57話 きょうだい
ザックの手がソレイユに伸びた瞬間、ザックの手とソレイユの頭の間に稲妻が走る。
魔法の出発源は杖を持ったリュンヌだった。
白い木の杖は彼女の身長よりも長く、中央には黄色いリボンが巻かれている。
「ソルにまた呪いをかけようとしてるんでしょ。そんなこと、させないから。」
「あ、君たちもしかして双子?」
「関係ないでしょ。」
「お互いがお互いのために頑張ってるんだよね。優しいなぁ。
うーーん。君すごいことしてるね、そんなにこの弱っちいのを助けたいの?」
ソレイユもリュンヌも顔はしっかり見えないが、怒っているのは言うまでもない。
緊張が走る中、それを切る声が聞こえる。
「ソレイユは弱くないぞ。それに、この国の隊員はみんな強い。」
俺達は声の方に目を向ける。
箒に乗ったダイヤだった。俺の中に安心が漂う。
するとザックがダイヤに近づいて行く。
「どうしてここがわかったの?君も空間魔法が見える人なの?」
「俺は見えないぞ。ただ、俺の庭に害虫が入った気がして見に来ただけだ。」
「あれ、害虫って俺のこと?」
ザックはダイヤの目の中を覗き込む。
俺達はセメントで固められたように、動けなかった。
「君がダイヤだね。俺ザック。君の目はとても綺麗だ。」
「当たり前だろ。」
「俺、君に会いに来たんだ。少し二人で話さない?」
「嫌だね。」
「残念…まぁ、いいや。今日は帰るよ。」
ザックは正面門の方に歩いていく。
「またね。ダイヤ。」
「お前ら大丈夫だったか?」
「ダイヤ〜!魔力察知が働かなかったの!」
「五番隊からの連絡もないし、ビビったんだよ!」
ソレイユとリュンヌが箒から降りたダイヤに飛びつく。
「おぉ、よく頑張ったなぁ。お前らなら大丈夫って信じてたぞ。」
「ダイヤ様、どうやってここを見つけたんですか?気配を察知したとしても、こんなに広い庭からピンポイントでここを当てるなんて不可能なんじゃ。」
「あの魔法の膜、音も光も綺麗に隠せていたけど、匂いまでは消せなかったみたいだ。火薬の匂いがしたから、それを辿っただけだ。」
「ダイヤさんって城内の匂いまで空間魔法で分かるんですか!?」
「少しだけどな。強いのはすぐ分かるけど。」
「ま、まぁ!それを狙って爆弾投げたのよ!」
「絶対嘘だろ。あの時空間魔法に気づいてなかったし。」
「でも、やっぱりライトは空間魔法が見えてるんだ。」
「多分そうかも?みんなが見えないものを説明するのは難しいんだけど。」
「俺も自分の空間魔法なら見えるから気持ちはわかるぞ。俺が見えるのは幾何柄のステンドグラスみたいな模様だったかな。」
「そんな感じ。」
「さぁ、時間も遅いし中に入ろう。まだ話すことがあるなら城内で。」
ダイヤにそう言われ、俺達は城の中へと戻った。




