71話 西の国と魔導書
「それ、多分君等勘違いしてるんじゃないかな。」
クイードが少し首を傾げて言う。
「勘違いってどういうことだ。」
「僕達西の国軍はみんな魔導書を探しているけど、みんな自分のために探しているんだよ。」
「つまり、お前が魔導書見つけてもハニスんとこには行かんのか。」
「そう、ここの魔導書を見つけたら俺の物になるんだから。」
「ザックも自分で使うために探してるってことか。」
ソレイユとテオの魔導書を探す手が一瞬止まる。
「クイードは何叶えるんだ?」
「んー…、具体的に”これ”って言うのが無いんだよね。俺が叶えたいものを、ちゃんと見つけるまで魔導書は使わない。」
「この人本当に魔導書欲しいんですかね?」
ウィルがボソッと言葉をこぼす。
クイードは静かにウィルの方を見つめ、尋ねる。
「ウィルは何か明確に叶えたいものがあるの?」
「俺は…、、教えない。」
「え〜、どうして?」
「俺が叶えたいことは、魔導書がなくても叶えられるからだよ。」
「そうなんだ。」
「ソルやテオは叶えたいもの無いの?」
「俺は特に無いかな、今が一番楽しいし。」
「俺は…。」
テオが考えていると、上の階から大きな音が聞こえ、屋敷が少し揺れる。
「なんだ!?」
「上の階からやな。リン達大丈夫やろか。」
「君たち以外にも誰かいるんだね。」
「俺、見てくる。」
「みんなで行こ、一階はもうほぼ探し尽くしたしな。」
「行きましょう。」
クイードを連れて、ソレイユたちは二階へ上がる。
その頃三階では、ザックとライト、ニーニャが出会っていた。
ライトは歯をギッと食いしばる。
「あなたがザックですか?」
「そうだよ。お前は?」
「僕はニーニャです。あなたも、ここに魔導書を探しに来たんですよね。まっすぐ三階に上がってきましたが、下の階は良かったのですか?」
「一階は前に調べたんだよ。二階は嫌な予感がしたから、まだ見ていないよ。
…君、透視でも使えるの?この部屋から、階段や下の階は見えないけど。」
「あなたのその重い革靴の音でわかりました。もう一人不思議な靴を履いている人がいますね。和製の靴でしょうか。」
「君耳が良いんだね。もっと君のこと聞かせて。」
ザックがトントンとニーニャの方に近づく。
手元に何かが見えた。
俺はフォンシーレの出来事を思い出した。
重い体を動かして、ザックとニーニャの間に俺は入り、ザックを睨む。
ザックは俺の顔を見るとニヤリと笑った。
「どいてもらえるかな、少年。俺はこの猫ちゃんとお話したいんだ。」
「お前がフォンシーレの地下倉庫でソルさんにしたこと、忘れてないから。」
「ふーん。」
ザックは右手で持っていた物を俺の方に突き刺してきた。




