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ミリアとコータ  作者: hachikun
宇宙のエージェント研修?
28/39

000-異星の海水浴場

ご無沙汰しております。

画像生成AIでアマルー族っぽい画像を作りまくって遊んでました hachikun でございます。

ミリアがボルダに移住して、しばらくしての話になります。

最初の3話をまず公開し、あとは定期公開で進めます。公開時刻としては、今回はお昼を想定しています。


 青い空。

 灼熱の太陽に、ぎらぎらと輝く美しい海。

 子供たちがキャーキャーと元気に遊んでいる白い砂浜。

 元気に駆け回る子供たちは、そのほとんどが大きな耳としっぽをもち、二本足で立ち上がった猫のような姿だ。

 人間の子供もいるが、そちらも猫耳やしっぽの生えた子供が多い。

 それらの子供たちは下着も、水着すらもつけず、すっぽんぽんでワーワー、ぎゃーぎゃーと騒がしく水辺で遊んでいる。

 少し水辺から離れた風通しのよい場所にはいくつかパラソルがあり、そこには大人たちもいる。

 それらも、ほとんどがやはり人間サイズで二本足の猫──つまりアマルー族だった。男も女もいる。

 驚くべきことに、彼らも全員が全裸だった。

 

 惑星シャク=コターン。

 アマルー王家領にあり、対外的にはその座標すら非公開の海の惑星。

 ここは、その海の星にいくつかあるビーチのひとつ。

 涼しい海風の吹き抜ける熱い砂浜。

 真っ白な砂浜と灼熱の太陽を、それを楽しむ者たちがいた──すっぽんぽんで。

  

「……すっごいねえ」

「恥ずかしくないのかな?」

「んー、自前の毛皮があるから?」

「わたしら、毛皮ないじゃん……ちょっと近寄らないでよ!」

「お、おう」

 そこにいたのは、地球からやってきたばかりの少年少女のうち年長組の4名。

 残りは低学年だったり肉体的に未熟で、アマルーのちびっこたちに混じり遊んでいる。

 

・♂アキラ・ワタナベ 12歳 最年長。 坊主頭。

・♀アヤネ・トミザワ 11歳 ショート髪。

・♀サリナ・イシガミ 11歳 きれいな長い髪。

・♂ユウキ・トミナガ 11歳 調髪。

 

 日本人の彼らがどうしてこんな場所にいるかといえば、それは彼らの『先生』が原因だった。

 敬愛する彼女らの先生にして命の恩人、エムネア・パルティ・アマルー。

 ご存知の方はこれだけでわかると思うが、彼女はアマルーの王族である。

 どうしてアマルーの王族が日本の田舎で先生していたか、というのはとりあえず置いといて、問題はむしろ救出後にあったのである。

 

 実はエムネア嬢、住所不定無職だったのである。

 なんでやねん。

 王族なのに。

 

 順をおって説明しよう。

 そもそもエムネア嬢が自分の船で、しかも地球くんだりまでやってきたのは、失職ついでのリフレッシュ旅行だった。王族らしくまっすぐな性格の彼女は子供らに慕われる反面、どろどろした大人社会では微妙であり、それが原因で失職することがあった。

 だがやっぱり王族の彼女は、それはそれで仕方ないと思っている。

 そんな彼女なので、失職イコール自由と考え、仕事をお休みにして貧乏旅行をしようと考えた。

 地球の話は小さい頃から、敬愛する女王陛下や神殿のメル嬢に聞いていた。つまり憧れの地であり、彼女が地球を目的地に選んだのもむしろ当然だった。

 長年使っている愛機はおんぼろだが、かける時間を惜しまなければ恒星系から恒星系へと、自然のエネルギーをチャージしながら旅することさえできるのだ。

 旅立たない理由はなかった。

 

 計算違いがあったとすれば、アマルーには地球政府との国交も何もなかったこと。

 まぁそのおかげで子供出会えたのだけど。

 そして地球が壊滅し、その子供らを連れて逃げ出すしかなかったこと。

 

 何が言いたいかというと、臨時教員でもらったお給料は日本円であり、当然、銀河ではただの紙くずでしかないし、そもそも日本が存在しない今となっては、どこも換金してくれなかった。

