52話 情報共有
ヴァイオレットが数枚の紙束を持ってフワフワとスカートを揺らし、こちらに近づいてくる。
彼女はテオに紙束を渡すと、またフワフワと食堂を出ていった。
「お、三番隊からの情報か!?」
「多分な。」
テオが紙の文字を読みながら、机に身を乗り出すソレイユを座らせる。
「どうやら、あの銀髪はザックっていう名前らしい。西の国軍の幹部やねんて。」
「魔力や武力が強いのも納得だわ。」
「でも、最近って言うても十五年くらい前か。そん時に新しく西の国軍に入ったっぽいな。」
「それなのに幹部なのか!」
「どういう意味ですか?」
「西の国の軍幹部って大体は王に近い血筋の貴族が担ってんねん。何十年も何百年も前から親から子へ、その役割を受け継ぐって感じで繋がっててんけど。新しく入った幹部ってなるとハニスさんの遠い親戚が新たに見つかったってことなんかな?」
「西の国の一般層の一人が実力で上り詰めたってのも考えられるんじゃない?」
「一般市民が強い魔法を使う…。なんか、3人の魔法使いのミランダみたいですね。」
俺がそう言うと、みんながハッとする。
「それ、あるかもな!」
「え、!?」
「ミランダの子孫説ってことですか。」
「で、でも赤の魔法使いって何百年も前にあったっていう全面戦争で全滅しちゃったんだよね。
今は赤の魔法使いの血筋も途絶えたって学校で習ったじゃない。」
「確かにそうだな。でも、ミランダみたいに努力して強くなったやつかもしれないってのは捨てきれないな。」
赤の魔法使い…赤髪の魔法使いということなのだろうか。
でもザックは銀髪だったし、ミランダの子孫というのは納得できないな。
もし彼がミランダに近い存在なら少し話をしてみたいと思ったが、前に会った彼の様子から俺に何か情報を話してくれそうにはない。
「その他の情報やと、魔法学校に通ってたらしいで。ランクは不明やけど。」
「見た感じ、結構若い人だったし、高ランクで卒業したならダイヤが何か知ってるかもな!」
「ダイヤに心当たりないか聞いとくわな。
経歴の部分は、ほぼ真っ白やな。不明ってことなんか、情報不足で載っけてないんかはわからんけど。」
それ以外の情報は特に何か分かる情報でもなく、テオは紙束を机に置いた。
「もうちょい欲しいとこやけど、西の幹部ってなると難しいなぁ。」
「でもかなり話が進んだんじゃない?ダイヤに聞いてみて、新しい情報がまた手に入れば集まりましょう。」
「近々戦わないといけないかもしれないしな。やられっぱなしは嫌だしな!」
「テオさんその資料少し見せてもらってもいいですか?」
「あぁ、ええよ。欲しかったらウィルにあげるで。」
ウィルは紙束を受け取り、内容をよく見る。
何か彼の中に引っかかる部分があったのだろうか、丁寧に書かれたヴァイオレットの字の上をウィルの目が走る。
俺も顔をのぞかせ、資料を一緒に見た。




