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双子の想い

「……結局こうなるのか」

 俺たちは二人の案内で王都にある女王御用達のマジックバック販売店へとやって来ていた。


「買いますよ~」

 ふんすと鼻息荒く、先陣切って店に入っていくヤノン。その後ろをニコニコと付いていく女性陣+ミルル。その後ろに続いて最後に入っていく俺だけが憂鬱な気分になっていた。


「おぉっ!これはこれは、陛下!ようこそおいで下さいましたっ!」

 店に入ると老人が歓迎してくれた。

「ふふっ、久しぶりですねチャオ爺。皆さん、こちらはチャオ爺。私がまだ女王になる前は王宮に使えていた専属の裁縫師だったんですよ」

「ほっほっほ。もうずいぶん昔のことのように感じますな。…して、本日はどのようなご用向きで?」

「せっかちなのは変わらないわね~。今日の私は付き添いよ。本命はこちら」

 女王に紹介され、ヤノン、ミルル、ルルミちゃんが前に出る。

「あの、マジックバックが欲しいんです!」

「そうですか。マジックバックですか。少々お待ちください」

 女王以外でも態度を変えることなく接客し、店の奥へと入っていく。


 数分後、大きな棚を引いて現れた。

「「「うわあ~!」」」

 棚に並べられたたくさんのカバン。それを見た3人が歓声を上げる。

「…これ、全部マジックバックですか?」

「そうじゃよ。マジックバックと言っても大きさから重量まで様々。どのような仕様がいいか選ぶ必要があるんじゃ」

 なるほど。それにしても多くないか?

「この中から好みの物を選んでおくれ。そうすれば儂が物を作ってしんぜよう」

「えっ!?新しいのを作るんですかっ!」

「そうよ。チャオ爺はオーダーメイド専門の職人なの」

「……それは、なんとも高そうだ」

「これ、シィド殿こういう時に値段の話をするものではないでござるよ。見られよ、先程まで楽しそうにしていた3人が」

 あぁ~、たしかに。3人ともこっちを睨んでるな。

「まったく、シィドはまだまだ女心がわかっておらぬようじゃの」

「そうは言いますけどね、金は有限なんですから」

「…ふむ、では予算内で作れそうな物を作るというのはいかがかな?陛下のお知り合いということでしたら値段の方は勉強させていただきますよ?」

 注意を受けていると、チャオ爺さんがそんな提案をしてくれる。


「……では、その差し引かれた分の値段は私が払おう」

「いいんですか?」

「なに、リリィたちの知り合いに何の便宜も図ってやらんわけにはいかんし、かと言って割り引かせるだけでは王国としての面子が立たん。のう、エリー?」

「そうね。じゃあ、差し引かれた分はチタニアに払ってもらいましょう!大丈夫よ、その分働いてもらうから」

「「はは、は…」」

 女王が賛成してくれたのはいいが、付け足された言葉に俺とチタニアさんは引き攣った笑みを浮かべる。


「……で、ご予算の方は?」

「そうですね……」

 これからの旅のことを考えると、少しは余裕を残しておきたい。

「最大で300万(メダ)ってところですか」

「300万ですか」

「普通だったら、何㎏ぐらいかしらね?」

「そうですのう…200㎏ぐらいですかの?」

「200!?」

 そんなに入るのか。

「…200か~、旅をする冒険者ってことを考えると少し小さいかしらね」

「そうなんですか?」

「まあ、旅をするというか、移動する冒険者っていうのはクラン単位で考えるものだから。…そっちの二人の予算は?」

「うう~ん、これからも旅をすることを考えると100万ちょっとぐらいしか出せないかも」

「そうだよな。すぐに金を集められるわけでもねえし…」

「100万ですと50㎏ほどになってしまいますな」

「少々心許ないかしらね?」

「そうですのう…」

 みんなしてうんうんと頭を合わせて考え込む。


「じゃあ、シィド君たちの分を300㎏程度、双子ちゃんのを150㎏ぐらいにしたらどうかな?差額を私が払うってことで」

 代金の話もつき、ヤノン達もデザインなどを決めたところでチャオ爺さんに注文して店を後にする。


「わかりました。では、そのように。作製には3日ほどいただきたい」




 マジックバックのお店からお世話になることになったチタニアさんのお家に帰ってきた。ちなみに女王様はお城から使いの人が来て帰っていった。


 夕食を食べてから部屋に案内されたボクたちだったけど、なかなか眠れなかった。

「……ねえ、ミルル。まだ起きてる?」

「……うん。起きてるよ」

「ボクたち駄目駄目だったね」

 今日の行動を振り返ると街中でクレアを呼んじゃったり、考えなしにマジックバックを買おうとしたり…。

「…そうだな」

 特にクレアのことなんてシィドさんたちが王都の偉い人の知り合いじゃなかったらどうなっていたかわからない。

「……ねえ、ボクたちの旅も潮時が来たのかな」

「元々、目的もなかったからな。いつかこうなることはわかってたよ」


 この世界に来てからボクたちはどうしようか話し合ったけど、お父さんとお母さんが好きだった旅をしようってことになった。

 だけど、目的もなかった旅はいつも行き当たりばったり。初めの方はこの世界に馴染むって意味でも楽しかったけど…。


「…ねえ、一つ提案があるんだけど」

「言わなくてもわかってるよ。オレもそれには賛成だ。あの兄ちゃんたちは割る人じゃねえし、一緒にいると面白そうだしな」

 ふふっ、やっぱりボクたち双子だね。言いたいことは言わなくてもわかるんだから。


 ――ボクたちはこの世界に来てから初めて目的を定めた。

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