 最悪それもありうるとは思っていたが、本当に日本でのそれがタダ働きになってしまったのは痛かった。

 助けた子供たちは12名。

 どう考えても、この時点で無職の元先生が養える人数ではない。

 アヤカひとりならともかく、さすがに12人は貧乏独身世帯のエムネアには完全にキャパオーバーだった。

 

 これは無理だと即断したエムネアは、ただちに行動開始した。

 まず全力でオン・ゲストロのスタッフに頭をさげ、急ぎ救援食料と燃料を譲ってもらった。

 ここでエムネアは迷わず最終手段まで使った。王族名つまりアマルー名を使ったのだ。

 人道支援以上の余裕がなく渋るスタッフに、通信機を借りてアマルー宮内庁に連絡をとった。

 アマルー宮内庁の支援を彼らにとりつける代わりに、緊急帰国に必要なものを揃えてもらったのだ。

 そして全速力で帰国すると、その足で子供たちも連れて宮内庁に飛び込み土下座したのである。

 エムネアです、すみません助けてくださいと。

 

 だがそのあとはむしろ驚きの連続でもあった。

 エムネアの移動中もアマルー宮内庁はオン・ゲストロと連絡をとりあっており、帰国した一行は、待ち構えていた宮内庁の船にそのまま収容された。まさか宮内庁に、そこまで暖かく迎えられるなんて想像もしてなかったエムネアは、目を白黒させた。

 まぁ保護するかわりに愛用の船は宮内庁所属に変えられたし、こっそり借りていたアパートも始末されたが。

 どうやら当面、自由はないらしい。

 さすがのエムネアも苦笑いだった。

 

 宮内庁の反応はどこまでも好意的だった。

 異星人の子供らを「ひとの子でしょ、しかもあなたの教え子だ」と笑顔でウエルカム。

 子供たちもろとも全員まとめて、ここシャク=コターンの神殿の保護施設と学校に正式に保護してもらったのである。

 神殿の横に学校がつくられ、エムネアはそこの先生第一号に任命された。

 めまいがするほどの好条件だった。

 エムネアは担当に頭をさげまくった……そんなエムネアに宮内庁の面々はとても、とても優しかったが。

 

 当人は知らないことだけど、実はエムネアの評価は王家でも宮内庁でも高い。

 アマルー王族、実は怠け者やサボり魔が多い。

 たしかに贅沢など誰もしないが……。

 そんな状況の中、せっせと教職にせいをだすエムネアの評価は当人が思う以上に良かった。

 しかも、めったにない珍しいわがままが他者の救援、しかも養女のおまけつき。

 あははは、貴女、本当によい意味で王族よね、ええ、すてきね、すぐやりましょう。

 担当官は愉快そうに笑い、ただちに受け入れ手続きをしてくれた……それでもエムネアの自己評価は低かったが。

 

 そんなエムネアたちだったが、ひとつだけ問題があった……それが衣服に関する文化摩擦だった。

 ぶっちゃけ、アマルー族は服を着ない。

 知的種族としては珍しく立派な毛皮があるため、衣服は生殖器など、弱点の保護に使われている。

 それでも普通の授業はまだいい。問題は体育だ。

 なんとアマルーの教育要項では、体育の授業は原則、全裸指定だったのである。

 

 言いたいことはわかる。

 子供なんだから変な飾りなどつけず、まっぱで元気にもりもり遊べというわけだ。

 確かにわかりやすい。

 他人の子でも拾い子として実子と共に育て、アルカ(人間)も「おや、人間の子かい」と一緒にかわいがる。

 そんな、優しいアマルー族らしい考えだった。

 

 小さい子は問題なかった。普通にアマルーの子たちと、すっぽんぽんで遊びまくった。

 ただ、年長組四名はそうはいかなかった。

 すでに第二次性徴がはじまっていたのだ。拙いながらも精通も生理もある。

 そんな状況でも全裸なのだ。

 問題がないはずがない。

 

 だが、それ以上に別の問題が発覚した。

 いうまでもないが、色気づいた男子たちが反応してしまったのだ。

 男子ふたりが自分たちを見て勃起させたのを見て、女子二人は顔をこわばらせた。

 そんなわけで、ひとつのパラソルのあっちとこっちに別れ、男子ふたりはドキドキ、女子ふたりは身体を見られないよう隠していた……というわけだ。

 

「もう、なんで水着禁止なのよぅ。おかしいでしょう?」

「しかも参加強制とか。なんでそこまで脱がせたがるの?」

「それはね」

 女の子たちのぼやきに、反応した女の声があった。

 振り返ると、そこには全裸の若い日本人女性──と思われる容姿の女性がいた。

 若い。贔屓目に見てもせいぜい二十歳、下手すると未成年と思われそうな見た目だが、醸し出す雰囲気はどうみても子供どころか若者のそれですらない。

 傍らに金髪白人系の女性をひきつれている。

 だけど。

(……日本人じゃない?)

