表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/16

1.異動—違和感回収課に配属された日—

 「違和感回収課、所属です。」

 そう言われてもなぁ、と思った。

 何だその、わけのわからん課は。

 市民課の課長を務める今井は、かつての部下に対して、はぁ?と間の抜けた返事をしてしまった。


 当人も戸惑っていた。

 ——何だよ、違和感回収課って。

 望月はこの市役所に新卒で入所して三年目になる。配属通知を受け取ったとき、最初に思ったのは「見間違いか」だった。二度見しても三度見しても、そこには確かに「違和感回収課」と印字されている。


 そんな課名は、これまで一度も聞いたことがない。


 庁内イントラを検索しても出てこない。組織図にも載っていない。同期に聞いても、誰一人として知らなかった。


 極めつけに、配属先の人数は「一名」。

 つまり、自分だけだ。


 何をすればいいのか、まるでわからない。かつての上司にも、このまるでさっぱりわからない課に配属になった話をしたら、はぁ?と返事をされたわけだ。


 一人なのでせっせと動いて席を落ち着けなければいけない。二階上のフロア、そこは文化課と広報課が入っている所だった。


 「よぉ望月!」


 声をかけてきたのは、同期の吉野だった。

 「席そこ?俺、文化課なんだけど、望月は?」


 「俺?」


 少し言い淀んでから答えた。


 「なんか、"違和感回収課"ってやつ。」

 

 「……へ?」


 予想通りの返事だ。

 仕方がないからもう一度、「違和感回収課だ。」と言ってやった。


 「何だよそれ、意味がわからん。何すんの?」


 「俺もわかってねぇ。一人だし、上司はとりあえず吉野と一緒で文化課の課長らしい。」


 席を整えてから、文化課の課長のところへ挨拶に行った。上司は上野と言った。


 「まぁ、よくわからないから仕事聞いとくわ。」


 誰にどう聞いてくれるのかもわからないが、仕事がなくて困るような事態は避けたい。


 どんな基準でこの課に配属されたのか。

 そもそもこの課は、以前もあったのか。

 突然できた課なのか。

 色々わからない事だらけだが、とりあえず席はあるし、きっと仕事も何らかあるだろう。

 そう思うことにして、望月はデスクに腰を下ろした。


 パソコンを立ち上げ、特に意味もなく庁内メールを開く。

 新着はない。

 左斜め前の席では、吉野が電話対応をしている。

 少し向こうでは、広報課の誰かが笑っている。


 ごく普通の、いつもの市役所の一日。


 その中で自分だけが、少し浮いている気がした。


 ——コッ。


 どこからか、軽い音がする。


 ——コッ。


 このフロアに来てから、忘れた頃にこの軽い音が聞こえてくる。でも……一体どこから?

 音は小さい。だが、近くではない気がする。辺りを見回してみる。


 電話をしている者も、キーボードを打つ者も、誰一人として顔を上げない。


 ——他の誰も、気にならないのか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