40話 音がなる方へ
「この3人に会ったことがある人ってどれくらいいるんだろう。」
「この話って随分前にあったことなんだろ?会うってなると純血の人とか、長命種族とかなんじゃないか?」
「ダイヤ様とかリリィさんなら色々知っているかもね。この前会ったサイモンさんもなにか知ってるかも。」
「純血?」
「ライトの地域に純血っていなかったの?」
「そうだな。俺の住んでたところにはいなかった。」
「純血なんて、もともとたくさんいる種族じゃないし、知らない人のほうが多いんじゃないか?」
「そうなんだ。じゃあ説明するね。」
メグはポシェットから紙とペンを取り出す。
「まずトヤヘリノ周辺地域の人族は先祖をとっっっても遡れば、天人や魔人になるの。」
「魔人って二次試験のときに邪魔してきた奴らだよね?」
「そう。でもあの人達はほとんどが魔人と人間のハーフ。もとの魔人からは程遠い存在になっているわ。」
「そうなのか。それは俺も知らなかった。」
「ウィルってほんとにトヤヘリノ出身なの?
まぁ、いいや。獣人や竜人、妖精は魔人の派生、魔力を持たない人間は天人の派生になるの。」
メグがわかりやすいように紙に情報をまとめる。
「そして、天人と魔人のハーフを純血っていうの。耳が長く尖っているのが特徴だよ。
純血のほとんどは、何百年も前にあった天人と魔人の全面戦争でいなくなっちゃったんだけどね。ちなみに耳が尖っている天人や魔人も純血って呼ぶんだよ。」
「天人と魔人で血が混じってるのに純血なんだね。」
「魔力が濃く、強い血を純血って言うらしいよ。これだけどこかで聞いたことある。」
「なるほど。ダイヤやサイモンさんは持っている魔力量が多いんだな。」
今の話から純血という種族は長命なのだろう。やはりダイヤは見た目以上に年を取っているということが改めてわかった。
長命種が強キャラというのも納得だ。
色々知ることはできたが、3人の魔法使いと魔導書の関係は結局わからなかった。
さっきの絵本から、おそらく長身の白髪はルカだと思う。
魔導書の記憶で見たシルファーも耳が尖っていたし、ルカも耳が尖っていたから、彼らは純血なのだろう。
シルファーとルカは、ダイヤとサイモンに似ているような気がしていたが、見た目も異なるし、近くにいたときに感じたオーラが違う。
親戚という線もあるが、ただの他人という可能性も高い。
ここがはっきりすれば魔導書探しをスムーズに進める鍵となるかもしれない。
そんな事を考えている俺の眉間にはシワが寄っていたらしく、ウィルに眉間をつつかれた。
「そんなに難しい顔して、何考えてるんだ?」
「色々聞いて思ったんだけど、もっといろいろな人から情報を集めたほうがいいのかなと思って。
今日トヤヘリノの一般常識的なものを知れてもっと色々知ったほうがいいと思ったんだよね。」
「それなら、ダイヤ様やリリィさんに聞くのがいいと思うわ。」
「たしかにそうだな。リリィさんならメグが頼めば来てくれるんじゃないか?」
「そうね。連絡してみるわ。」
二人とも協力的で優しい。
俺が異世界から来たことを打ち明けてもいいかもしれないが、今はやめておこう。




