奇襲と追撃
本日二話目
「「「ぐわあああっ!!」」」
洞窟内に男たち3人の悲鳴が響き渡る。
「……ふぅ、襲撃は無事成功だな!」
「そのようでござるな。後は、母さんを無事に助け出すだけでござる!」
「まだ敵がいないとも限らない。油断はするなよ?」
と言っても、大丈夫だとは思うが…。そもそも、増援があるのならこいつらの悲鳴で駆けつけてもおかしくはない。
襲う時は慎重に襲ったが、それでも音は漏れたはずだからな。
可能性があるとすれば相手もこちらを待ち構えているパターン。あるいは、人質を連れて奥から逃げ出したパターン。
「…シィド殿!」
「……んっ?」
思案に耽っていた俺に、ムサシが声をかけてくる。
――ぱたぱた
(…誰か、近づいて来てる?)
接近する何者かの気配を感じ取り、ムサシに目で合図を送る。
頷いたのを確認し、ひとまず男たちを見えにくいようにずらした後に俺とムサシも物陰に隠れて様子を窺う。
足音は時折立ち止まりながら、それでも着実にこちらに近づいて来ていた。
(…増援か?それともキャロルがしくじったか?)
足音は複数ということはキャロルがマツリを連れてきている可能性もあるが、楽観視はできない。
自ずと武器を持つ手に力が入る。
……ゴクリと唾を呑み込み、足跡の正体が明らかとなる。
「……ふぅ、一瞬冷や冷やしたぜ」
緊張の糸が切れ、安堵して見上げる視線の先には二人の女性。
足音の正体はキャロルと見知らぬ女性だった。おそらくは彼女こそがマツリだろう。
「ムサシッ!」
「マツリっ!!」
ひしっと抱きしめあう二人。
うんうん。感動の再会だな。
見れば、キャロルが上を見上げている。
小刻みに体が震えていることから、涙がこぼれ落ちないようにだろう。
(しゃあないな~)
布を一枚取り出し、キャロルにすっと差し出す。
照れ隠しで一瞬キッと睨まれたが、二人に気付かれてはいけないという思いが勝ったのかチーンと鼻をかむ。
「……そっちも無事だったみたいだな」
落ち着いたようなのでキャロルに声をかける。
すると、いつも通りの上から目線の返事が返ってくる。
「当然ね!誰が実行したと思ってるのよ?あんたらとは出来が違うわ!」
偉そうに…!
これがキャロル以外だったらそう思っただろうが…。
「…たしかに、出来が違うな。嬉しそうに耳と尻尾が動いてるぞ?」
「えっ!?キャアアア」
指摘され、ようやく気付いたのか羞恥で真っ赤になりながらも頭と尻尾を隠そうと躍起になってしまった。
「「ママ(母さん)!!」」
奥へ行った先で見つけた独房。
そこに彼女たちの母親は寝かされていた。決して環境とは言えない、檻の中。母親エニシは地面に直接薄い布団を敷き、その上に寝かされていた。
顔色はよくない。
こんなところに長年居続ければ体調を崩すのも無理はない。
「……さっさと連れ出――」
「――そうはさせねえよ」
……?誰だ?
俺の言葉を遮るように野太い声が背後――通ってきたルートから聞こえてきた。
「……くっ、村長!」
現れた男に、マツリとムサシは親の仇を見るような視線を向ける。
「おいおい、どうなってんだ?」
しっかり仕留めておけよと眼で訴えかけると、キャロルは「おっかしぃなぁ~?」と言いながらバツが悪そうに頬をポリポリと掻くのであった。
「――あんたが、この村の村長さんか」
「そうだ。無関係の人間にここを知られたとあっちゃあ、黙って見過ごすわけにもいかねえ…!ちょっとばかり痛い目を見てここにずっといたいと思わせてやるよ」
「……そう上手くいくかな?」
挑発するように不敵に笑う。
「ここに来る前にあんたの部下っぽいのを倒したが、全員手応えがない連中だったぜ?あんたも大したことねえんじゃねえか?」
「…はっ、青二才が!奇襲がたまたま上手くいったからと調子に乗るなよ!」
あれま、バレてら。
人数も多いし、警戒してくれると逃げやすかったんだがな…。そう上手くはいかないってことか。
(……あれっ?だけど…)
俺はそこで重要なことに気付いた。
こいつが村長ということは…土地持ちだよな?ってことは…?こいつって戦闘に使える魔力はほとんど残ってないんじゃね?
一気に勝機を見つけ、俄然やる気が出てきた。
元々恨みつらみが募っていたムサシとマツリの義姉妹は元より、彼女たちに感化されたキャロルも殺る気満々に戦意を募らせていた。
いきおいが乗ったので本日二話目を投稿しました。これで明日はお休みとさせていただきます。それでは次回は木曜日に~。




