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大決闘大会・決着

 お待たせしました。もうこれからは出来次第更新します。

「……ぬううっ!」

 拙者は離れた場所から雄叫びが耳に届くのを感じ、目の前の強敵を見やる。

(この御仁――ジェンネとかいう秘書殿。かなりできるでござる…!)

 少なくとも拙者よりも熟練された動き、戦うことを糧として生活してきた戦士のような肉体にどんな些細な動きも見逃さないと物語る鋭い眼光。 

 すべてにおいて拙者よりも格上であることは明白でござった。


「だからと言ってそう易々と負けるわけにもいかぬでござる…!」

 そもそもこの決闘のきっかけはと問われれば、拙者でござろう。代表殿に拙者の言葉が如何様に浸透したかはわからぬが、拙者がいなければシィド殿たちは一度ジュリアン殿の下へ戻り対策を立て直していたでござろうからな。

 そうなると自分の尻は自分で…というわけではござらんが、シィド殿が諦めていないのに拙者が早々と諦めるわけにはいかぬ。どのような形であろうとも健闘せねば…!

 意気込みを燃やして始めたのでござった。



(一旦、マツリと合流しよう)

 闘志を再燃させた俺が最初に考えたのはそんなことだった。

 そもそもこの大決闘大会はペアで出場しているんだから一対一で戦う理由なんてないわけで…。まあ、それに今まで気付かずに一対一の状況を作った俺が言うなっていう話なわけだが…。


 …ただ、それをどうやって伝えるか?それが問題だった。

 普段ならば合図を出したり、【フレア】などでこちらに注意を引き付ければいいんだろうが、今の状況ではそれはできない。そもそも、その方法は対人戦ではほとんど意味がない。

 そういうのはこちらの言葉を理解していない魔物相手だからこそ有効な手段なのだ。

 もし、ここでスキルが使えたとしても闘技場という限られた空間、対戦相手が複数という状況が許さないだろう。

(どうすっかな~?)

 考えながら、思わず笑みがこぼれそうになる。



『おおっと!シィド選手がガリウス選手に押され始めたようです!』

 実況席から聞こえてくるそんな声に、観客席の手すりから身を乗り出して会場を見つめる。

 そこにはたしかに相手選手の猛攻を紙一重で躱していくシィドさんの姿がありました。

「……シィドさん!!」

「コラー!!何を追い詰められてんのよっ、この下僕~!?」

 声援に熱が篭もる私たちとは真逆の冷静な呟きが聞こえた。


「…………誘ってる」



「ウラ!ウラ!ウラァアアアアッ!」

 ガリウスの豪腕をギリギリで躱し続けていた。

(もっと!もっと…!!)

 ギリギリすぎて布一枚纏っていない上半身には徐々に掠ったような傷が増えていく。

 それでも、俺はこのギリギリの距離感を保ち続ける。いや、保たなければならない。

(それこそが俺が開ける勝利への突破口…!)


 追い詰められた俺が取れる方法なんて限られていた。

 だから、逆に追い詰められている状況を利用することにした。

 攻撃を受けながら、避ける方向を徐々に調節していく。


(よっし!この距離ならイケるっ!!)

 絶妙な距離になったところで俺は叫んだ。


「マツリッ!こっちへ飛んで来いっ!!」


 シィド殿の声が聞こえた瞬間、拙者は対戦相手(ジェンネ殿)も水に声の方に走り出した。

「――っ!させません!」

 しかし、そんな真似をこの御仁が許すはずもなかった。

 そして、先程悶絶させられた強烈な蹴りを放ってくる。


 そう、拙者の狙い通りの一撃を。


「その脚!お借りいたす!!」

 飛んでくる足技の着地点。そこに合わせて軽く飛び、放たれた足技に両足を重ね…勢いを利用して文字通りシィド殿の下へ飛んでいく!

「……しまった!」

 背後で着弾点を強引にずらされたことでバランスを崩したジェンネ殿が地面に落ちる音が聞こえる中、拙者は声を上げながら真っ直ぐにシィド殿へと向かっていった。


『おおっ!!なんとマツリ選手、ジェンネ御姉様のあの蹴りを利用して飛んだーー!!』

『いやぁ~。今のは素晴らしかったね。一度アレをもろに喰らっていながら合せる勇気、後ろを向いていたとは言え、なかなかできることじゃないと思うよ』

『そして、飛ばされた…いや、飛んだマツリ選手はそのまま攻防を続けるシィド選手とガリウス選手の下へと飛んでいっております』

『…さて、何をやらかすつもりやら』

 マイクには拾われなかったが、この時バトムスは久々に楽しい試合が見れたと嬉しそうに呟いていた。


「シィド殿ーー!」

 マツリが言った通り飛んでくるのを感じる。あと数秒で到着するはずだ。

「何をするつもりか知らねえが…、俺がさせると思うなぁあああ!!」


「……へっ、必要ないさ。あんたとの勝負はもうすぐ着く!」

「――ッ!!」

 先程までギリギリで躱していたことで俺が躱せないと考えていたガリウスは俺に攻撃を弾かれたことにギョッとなって一瞬動きが止まった。

 その間に飛んできたマツリが俺の横を通り過ぎようとする中、手を伸ばしマツリの脚を掴む。


「ウオオオオッ!!」

 凄まじい勢いで飛んで来ていたマツリを止めるのは容易ではない。ビキビキィッと腕の腱が痛むのを感じながらマツリの勢いを殺さないように下半身は踏ん張り、上半身では勢いを溜める。

