて、それとは対照的に綺麗にラッピングされた箱からは黒い気配が立ち上っている。
それを見ながら勇者は、
「……禍々しい気配がするが」
「ふふふ、それはそうだろう! 千人の生き血を吸い、また持つものの精神を蝕み強くなるという強力な魔剣だからな!」
「いらんわ、そんな物」
速攻で答えた勇者に魔王は驚いた顔をして、
「ええ! 一応これ、伝説の武器なんだけれど本当に要らないのか?」
「いらない」
「そうか……ではこの防具は、その昔、何百人もの魔族や人間を虐殺した……」
「いらん」
「え! で、では……」
「……呪われた武器とか以外ないのか?」
「いや、大抵強力な武器なり何なりは呪われているものだからな……うむ……どうしよう、プレゼントがそうすると無くなってしまう」
そう焦る魔王に勇者は嘆息しながら、
「そうか……というか、夜遅くにこっそりプレゼントをくれるものじゃないのか?」
「そうなのか! しまった、そこまで僕も調べていなかった」
「そうそう。というかお前は何がしたいんだ」
「いや、強くなるプレゼントをだな、僕としてもこう……勇者に強くなって欲しいし」
そう照れたように頬を赤らめる魔王。と、
「……なんか本当に可愛いな魔王は。夢の中でも」
そう呟きながら勇者は魔王を抱き寄せて、腰に手まわして逃げられないようにする。
それに気づいた魔王は、顔を引きつらせながら、
「えっと勇者、あの……」
「……じゃあ、魔王からプレゼントを貰おうかな」
そう笑いながら勇者は言うと、魔王は無邪気に喜んで、
「え! 本当に! で、ではどの……」
「魔王の体で、たっぷりと楽しませてもらおうか。それがプレゼントだ」
魔王が逃げ出そうとじたばたするが、逃げられない。
一方勇者は、夢だから好きにさせてもらおうと、勇者は腕の中で顔を蒼白にさせた魔王に舌なめずりをしたのだった。
朝の光が差し込んで、勇者はぼんやりと目を覚ました。
「……頭痛い、二日酔いか……、だが良い夢を見たな……魔王とあんな、に……」
そこで勇者はすぐ傍で背を向けて眠っている、服を纏っていない魔王の姿が目に入る。
あれ、これ……夢じゃないのかと、勇者が顔を蒼白にさせる。
と、魔王が、勇者の方を向いて、
「んんっ」
小さく声を上げる。
昨日の情事の時につけたキスマークが、赤い花びらを散らすように白い肌に散らばっている。
勇者はむらっと来た。
そこで二重の瞼が小さく動いて魔王が目を覚ます。
「……んっ、勇者……おはよう……え?」
「ごめん、俺、もう耐えられない」
勇者は魔王に襲い掛かった。
「ま、待って、ま……」
「そうだよな……魔王をこのまま俺の嫁にしてしまえばいいんだよな」
「ええ! 違う、それは……」
「魔王は俺の事が嫌いなのか?」
「そ、そういうわけじゃ……」
「もう良いだろう。愛してるから、俺、もう魔王の事が欲しい。一生放したくない……」
「……僕、も……」
そう、その後もたっぷりとお互い愛し合って、それが切欠で魔族と人間の関係は良好になる。
こうして世界は平和になったのだった。
[おしまい]