 一部の女子は、その女性の違和感を嗅ぎ取っていた。

 たとえれば、それはエクアドルやチリなどを旅行した日本人が、どう見ても日本人にしか見えない現地人を見た時の違和感そっくりだった。

 見た目は日本人そのもの。なのに中のひとのメンタリティは縁もゆかりも無い外国人。そういう人を見た時の特有の違和感だった。

「それは……何ですか?」

 女性の続きを少女のひとりがうながした。

 しかし女性はほほえみ、金髪女性からお菓子のようなものを受け取ると、おもむろに四人の元にズンズン進んできた。

 少女たちは目を少し開き、そして男子2名は全裸の女性接近にドキドキしていたが──しかし。

「はい」

「あむ、ん」

「お?」

「ふ?」

「ヌ?」

 四人の口に次々とお菓子がつっこまれて、わけもわからずに四人はそれを食べ始めたのだけど。

「「「「!?」」」」

 あまりのおいしさに、四人は目を剥いた。

 ──しかも。

「ああうまい、なあ、ところでふたりとも、しばらくここにいるのか?」

「え?ええ、私はいるけど、あーやは「ん、ここにいるナリ」……だって」

「わかった、ユウキはどうする?」

「オレもいくよ」

 年長者であるアキラが問いかけると、サリナが答えて──すかさずアヤネが追従した。

 

 だが問題はそこではない。ユウキとアキラ、つまり年長男子ふたりの態度だ。

 さっきまで完全に自分たちを意識しまくっていた二人が、急にコロリと態度を変えている。勃起もいつのまにか収まっていた。

 二人が立ち去ったあとに、黒髪と金髪のふたりの女性は微笑む。

「びっくりした?」

「あ、はい。えっと???」

 わけがわからないふたりに、女性は微笑んだ。

「ごめんなさいね、担当が手配を忘れていたみたい。

 今のはね──『家族のお菓子』っていうのよ」

「家族のお菓子?」

「ええそう。家族には変な気持ちにならないものでしょ?」

「え……あっ!」

 ふたりはその意味を知り、そして、立ち去った少年ふたりの後ろ姿を見た。

 少年たちは元気に、子供たちの中でも自分らより年上っぽい少女たちの元に突撃し、軽くいなされている。

 しかしその動作も、さっきまでのギクシャク感がない。普通に楽しそうだった。

「アマルーにとっては裸でも問題ないけど、わたしたちにはちょっとハードル高いものね。

 でも、だからって両者を隔離するのも教育上よろしくないでしょう?

 こういう時のために考えられたお菓子なの。

 ひとくち食べておけば、家族で遊びにきているような気持ちでいられるってわけ」

「すごい……まるで魔法みたい!」

「うふふ、そうね。魔法みたいよね」

 クスクスと意味ありげに女性は笑った。

 