「わかってるな?マツリィーー!」

「うむっ!!」

 そして、その状態からマツリを地面に叩き付ける勢いで仰け反った上半身を一気に戻した。

「ハアアアアッ!!!」

 マツリは両手をついて逆立ちするような体勢になり、俺は叩き付けた勢いで下半身が攫われるように宙に浮く。

 ――フワッ

 浮遊感を感じたのも一瞬、マツリが腕の力だけでぐるっと回り、遠心力で宙に浮いていた俺の体は引っ張られる。

「せりゃああ!!」

 マツリがまるで砲弾のように飛んできた勢い。それを俺が受け止め、マツリに返し、マツリが回ることで俺に帰ってくる。循環した力は強烈な今すべてが俺のつま先に集中している。

 そして、俺とマツリのパワーが乗った蹴りはほんの少し硬直していたガリウスのこめかみへと吸い込まれていった。


「ガッファッ!!」

 強烈な一撃を喰らい、白目を剥いてグラッと倒れていく巨体ガリウス


 ――ガシッ!


 その巨体を両足でしっかり挟み、マツリを引っ張り上げる。

「マツリィッ!今度はお前が行って来いっ!!」

 そして、倒れる勢いを利用した簡易カタパルトによってマツリを発射した。



(む、無茶苦茶でござる!)

 二度目となる飛ぶ感覚を味わいながら、そんなことを考えていた。

 シィド殿が無茶をするのは短い付き合いとは言え、知っていたでござるが。それにしてもこれはないのではござらんか!?

 そんな風に悪態を吐きたくなる。

 後ろでは、ドシンと倒れる音が聞こえてきた。おそらくあの状態ではシィド殿ももう動けないのでござろう。

(だったら、後は拙者が決めるでござるよ!)



(来るっ!)

 再び迫ってくるマツリを見ながら、ジェンネは身構えていた。

(まさか、あんな方法でガリウスを倒すなんて…)

 ジェンネにとってガリウスはつい先程知り合ったばかりの同僚だった。しかし、自分の上司のことは良く知っている。そんな彼が選んだ人物なら間違いはないと考えていた。

 実際、打ち合わせと簡単な鍛錬をしてみたが、動きは悪くない。これならいずれは他のメンバーにも引けを取らない戦士になるだろうと感じていた。

 それをあんな奇策で倒すとはさすがの彼女でも想像できなかった。


 ジェンネ――彼女はこの大決闘大会では百戦錬磨の戦士だ。しかし、彼女はコロシアムの外では戦士ではない。あくまでも秘書だ。だから彼女には本来戦闘向きな技など持ち合わせてはいなかった。

 そんな彼女がなぜここまで体を鍛え上げたのか。初めはただの趣味だった。昔から体を鍛えるのが好きでよく街中を走りまわっていた。なのに、ジョブは鑑定士。親が商人だったことで鑑定士になることを強要されて育っていた。

 圧迫される環境だったが、不満はなく体を鍛えるのは止めなかった。

 そんな時に新たに代表となったのがアウグスト・バトムスだった。彼は、才能のある人間を囲うのが趣味で強そうな者を見つけてはその腕前を確かめた。

 そんな彼に見出されたのがジェンネだったのだ。

 鍛え上げた肉体を遺憾なく発揮する場所を与えてもらい、彼女はコロシアム限定の戦士となった。

 だから、自分に機会をくれたバトムスの期待を裏切るわけにはいかない。

 彼女はそう考えて、鍛え上げた技を振るう。そこに一切の迷いなし。


「ウオオオッ…!」

「セイヤアアッ!」

 二人の戦士おんなの想い、そして攻撃が交わった。


 そして、立ち上がったのは……ジェンネだった。

『決着ーー!!勝者はやはりこの人…ジェンネ御姉様~~~!!!』

 実況のペペロニア・ヒューの勝者宣言が響き渡り、遅れて会場中からジェンネを称賛する声、他の選手たちの健闘を称える声の入り混じった歓声が上がる。


「…ハァ、ハァッ!」

(て、手強い相手だった…!)

 肩で息をしながらジェンネは強敵として地面に横たわるマツリを見つめていた。


 一瞬の交錯。その間に起こったのは、激しい攻防だった。


 空中で逃げ場のないマツリ。彼女に対してジェンネが取ったのは高く跳び上がってから放つ蹴り。しかし、それを読んでいたと言わんばかりに体を捻り、回転が加えられたことによりその攻撃は弾かれてしまった。

 それだけでなく、弾いた拍子に脚を捕られそうになる。

 そこをもう片方の脚を叩き付けることで勝利を収めたのだった。

 皮肉にもマツリが回転を加えたことでそれに合わせてジェンネにスピードが乗ったことが敗因となった。


『二組ともよくやった!皆の者、両雄に惜しみない拍手を!』

 バトムスの声に合わせて送られる拍手。こうして急遽開催された大決闘大会は終結を見せた。




「……マツリさん」

「二人とも大丈夫ですかね?」

「…大丈夫、だよな?」

「…………問題なし」

「まったくだらしがないわねっ!戻ってきたら鍛えてやるわっ!」

 そんな決着を仲間たちは静かに見届けたのだった。

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