15.GWが明けたなら
今年のGWが終わった。
望月は、4,5日は一日、6日は半日、広場のイベントの手伝いをこなした。
「明ちゃん、おはよう。」
「望月さん、おはようございます!」
吉野の後輩明田も、望月と同じスケジュールでこのイベントの手伝いを乗り切った。
「望月さんも、明ちゃん呼びしてくれましたねー!」
「仕事中は、明田さんって呼ぶけどね。」
仕事中は、あくまで皆同じ様に「さん」付けで統一したい。外部の人が何らかで耳にした時、悪い印象を受けやすいからだ。
「望月さんに明ちゃんって呼んでもらえるなら、いつでも構いませーん!」
「おはよーございまーす!」
遅刻ギリギリで、吉野が席に着いた。珍しく身なりが乱れている。髪がボサボサ、目は真っ赤に充血していて、ワイシャツにはシワがある。
カバンも何だか、汚れていた。
「あー、俺、彼女と別れそうなんだわ。」
昼休みの食堂で、吉野は望月にそう言った。
「大学の時からの付き合いなんだろう?同棲までしてるのに、それが何で、今更?」
「GWに一泊二日で出かけたんだけど、それがもう大喧嘩になって。それで帰って来てそのまま……。」
——何だか、たまに恋愛相談で聞きそうな内容だ。
「喧嘩して……そのままなのか。同棲してるなら、吉野から謝るとかして……嫌な空間を一緒には過ごしづらいだろう?」
「それが……」
吉野が、ガクッとうなだれた。
「たぶん、実家に行ったんだ、あいつ。近いから職場に通うのは問題ない。」
半べそをかきながら、吉野は野菜がたっぷり乗ったちゃんぽんを食べていた。
——実家、近かったのか。
良いアドバイスができないまま、会話も盛り上がらず、珍しく時間が余ってしまった。
「吉野、気晴らしに展望ロビーに行かないか?」
「ん?良いけど?」
連休明けでうっかりしていたが、双眼鏡からおすすめスポットを教えてもらうのを忘れていた。ポスターを作り、それを展望ロビーの掲示板に貼るのが、望月自身で見つけた仕事である。
直通のエレベーターで展望ロビーに着いた。今日は晴天だ。
「双眼鏡の確認、俺の仕事にしたんだ。」
「ふぅん、確認ってどうするんだ?修理か?」
「いや……おすすめスポット探し。それをポスターにして、掲示板に貼るんだ。」
「おすすめスポット!?この市がおすすめだろ。」
「!!?」
望月は、一本取られたと思った。いや、それもそうだが……
「季節のおすすめを紹介するのも、良いんじゃないか?」
「まぁな〜」
まさか、吉野がこの市を丸ごとおすすめしてくるとは、全く思っていなかった。望月は、自分の発言が何とも小さく思えた。
「こんな事を言うヤツもいるんだ、双眼鏡よ。」
「何双眼鏡に言ってるんだー?」
「いや、こちらの事情だ。」
本当に、こちらの事情としか言えない。双眼鏡を覗いてみる。
ツツジは枯れ始めているが、くっきり見えた。