「アマルー領に限らないけど、銀河文明はちょっと性的な部分がユルいの。気をつけてね」

「ありがとうございます、ところで地球の方ですか?」

「え?わたし?」

「はい」

「元々の生まれは確かに地球だけど、思い出は何もないの、ごめんなさいね。

 ああ、わたしはメル・エドゼマールよ、メルでいいわ。で、この子は」

「私はリンといいます、メル様にお仕えする者です。よろしく」

「よろしくお願いします。わたしはサリナです」

「アヤネです、よろしくナリ」

「ウンウン、よろしくー」

 男子ふたりがいれば激しく反応したのだろうけど、女子ふたりでは普通に挨拶するだけだった。

 ふたりは挨拶しあって、そして男子たちが座っていたところにメルとリンが座った。

「お仕えする……ええっと、メルさん、さま?あの、どういう方かうかがってもいいですか?」

 それにリンが反応しようとしたのだけど、それをメルが片手で軽く遮って続けた。

「丘の上にある大きな建物、あれが何か知ってる?」

「あ、はい。神殿ですよね」

「わたしはあそこで仕事してる巫女なの。一応、それなりにベテランのつもりだけどね」

「え、巫女さんなんですか?」

「ええそう、エムネアちゃ……コホン、エムネアさんが帰ってきたでしょ?ちょっと目覚ましをかねて出てきたってわけ」

「はぁ、なるほど」

 どうやらエムネアを「ちゃんづけ」で呼んでいるらしい……言い直したが。

 生徒であるサリナたちにとりエムネアは『先生』。その先生を、普段はちゃんづけしている女性。

 日本人的な容姿のうえに童顔のメルは、せいぜい中高生くらいに見えるが……見た目通りの歳ではないということか。

 判断に困ったサリナが首をかしげていると、珍しくアヤネの方が質問した。

「エムネア先生のおともだち、ですか?」

「敬語はいらないわ。うん、そこは複雑なんだけど……まぁ知り合いではあるかな。

 わたしもリンも、元々はここの者じゃなくてね。最初の頃、彼女にどれだけ助けれたか」

「あ……」

 

 メルが発言に含んだ事実に、サリナもアヤネもすぐ気づいた。

 つまりメルはサリナたちに、わたしたちも似たようなものだと言いたかったわけだ。

「メル様は血縁こそ地球人ですが事情がありまして、現地の記憶も、そして地球の名前すらもありません。

 アマルー王家の方にこの星に連れてきていただいて、巫女に就業して今に至ります。

 私はボルダ人ですが、わけあってメル様にお仕えするため一緒に参りました。

 以降ずいぶんになりますが、エムネア様にも親しくさせていただいております」

「リン、自己紹介くらい自分でさせてよ」

「だめです、ここに来たばかりの子供たちに、メル様のマニアックなお話は混乱をもたらすだけです」

「うぅ」

 困った顔をするメルに、リンはすこし微笑み、そして少女ふたりに目だけでなく顔も向けた。

「メル様は『風渡る巫女』という特別な立場で、本来の地位はここの神殿長よりも上になります」

「え、それってもしかして、すごく偉いんじゃ……」

「そうですね、えらいです。

 ここの神殿は分類としては『キマルケ式神殿』というのですが、このキマルケ式神殿を本来の意味で『稼働』させられるのは今や銀河におひとりだけ、メル様だけなのです」

「ちょっとリン、なんでもかんでも話さないで!」

「この子たちは大丈夫ですよメル様」

「そうじゃなくて!そこは!わたしが話すつもりだった!」

「あー、それはすみません」

 

「……神殿を『稼働』させる?」

 

 その言葉に違和感をもったのは、サリナでなくアヤネの方だった。

 しかもそれだけでなく、思わず疑問を口にした。

 でもそれは同時に、サリナにとっても驚きだった。

 アヤネの言動を信じられないような目で見ている。

 それは、とても珍しいことだったから。

 

 アヤネは昔から虚弱で引っ込み思案で、サリナに張り付きっぱなしの子だった。

 もともとはアヤネのほうが年長者なのだけど、常にサリナにべったりで、どっちが上かわからないほどだった。

 たまに語尾にまぜる「ナリ」というアニメキャラクタのような言い方が、いわば唯一の自己主張……そんな子だった。

 

 そんなアヤネが率直に疑問を口にして、さらに好奇心いっぱいの態度をとっている。

 サリナが驚くのも無理もなかった。

 

