首が、
「深夜の公園に、生首が現れる。」
そんな噂がSNSで広まっていた。
写真はない。
動画もない。
ただ、「見た」という書き込みだけが増えていく。
大学生の悟は、作り話だと思った。
「確かめればいい。」
そう言って、毎晩同じ公園へ通い始めた。
【一日目】
普通の夜の公園。
街灯の下では酔っ払いが笑い、犬の散歩をする人が通り過ぎる。
噂らしいものは何もない。
「やっぱりデマか。」
悟はそう思い、帰宅した。
【二日目】
淡い月明かりの公園。
昨日とほとんど同じ光景。
酔っ払いもいる。
ベンチにはスマホを見ている人。
ただ、一つだけ違和感があった。
滑り台の下で、誰かがしゃがんでいる。
近づこうとすると、その人は立ち上がり、暗闇へ消えていった。
「気のせいか。」
悟はまた帰った。
【三日目】
風が強い夜だった。
公園には誰もいない。
静かすぎる。
その時だった。
「……。」
小さな音。
ボールでも転がるような音がした。
コロン。
コロン。
音だけが近づいてくる。
悟は街灯の先を見つめた。
暗闇から丸いものが転がってくる。
サッカーボール。
……ではなかった。
人の首だった。
目は閉じている。
髪が地面を擦りながら、ゆっくり転がってくる。
悟は息を止めた。
次の瞬間、その首の目が開いた。
「見つけた。」
そう笑った。
悟は悲鳴を上げて逃げた。
振り返る勇気はなかった。
翌朝。
ニュースにも事件はない。
公園もいつも通りだった。
「夢だったのか。」
そう思い始めた頃、スマホに通知が届いた。
昨夜、自分で録画していた動画だ。
震える手で再生する。
最初は何も映っていない。
しかし最後の数秒。
画面の端に、自分の後ろを転がる首が映っていた。
そして、カメラへ顔を近づけ、小さく笑って言った。
「今日は、首だけ。明日は、お前だ。」
悟はその日以来、姿を消した。
警察は家宅捜索をしたが、部屋にはスマホだけが残されていた。
最後に開かれていた動画には、もう一人映っていた。
画面いっぱいに笑う生首。
そして、その後ろには――
首のない悟が、公園の入り口に立っていた。