 そしてその瞬間、顔に喜色を浮かべたのは二人ではなくメルの方だった。

 いそいそとポケットから何かを出した。

「アヤネちゃん、これちょっと持ってくれる?」

「あ、はい」

「!?」

 言われるままに小さな何かを受け取る、これもアヤネには珍しい行動だった。サリナがそれに気づいて目を丸くした。

 手渡されたのは、ボールペンの芯のような小さく細い何か。

 しかし、それはアヤネの手に渡った途端、キラキラと電池でも入っているかのように輝きはじめた。

「あの、これって?」

「やっぱり!」

「お姉さま、これって」

「うん、新人巫女ちゃんだよ。言ったでしょ、この子のことだよ!」

 やったあ!と子供のような満面の笑みになるメル。

 メルは不思議そうに光るものを見ているアヤネに近よると、よしよしと頭をなでた。

「え、あの」

「アヤネちゃん、これはね、巫女の卵をみつける道具。巫女の素質に反応して光るんだよ」

「巫女の……素質?」

「うん、そう。アヤネちゃん、すっごい巫女になれるよ!」

「ええっ!」

 サリナが驚くより前に、メルの横にいたリンという白人っぽい女性の方が反応した。

「待ってくださいお姉さま、彼女は地球人ですよ?」

「ちっちっち、リン、検知してみて。小さいけどコア反応あるよ。ほら」

「え……ほ、ほんとです、そんなバカな!さっきまで何もなかったのに!」

「そりゃそうでしょ、地球にコア使いがいないんだもの。

 使わない、刺激も受けないものが稼働するわけないじゃん。

 まぁもちろん銀河同様、もってない人は持ってないけどね」

「え、地球にコアもちがいないって、そういうことなんですか?」

「知らなかったの?」

「知りません!」

「はぁ、巫女の才は肉体でなく魂にあるの。リン、聖典読んでないね?

 地球人だからって本当に才能がないとは限らないよ?」

「すみません、キマルケ語はなかなか難しくて」

「ボルダ語訳もあるよね?」

「う」

「まったくもう、あの優秀な姉弟の成れの果てとは思えないポンコツぶりだわ、ホント」

「失礼な、たしかにあの姉弟の成れの果てだと、かかわった人は皆、そう言いますのに」

「ええ、そりゃそうでしょうよ密航姉弟」

「いつの時代の黒歴史ですか!」

「いやいや超優秀じゃん、ボルダの大神官も、オン・ゲストロの総帥も手放しで褒めてたじゃん」

「いいかげん忘れてください。それよりメル様」

「ああうん、そうだね。話をすすめよう」

「はい」

 そういうと、メルはアヤネの前に立った。

「……」

 アヤネはポカーンとしていたが、でも、彼女の中で何かが動いたようだった。

 そんなアヤネの顔を覗き込むようにしてメルは続ける。

「アヤネちゃん、あなたには素質がある、私たち巫女が求める人材としての素質がね」

「素質?」

「そう素質!ねね、いいから一緒にきて!ね!ね!」

「お姉さま、せめて語尾に『はてな』をつけてください!そんな強引な勧誘してm「いきます」……へ?」

「アヤネ!?」

 ハッキリと意思表示をしたアヤネ。

 メルとアヤネ本人以外の、全員が驚いてアヤネを見ていた。

 そしてメルもうなずき、そしてアヤネの目をまっすぐ覗き込み言った。

「うんありがとう、じゃあ念の為だけど、改めて確認させてね。

 私たちのところにくるということは、わたしと同じ巫女になるってことなの。これは理解して納得してくれたんだよね?」

「はい」

「ありがとう。あと、もうひとつね。

 貴女には確実に素質があるけど、もちろん、それはあくまで素質。なんの努力もなく巫女になれるわけではないの。

 ここで断言できるのは、たったひとつだけ。

 あなたには素質がある。

 それもただの巫女じゃない。

 ゆくゆくは、わたしの隣に並べるほど、超強力な素質がね」

「……」

「その素質は間違いないし、そこに進むための道も教えてあげる。

 だけど、歩くのは貴女自身。

 もちろん相談ならのるし話もきく、力にもなってあげる。だけど、がんばるのは貴女自身。

 どうかな?

 それでも、あなたは来てくれる?」

 少しだけ不安げにメルはつけたしたが、それに対する返答は明快だった。

「はい!いきます!」

「そう……そう」

 メルの顔がうれしそうに、涙までうかべてほころぶ。

「ありがとう、ほんとうにありがとう!わたしは、わたしたちはアヤネちゃんを心から歓迎するよ!」

「はい、よろしくおねがい、します」

 

 

「……うそ」

 アヤネを見るサリナは絶句していた。

 無理もない。

 アヤネはいつも、サリナの影から出ない娘。

 そんなアヤネが自分から足を踏み出す姿なんて、サリナは生まれてはじめて見たのだから。

 

  

 地球を出た12人の子どもたち。

 エムネアの子になったアヤカ・フジタを除く11人の子供たちは現時点で行き場も見つからず、ただ地球の学校のままにエムネア先生の教え子でいるだけだった。歳も若すぎたし、周囲も、未来を決めるにせよ、せめて幼年学校クラスを卒業してからだろうと考えていた──この日までは。

 

 アヤネの突然の離脱と、神殿いり。

 それは単なる離脱でなく、新たなる日々のはじまりを示すものだった。


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